[医師監修・作成]甲状腺機能低下症の検査について:血液検査、甲状腺エコー検査など | MEDLEY(メドレー)
こうじょうせんきのうていかしょう
甲状腺機能低下症
身体の新陳代謝(エネルギー代謝)を活発にする甲状腺ホルモンが、何らかの理由で不足している状態
12人の医師がチェック 76回の改訂 最終更新: 2019.08.07

甲状腺機能低下症の検査について:血液検査、甲状腺エコー検査など

甲状腺機能低下症が疑われる人には問診、身体診察、血液検査、甲状腺エコー検査などの検査が行われます。なかでも血液検査が重要で、甲状腺ホルモン値を反映するフリーT3、フリーT4、甲状腺刺激ホルモンの項目は、甲状腺機能低下症かどうかの診断だけでなく、薬物治療の効果判定などにも用いられます。

1. 問診

問診とはお医者さんからの質問に答える形で、患者さんが困っている症状や身体の状態、生活背景を伝えることをいいます。問診では以下のポイントをよく聞かれます。

  • 何に困っているか
  • どんな症状があるか
  • 持病があるか
  • 飲んでいる薬には何かあるか
  • 家族で何か病気をもっている人はいるか
  • アレルギーがあるか
  • 妊娠はしているか

お医者さんは問診を通して原因や重症度に関する情報を収集します。また妊娠している人や薬に対してアレルギーがある人には治療薬の選択肢が限られることもあります。そのため、これらの問診内容は治療法を決めるうえでも大事な質問事項です。

身体の変化には自分自身が一番気付きやすいので、お医者さんが診察しただけでは見つけられない病気のサインが問診からわかることがあります。可能な範囲で構いませんので、診察時に説明するようにしてください。

2. 身体診察

身体診察は身体の状況を客観的に評価することをいいます。甲状腺機能低下症では甲状腺が腫れることがあります。また脱毛や手足のむくみなどのように甲状腺以外の場所に症状が現れることがあるので、全身くまなく診察が行われます。

3. 血液検査

甲状腺機能低下症が疑われる人では血液検査が非常に重要です。診断に必要な情報が得られるだけでなく、甲状腺機能低下症を引き起こしている原因の推測や、全身の状態の把握に役立ちます。具体的には以下の血液検査項目に異常がないか調べます。

  • フリーT3(fT3)、フリーT4(fT4)
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
  • 抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体
  • コレステロール
  • クレアチンキナーゼ(CK)

それぞれの検査項目について以下で詳しく説明していきます。

フリーT3(fT3)、フリーT4(fT4)

フリーT3、フリーT4は血液中の甲状腺ホルモンの量を示す血液検査項目です。甲状腺ホルモンの不足は甲状腺機能低下症の原因の一つであるため、甲状腺機能低下症が疑われた人ではフリーT3、フリーT4を調べることが重要です。また、これらの項目は甲状腺ホルモンの補充療法を行うと正常の値に戻るので、治療効果の判定にも用いられます。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺を刺激し甲状腺ホルモンを作るよう指令を送るホルモンです。TSHの値をみることで、甲状腺機能低下症の原因が甲状腺にあるのか下垂体にあるのかがわかります。

TSHは甲状腺ホルモンの量を調整するうえで大事な役割を担っています。甲状腺ホルモンが足りなくなってくると、脳の下垂体という場所からTSHが血液中に放出されます。TSHは甲状腺に届くと甲状腺を刺激します。これにより甲状腺ホルモンがたくさん作られるようになります。

一方、身体の中の甲状腺ホルモンが多い状況では、逆のことが起こります。具体的には甲状腺ホルモンがたくさんあることを感知した脳はTSHをあまり作らなくなります。これにより甲状腺への刺激が減り、甲状腺ホルモンが作られる量が減ります。

甲状腺と脳下垂体の関係の図1:TSH(甲状腺刺激ホルモン)は甲状腺ホルモンを増やし、甲状腺ホルモンはTSHを減らす

甲状腺の異常が原因で甲状腺ホルモンが作れなくなっている人では、甲状腺ホルモンは足りない状態なので下垂体からはTSHが多く分泌されます。つまり、フリーT3、フリーT4が低くTSHが高い状態になります。

一方で、下垂体腺腫のように下垂体に異常が起きてTSHが作れなくなることが原因で甲状腺ホルモンが減少している人では、フリーT3、フリーT4とともにTSHの低下が起こります。

このように、TSHの値を調べることで、甲状腺機能低下症の原因が甲状腺にあるのか、はたまた甲状腺を刺激する下垂体にあるのか知ることができます。

表にまとめると以下のようになります。

フリーT3、フリーT4 甲状腺刺激ホルモン(TSH) 甲状腺機能低下症の原因
低い 高い 甲状腺
低い 低い 脳(下垂体)

■潜在性甲状腺機能低下症とは?

実はこのTSHの値は、「潜在性甲状腺機能低下症」という病気を診断するうえでも重要です。潜在性甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモン(フリーT3、フリーT4)が正常値で、TSHが高値の状態を言います。これはTSHをたくさん作ることで甲状腺ホルモンの値をなんとか正常に保てている状態であり、甲状腺機能低下症の一つとして扱われます。一見、甲状腺機能低下症が起きていないように見えることから「潜在性」という言葉が頭についています。

潜在性甲状腺機能低下症はコレステロール値をあげ、動脈硬化の原因になることがあることから、症状がない人でも薬物療法を勧められることがあります。

抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体

甲状腺機能低下症の原因の一つである橋本病慢性甲状腺炎)を診断するうえで必要な血液検査項目です。

抗体とは、本来体内に侵入してきた外敵を攻撃するために、免疫反応によって作られる物質です。橋本病の人では、免疫の異常によって甲状腺を攻撃する抗体が作られて甲状腺が破壊されることがわかっており、抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が作られ、血液中から検出されると考えられています。

総コレステロール

甲状腺ホルモンはコレステロールの量の調整に関わっています。そのため、甲状腺機能低下症になり、甲状腺ホルモンのバランスが崩れるとコレステロール値が上昇します。コレステロール値の高い状態は動脈硬化の原因にもなるためしっかり治療することが重要です。甲状腺機能低下症によるコレステロール値の上昇は、甲状腺ホルモンの補充療法により改善することができます。

クレアチンキナーゼ(CK)

クレアチンキナーゼは筋肉と関連した検査項目です。甲状腺機能低下症の人では筋力低下を自覚することがあり、これを反映して血液検査ではクレアチンキナーゼの値の上昇がみられます。甲状腺機能低下症による筋力低下は甲状腺ホルモンの補充療法により改善していきますが、それとともにクレアチンキナーゼの値も下がっていくので治療効果の判定としても用いることができます。

4. 甲状腺エコー検査(甲状腺超音波検査)

甲状腺エコー検査(甲状腺超音波検査)は甲状腺に向かって超音波を当て、反射してきた情報をもとに甲状腺の形や状態を映像化する検査です。首にゼリーを塗り、超音波を出す機械(プローブ)を当てるとモニターに甲状腺の画像が出力されます。甲状腺の形や大きさ、血流に問題がないか調べることができます。また、甲状腺エコー検査は被ばくの心配のない検査なので、妊婦にも安全に行うことができます。