こうじょうせんきのうていかしょう
甲状腺機能低下症
身体の新陳代謝(エネルギー代謝)を活発にする甲状腺ホルモンが、何らかの理由で不足している状態
12人の医師がチェック 76回の改訂 最終更新: 2019.08.07

甲状腺機能低下症の治療について:甲状腺ホルモン薬、漢方薬

甲状腺機能低下症の治療の中心は薬物療法です。甲状腺ホルモンを補充するための甲状腺ホルモン薬や、症状緩和のために用いられる漢方薬があります。一人ひとりの検査結果や症状に合わせて治療薬が選択されます。

1. 甲状腺機能低下症の治療

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが不足したり、うまく働かないことで起こる病気です。甲状腺機能低下症により身体の不調があらわている人には薬物療法が勧められます。具体的には、甲状腺ホルモン薬による甲状腺ホルモンの補充療法があります。症状緩和のために漢方薬が用いられることもあります。以下で詳しく説明していきます。

2. 甲状腺ホルモン薬(チラーヂン®S、レボチロキシンNa、チロナミン®)

甲状腺ホルモンにはT4(サイロキシン)とT3(トリヨードサイロニン)の2種類があります。甲状腺ホルモン薬もT4を製剤化したチラーヂン®レボチロキシンNaと、T3を製剤化したチロナミン®があります。甲状腺ホルモンとしての作用としてはT4よりもT3のほうが強いのですが、T3は血中濃度を安定して保つのが難しいため、通常はT4製剤であるチラーヂン®、レボチロキシンNaで治療されることが多いです。

甲状腺ホルモン薬の量は血液検査で甲状腺ホルモン(fT3、fT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を確認したり、症状の変化をみながら調整していきます。血液検査の値については「甲状腺機能低下症の検査について」で詳しく説明しています。

甲状腺ホルモン薬の補充療法は不足している甲状腺ホルモンを薬として補っているだけなので、副作用の心配もなく治療ができることが多いです。ただし、まれに動悸肝機能障害を起こすことがあります。もし、薬を飲んでいて、心臓がドキドキする、皮膚が黄色くなる(黄疸)、吐き気がするなどの症状を感じた人は担当のお医者さんに相談してください。また、心筋梗塞を最近起こしたことがある人では甲状腺ホルモン薬は内服できない(禁忌)ので注意が必要です。

3. 漢方薬

甲状腺機能低下症は冷えや寒気、疲労感など、人によって多様な症状があらわれます。治療の中心は不足している甲状腺ホルモンを補う補充療法になりますが、漢方薬が治療の選択肢となることもあります。例えば、甲状腺ホルモンの値がある程度安定しているにも関わらず、冷えや寒気などの症状が残っている人には漢方薬により改善が期待できます。

漢方医学では個々の症状や体質などを「証(しょう)」という言葉であらわし、「証」に適した漢方方剤が選択されます。また、漢方医学では「気・血・水(き・けつ・すい)」という言葉を使って生命活動や体内の状態を表現し、これらによっても適する漢方薬が異なっている場合があります。

冷えや寒気、食欲不振、低血圧などは体内の「気」が不足している「気虚(ききょ)」が推測される状態で「気」を補う漢方薬である補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などが有用です。また、顔色が悪かったり皮膚の乾燥などがある場合は体内の「血」の機能低下による「血虚(けっきょ)」の状態であることが推測されます。気虚と血虚が入り混じっているような状態では十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)が有用な場合が考えられます。

この他にも冷えに加え貧血などがある場合には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、瘀血(おけつ)といって血の滞りがある場合には桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、手足の冷感や痛み、頭痛などを伴う場合には当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュウユショウキョウトウ)が有用となるなど、それぞれの状態に適した漢方薬が治療の選択肢となります。

安全性が高いとされている漢方薬も「薬」のひとつですので、副作用がおこる可能性はあります。漢方薬に限ったことではありませんが、自身の症状や体質などを事前にしっかりと医師や薬剤師に伝え、個々の状態に適した薬を使うことがとても大切です。