2015.09.20 | ニュース

セレン不足による危険、甲状腺の病気が多く

陝西省6,152人の横断研究

from The Journal of clinical endocrinology and metabolism

セレン不足による危険、甲状腺の病気が多くの写真

セレンは自然の環境にある物質で、人体にも微量に含まれ、不足すると克山病という心臓などの病気の原因になると言われています。環境中のセレンが少ない地方で、セレン不足と甲状腺の異常に関連が見られたことが報告されました。

◆中国のセレンが少ない県と普通の県で6,152人

研究班は、中国の陝西省で、特に環境中のセレンが少ない県と、通常量のセレンがある県から、合計6,152人の参加者を集め、食事内容の聞き取り、身体診察、血液検査などにより、セレン不足と甲状腺の異常の関係を調べました。

 

◆体内にセレンが多い人のほうが異常が少ない

次の結果が得られました。

甲状腺の病的状態(甲状腺機能低下症、臨床診断に及ばない甲状腺機能低下、自己免疫性甲状腺炎、甲状腺腫大)の有病率はセレンが低い県よりも適正なセレンがある県で有意に低かった(18.0% vs 30.5%、P<0.001)。血清セレン値が高いことと、自己免疫性甲状腺炎(オッズ比0.47、95%信頼区間0.35-0.65)、臨床診断に及ばない甲状腺機能低下(0.68、0.58-0.93)、甲状腺機能低下症(0.75、0.63-0.90)、甲状腺腫大(0.75、0.59-0.97)のオッズが低いことに関連が見られた。

セレンが少ない県の参加者に、甲状腺機能低下症などの異常がより多く見られました。また、血液中のセレンが多い人のほうが、甲状腺の異常が少ない関連が見られました。

 

日本では環境にあるセレンが多く、セレン不足が起こることはほとんどないと言われていますが、死因にもなる克山病や、ここで報告された甲状腺の異常のように、地域によっては問題になりえます。全世界の健康を考えるうえではセレンも欠かせない要素と言えるでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Low population selenium status is associated with increased prevalence of thyroid disease.

J Clin Endocrinol Metab. 2015 Aug 25 [Epub ahead of print]

[PMID: 26305620]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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