川崎病について:原因、検査、治療など
川崎病では全身の血管に
このページでは川崎病の症状や治療を中心に説明していきます。
目次
1. 川崎病とはどんな病気なのか
川崎病(Kawasaki Disease:KD)は5歳までの子どもに多い病気です。心臓などのさまざまな臓器に症状が出現します。どういったことが身体の中で起こっているのでしょうか。
川崎病では何が起こっている?
川崎病では全身の血管に炎症が起こります。生体の防御反応・
- 発熱
皮疹 - 眼の充血
- 唇の腫れ
- 口の中の赤み(舌がいちごのように真っ赤になったりする)
- 指先・足趾の
浮腫 み(むくみ ) - 首の
リンパ節 の腫れ
これらの症状は他の病気でも見られますが、5歳以下の子供に複数種類あてはまる場合には川崎病を考えなければなりません。
MCLS(MucoCutaneous Lymph-node Syndrome)、小児急性皮膚粘膜リンパ節症候群とは?
以前は小児急性皮膚粘膜リンパ節症候群(
何歳くらいの子どもに多いのか?
川崎病は毎年10,000人前後が罹患する病気です。成人に起こることは珍しく、ほとんどが5歳未満の子どもに起こります。
死亡率はどのくらいか
以前に比べて川崎病の死亡率は下がっており、現在ではおよそ0.1-0.3%と言われています。重症の心臓
2. 川崎病に原因はあるのか?
川崎病の原因は現時点で解明されていません。
3. 川崎病になるとどんな症状が出る?
川崎病ではいろいろな症状が見られます。発熱や口の中の赤みなどの見られやすい症状があります。川崎病の症状について説明します。
川崎病の代表的症状
川崎病では多くの症状が出現しますが、特に見られやすい症状は以下になります。
- 発熱
- 唇・口の中の変化(腫れ、赤み、乾燥、出血など)
- 左右両眼の充血
- 多様な形の
紅斑 (赤みのある皮疹) - 手指・手掌や足趾・足底が赤く硬く腫れる(指先が"テカテカパンパンになる”と表現することもあります)
- 頸のリンパ節の腫れ(多くは左右どちらか片方)です。
これらの症状を知っておくことは大切です。川崎病は発症してから早めに治療をするほうが後遺症が残りにくいです。そのため、上に挙げた症状に複数該当する場合には、医療機関で診察を受けるようにして下さい。
非定型の川崎病とは?
川崎病と似た症状があるのに川崎病の診断基準を満たさないという場合があります。川崎病以外の病気が関与していることは考えにくいときには、「非定型の川崎病」と診断されることがあります。こうした人に川崎病と同様の身体の変化(全身の炎症)が起きていて心臓合併症(冠動脈瘤)の危険があると判断された場合には、専門家のもとで治療が必要になります。
4. 川崎病と心臓について
川崎病に関する問題で最も気をつけなければならないのは心臓の合併症です。川崎病では心臓に合併症が起こりやすく、重症になりやすいです。特に冠動脈瘤という合併症が見られるかどうかについて慎重に観察する必要があります。
冠動脈とは?
心臓は全身に栄養や酸素を含んだ血液を送ります。一方で、心臓が持続的に動き続けるためには、心臓自身も栄養と酸素が必要になります。心臓の筋肉(心筋)に栄養と酸素を届けるために冠動脈という血管が存在しています。
川崎病ではこの冠動脈も炎症によって攻撃を受けます。すると、さまざまな形で心臓に影響が及びます。
心臓にどんな変化が起こる?
全身の血管に炎症を起こす川崎病は、冠動脈にも炎症を起こします。その結果、冠動脈が太くなったり、冠動脈にこぶ(瘤)ができたりします(これを「冠動脈瘤」と言います)。冠動脈瘤ができると心筋梗塞という重症の病気を起こしやすくなるので、川崎病で最も注意すべき合併症です。一旦できた冠動脈瘤が時間とともに小さくなるケースや無くなるケースもあるため、専門家による継続的な診察が必要です。「冠動脈瘤」ができないようにするためには、早期から適切に治療を行うことが大切です。
その他には次のケースが考えられます。
- 心臓の筋肉そのものに変化・異常をきたして心臓の収縮が弱くなる(心筋症)
- 心臓の弁(心臓にある部屋同士を仕切って、血液の逆流を防いでいる)に異常が起こり血液の逆流が起きる(心臓弁膜症)
- 心臓の周囲に液体(心のう液)が溜まって心臓が動きにくくなる(心タンポナーデ)
これらは心機能が低下する合併症です。心機能がある程度低下すると心不全になり、運動が難しくなることがあります。川崎病と言われた子どもの体力が落ちているような場合は、主治医に状況を率直に伝えて下さい。
5. 川崎病が疑われたらどんな検査を行うのか?
川崎病が疑われたらいくつかの検査を受けることになります。川崎病の検査は次の種類にわけられます。
- 診断する上で参考になる検査
- 全身の状態を確認するための検査
- 合併症の有無を確認するための検査
特に行われることの多い検査についてもう少し詳しく説明します。
血液検査
川崎病を診断する上で参考になったり、全身状態が確認できたりします。川崎病の診断基準には入っていませんが、ほとんどの場面で血液検査は行われます。腎臓や心臓などの臓器の機能低下がないかや炎症がどの程度強くなっているかを確認できます。
心臓超音波検査(心臓エコー検査、心エコー)
- 冠動脈が太くなっていないか
- 冠動脈にこぶ(冠動脈瘤)ができていないか
- 心臓の動きが悪くなっていないか
- 心臓内の血の流れに逆流が起きていないか
- 心臓周囲に液体が溜まっていないか
心臓エコー検査は、入院中だけでなく、状況の把握のために退院後も定期的に行われることがあります。
心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)
- 冠動脈瘤の存在を確認する
- 冠動脈瘤の形を把握する
- 心臓の動きを正確に把握する
心臓カテーテル検査は複数回行われることがあります。時間が経って検査を再び行うことで、冠動脈瘤の大きさの変化を確認します。子どもに心臓カテーテル検査を行うことが簡単ではないので、心臓専門の小児科医によって行われます。
6. 川崎病に対してどんな治療が行われる?
川崎病にはいくつかの治療法があります。しかし、確固たる治療法が存在するわけではないので、患者の状況を踏まえて治療方法が決められます。多くの施設では、最初の治療で大量
- 免疫グロブリン静注療法(IVIG)
- 高用量アスピリン治療
- 抗凝固療法
- 心臓カテーテル治療
これらの治療について詳しく知りたい人は「川崎病の検査:心臓エコー検査、心臓カテーテル検査など」を参考にして下さい。
川崎病にガイドラインはあるのか?
川崎病に関する
診断については「川崎病診断の手引き改訂第6版」(2019年2月 厚生労働省 川崎病研究班)、急性期治療については「川崎病急性期治療のガイドライン」(2020年 日本小児循環器学会)、川崎病に
参考文献
・「川崎病診断の手引き」
・「川崎病急性期治療のガイドライン」
・「川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン」