なるこれぷしー
ナルコレプシー
日中に耐えることが出来ないほどの強い眠気をもよおす病気
10人の医師がチェック 82回の改訂 最終更新: 2023.09.25

ナルコレプシーとはどんな病気?

ナルコレプシーは睡眠障害の1つです。日中の強い眠気などによって日常生活に悪影響を及ぼします。ここではナルコレプシーの症状や検査、治療などについて説明します。

1. 日中に強い眠気を感じるナルコレプシーとはどんな病気なのか?

ナルコレプシーは昼間でも強い眠気を感じて、時と場所に関係なく眠ってしまう病気のことです。覚醒をうながす脳の働きが不十分なことが原因だと考えられています。ちなみに、ナルコレプシーはギリシア語で眠りを意味するナルコ(narco)と発作を意味するレプシー(lepsy)による造語です。

ナルコレプシーの人は会議中や面接中など大事な場面でも居眠りをしてしまうために、「だらしない」「不真面目」「意欲がない」といった印象を周囲にもたれてしまうことがあります。また、本人が病気だと気づいていないことも多く、そのため治療が遅れて学校や職場での生活に支障をきたしてしまうこともあります。しかし、治療することで症状を和らげれらるので、健康な人と同じような生活を送ることができます。

ナルコレプシーの患者数

ナルコレプシーは日本人に比較的多く、アメリカ人の3倍以上の患者さんがいると考えられています。具体的には、600人に1人程度が発病していると推定されています。

ナルコレプシーを発症しやすい年齢

ナルコレプシーは10代から20代前半で発病しやすく、特に14歳から16歳に多いとされています。一方で、中年期以降で発症することは少なく、40歳以降でみつかることはまれとされています。

2. ナルコレプシーの症状

日中の強い眠気がナルコレプシーの代表的な症状ですが、その他にも症状があります。

  • 日中の強い眠気
  • 情動脱力発作(喜怒哀楽と共に突然力が抜けること)
  • 睡眠麻痺(金縛り)
  • 睡眠発作(前触れなく突然眠り込んでしまうこと)
  • 入眠時幻覚(入眠時にみる幻覚のこと)

ナルコレプシーに似た症状が現れる病気は他にもあるので、上記に当てはまる症状があったとしてもそれだけではナルコレプシーと診断されることはありません。

上の症状の中には情動脱力発作などあまり聞きなれない言葉もあります。詳しくは「ナルコレプシーの症状」で説明しているので参考にしてください。

3. ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーの発病には遺伝や環境が関与していると考えられていますが、詳しいことはまだわかってはいません。

4. ナルコレプシーの検査

ナルコレプシーが疑われる人には次の診察や検査が行なわれます。

  • 問診
  • 身体診察
  • 睡眠時ポリグラフ検査
  • 睡眠潜時反復検査

名前だけではイメージが湧きにくいものもあるので、それぞれについて説明します。

問診

問診はお医者さんが患者さんと対話して診察をする方法です。最近では患者さんがあらかじめ問診票に記載した内容を元に問診が行われることもあります。患者さんは「自分の困っている症状」を伝え、お医者さんからは過去にかかっていた病気や服用している薬などの「自分の背景」などが質問されたりします。

問診の内容から症状(日中の眠気など)の原因がナルコレプシーによるものか、他の病気によるものかなどが推測されます。

身体診察

お医者さんが患者さんの身体に触れたりして、全身をくまなく調べる診察方法のことです。日中の眠気などの症状が現れる病気はナルコレプシー以外にもいくつかあるので、身体診察で手がかりになる情報が集められて、その結果をもとにしてどの検査を受けるべきかが決められます。

ナルコレプシーが疑われる場合には後述する「睡眠時ポリグラフ検査」や「睡眠潜時反復検査」が計画されます。

睡眠時ポリグラフ検査

睡眠中の身体の変化を調べる検査です。さまざまな項目を調べることができますが、ナルコレプシーの人では「脳波」と「眼球の動き」が注目されます。ナルコレプシーの人は正常な人とは違って、入眠直後に「レム睡眠」が起こることが特徴的です。「レム睡眠」が起こっているかどうかは「脳波」と「眼球の動き」によって知ることができます。

睡眠潜時反復検査

睡眠潜時反復検査では日中の眠気の程度を調べることができます。多くの場合、睡眠時ポリグラフ検査の翌日に行われます。睡眠潜時反復検査の結果はナルコレプシーの診断基準に用いられる重要なものです。

詳しくは「ナルコレプシーの検査」で説明しているので参考にしてください。

5. ナルコレプシーの治療

ナルコレプシーの治療には日常生活の改善を中心とした非薬物療法(薬を使わない治療)と薬物療法(薬を使った治療)があります。日中の眠気をコントロールするためには両方が重要です。

非薬物治療

非薬物治療では、生活習慣を見直して日中の眠気を抑えます。ポイントは「夜間の睡眠時間の確保」と「昼寝の活用」です。健康な人でも夜間の睡眠時間が不足すると日中の眠気の原因になります。この現象はナルコレプシーの人でも同じです。日中の眠気を悪化させないためにも、夜間の睡眠は十分にとるようにしてください。また、日中の眠気を緩和するには昼寝を利用すると良いです。昼寝をすると、その後の眠気は和らぎます。短い昼寝を計画的にとることで、眠りたくない場面での眠気を抑えられます。

詳しい説明は「ナルコレプシーの治療」で説明しているので参考にしてください。

薬物治療

薬物治療は主に「日中の眠気」と「情動脱力発作」に効果があります。それぞれで用いられる薬が異なります。

  • 日中の眠気の主な治療薬
    • メチルフェニデート(リタリン®)
    • ペモリン(ベタナミン®)
    • モダフィニル(モディオダール®)
  • 情動脱力発作の主な治療薬
    • クロミプラミン(アナフラニール®など)
    • イミプラミン(トフラニール®など)
    • ベンラファキシン(イフェクサー®)

薬は効果の長さや副作用などを考慮して、もっとも適したものが選ばれます。薬の選ばれ方などの詳しい説明は「ナルコレプシーの治療」を参考にしてください。

6. ナルコレプシーの人が日常生活で気をつけること

ナルコレプシーの症状は日常生活に影響するので、上手に生活をするためにいくつかの注意点があります。特に大切な「睡眠の確保」と「食事」、「車の運転」について説明します。

睡眠時間の確保

ナルコレプシーの人のなかには日中に眠ってしまうことを理由に、夜間の睡眠を少なくする人がいます。健康な人でも夜間の睡眠時間を少なくすると、日中に眠気を感じます。これはナルコレプシーの人でも同じです。日中寝てしまうからといって、夜の睡眠時間を少なくすることは避けてください。

食事の注意点

カフェインやアルコールの摂取は日中の眠気を悪化させます。カフェインやアルコールを全く摂ってはいけないわけではありませんが、翌日に寝られない会議や行事がある場合は避けた方がよいでしょう。

車の運転の注意点

治療で薬を飲んでいる人は薬を飲み忘れた時には車の運転は避けるようにしてください。また、薬の服用直後は眠気が増す場合があります。薬を飲んでから運転するまで十分間隔を空けるようにしてください。また、健康な人と同様に、睡眠不足の状態での運転は危険です。運転の前日は睡眠を十分にとるようにしてください。

詳しくは「ナルコレプシーの人が知っておくとよいこと」を参考にしてください。