ナルコレプシーの治療について:薬物療法や生活習慣の改善など
生活習慣の改善と薬による治療を上手に組み合わせると、ナルコレプシーによる日中の眠気が抑えられます。生活習慣の改善を中心とした非薬物治療(薬を使わない治療)と薬物治療について説明します。
1. 非薬物治療:生活習慣の改善など
ナルコレプシーの治療には非薬物治療(薬を使わない治療)と薬物治療の2つがあります。薬物治療と非薬物治療(薬を使わない治療)を組み合わせることで高い効果が期待できます。
ナルコレプシーの人の非薬物療法は主に次の3つです。
- 病気を理解する
- 夜間の睡眠時間を確保する
- 昼寝を活用する
非薬物療法の効果が大きくなると薬の量を減らすことができ、それにともない副作用の心配を少なくすることができます。
病気を理解する
病気の理解を深めることは治療の一環であり、
ナルコレプシーの人が日中の眠気を抑えるためには、この後説明する「睡眠時間の確保」や「昼寝」が有効で、治療法でもあります。例えば、患者さんのなかには病気の理解が不十分なために、昼寝をしないよう無理をして起きていようとしている人がいます。これは、本人や周囲の人が眠ってしまうことに対して「怠けている」、「努力不足」という誤った認識をもってしまうことも原因の一つです。
まずは、病気への理解を深め、昼寝や夜間の睡眠時間の確保が有効な治療法であることを認識することが、病気と上手に付き合うための第一歩です。
夜間の睡眠時間を確保する
ナルコレプシーの人は夜間の睡眠時間を十分に確保するようにしてください。患者さんのなかには昼に寝てしまう分の時間を夜に取り戻そうとして、夜間の睡眠を削る人がいます。夜間の睡眠不足は日中の眠気を強くします。夜間の睡眠不足は健康な人でも日中の眠気の原因になり、ナルコレプシーの人でも同様です。日中の眠気をひどくしないためにも夜の睡眠時間は十分に確保するようにしてください。
ただし、夜間の睡眠を増やせば増やすほど日中の睡眠が軽くなるわけではありません。あまりに多くの時間を無理に睡眠にさきすぎると、活動時間が少なくなって学業や仕事への支障も考えられます。常識の範囲内で過不足なく夜間の睡眠時間を確保することが日中の強い眠気を和らげるのに重要です。
昼寝を活用する
昼寝は日中の眠気を和らげるのに有効だと考えられています。短時間の仮眠でも効果があるので、日中に計画的にとるとよいです。例えば、目を覚ましておく必要がある予定の前にあらかじめ短い時間の昼寝をしておくと、眠気に妨げられることなく臨むことができます。
2. 薬物治療
薬物治療では症状に合わせて薬が選ばれます。具体的に言うと、「日中の眠気」と「情動脱力
日中の眠気に対する薬
ナルコレプシーの「日中の眠気」に対して効果のある薬は次の3つです。
- メチルフェニデート(リタリン®)
- ペモリン(ベタナミン®)
- モダフィニル(モディオダール®)
薬の効果が続く時間や副作用などをみて薬の種類や量の調節が行われます。
■どのように薬が選ばれるのか
メチルフェニデートは効果が強く、効果が続く時間は4時間から5時間とされています。一方で、ペモリンやモダフィニルは効果は強くありませんが、効果が続く時間は10時間から14時間とされています。薬の特徴と起きていたい時間帯を考慮して、薬の種類や服用の仕方が調整されます。
例えば、午後にしっかりと目を覚ましておきたい場合は、昼前にメチルフェニデートを服用すると午後の眠気が抑えられて、夜には効果が薄れているので睡眠の妨げにはなりにくくなります。
薬の量や種類は患者さんの感じ方に合わせて調整されるので、薬の効果はお医者さんに遠慮なく伝えるようにしてください。
■副作用について
「日中の眠気」に対する薬の副作用には次のものがあります。
- 気分が高揚する
- 喉が渇く
- ドキドキする(
動悸 ) - 胃が痛む
薬の効果で日中は起きていられるようになっても、副作用によって日常生活に支障が現れる場合は薬の調整が必要です。例えば、気分が高揚してしまい夜に眠れない場合は、薬の種類を変更したり、服用する時間をずらすことで、夜眠れるようにします。薬を飲み始めて気になる症状が現れた場合は、遠慮なくお医者さんに伝えてください。
情動脱力発作に対する薬
情動脱力発作は強い喜怒哀楽にともなって全身や身体の一部の力が突然抜けることです。(情動脱力発作の詳しい説明は「ナルコレプシーの症状」を参考にしてください。)
情動脱力発作に効果のある薬は次の3つです。
- クロミプラミン(アナフラニール®など)
- イミプラミン(トフラニール®など)
- べンラファキシン(イフェクサー®)
情動脱力発作は
薬は持病などを踏まえて選ばれます。例えば、緑内障の人や心臓の機能に問題がある人などには使えないものがあります。