口唇口蓋裂の基礎知識
POINT 口唇口蓋裂とは
生まれつき唇や口蓋とは口の中と鼻の中を分けている構造のことで、口蓋裂があると口の中と鼻の中がつながった状態になります。唇だけが分かれている人は口唇裂といい、口の中と鼻の中を分けている構造が欠けている場合を口蓋裂といいます。口唇口蓋裂の原因ははっきりとはしていませんが、遺伝や妊娠中の喫煙などが関係していると考えられています。染色体異常によって起こることがあり、その場合は合指症や多指症、心臓の病気をともなうこともあります。外見上の問題以外にも母乳やミルクが飲めなかったり、言葉の発達などにも影響を及ぼすことがあるので、1歳半を目安に手術をして正常に近い形にします。口唇口蓋裂は小児外科や形成外科で治療が行われます。
口唇口蓋裂について
- 生まれつき唇や口蓋(口の中にある、口と鼻を分ける壁)が左右に分かれていること
- 唇だけが分かれている口唇裂、唇と歯茎が分かれている唇顎裂、口蓋が分かれている口蓋裂、全て同時に起こっている口唇口蓋裂がある
- 妊娠4-12週に唇や口蓋ができる際に、左右がうまくつながらないことが原因で起こると言われている
- 遺伝やストレス、妊娠中のタバコなどが関与していると言われている
- 国内では約500-700出生あたり1人の割合で生じている
- 一定の頻度で起こる病気であり、特別な原因がないことがほとんど
- 奇形症候群や
染色体 異常の一つの症状 のこともある- Treacher Collins(トリーチャー・コリンズ)症候群
- Pierre Robin(ピエール・ロバン)症候群
- 22q11.2欠失症候群
- 13トリソミー
- 18トリソミー
- 21
トリソミー (ダウン症候群) など
- 先天性心疾患や耳の異常、多指症・合指症などを
合併 しやすい - 口唇口蓋裂自体は治療法が確立しており命に関わる疾患ではない
- 生命
予後 という観点では、その他の合併奇形の有無が重要
- 生命
口唇口蓋裂の症状
口唇口蓋裂の検査・診断
- 診察のみで診断が可能
- 胎児
超音波検査 (母体経腹超音波検査)で出生前診断が可能な場合もある - その他の奇形確認のために検査が行われることはある
口唇口蓋裂の治療法
- 新生児期から大人になるまで成長にあわせて必要な治療をしていく
- 新生児期:哺乳を手助けし、手術に向けて体重増加を図る
- ホッツ床:口蓋のすきまを埋める器具
- 特殊乳首:口唇口蓋裂用の特殊な形をした乳首を使用する
- 乳児期以降
- 口唇裂:生後3-4か月、体重6kgを目安に唇を寄せる手術を行う
- 手術の後しばらくはテープで唇を寄せるようにすることが多い
- 口蓋裂:軟口蓋の手術を1歳頃、硬口蓋の手術を1歳半頃に行う
- 口唇裂:生後3-4か月、体重6kgを目安に唇を寄せる手術を行う
- 手術後は正しい発音ができるように発音のリハビリテーションを行う
- 手術後も閉鎖が不十分な場合には、
スピーチエイド と呼ばれる補助器具を装着することもある - 適宜聴こえの状態や成長・発達を評価していく
- 6-7歳頃より歯科矯正が必要になることもある
- 医療技術の進歩により、あまり傷跡もなく治療できるようになっている
口唇口蓋裂の経過と病院探しのポイント
口唇口蓋裂が心配な方
口唇口蓋裂は、生まれつき、唇や口蓋(舌の上にある、鼻と口の間の壁)が左右に分かれていることが特徴です。診断は多くの場合生まれてすぐに気づかれるのですが、小さい変化の場合や、粘膜下口唇口蓋裂といって表向きは変化が見えない場合などは発見が遅くなります。その場合は哺乳不良や発語不良などの症状から気づくことが多いです。
自分のお子さんが口唇口蓋裂かなと思ったら、まず出産した産科などの病院に相談しましょう。口唇口蓋裂は形成外科が専門で診療するため、かかりつけの産科医が適切に紹介してくれるでしょう。小児科を受診している時期に口唇口蓋裂に気がついた場合には、かかりつけの小児科医への相談で問題ありません。
口唇口蓋裂でお困りの方
基本的には自然に治癒しないため、手術を受けることになります。口唇口蓋裂を治療しないと、口が正しく機能しないため、哺乳などの障害が出ることがあります。形成外科では、口唇口蓋裂に対して、哺乳などの機能に問題のない適切な形にするための手術を行います。
手術を受ければ基本的には治癒する疾患です。最終的には総合病院の形成外科を受診することになりますが、最初の段階ではかかりつけのクリニック受診でも問題ありません。