伝染性紅斑(りんご病)の基礎知識
POINT 伝染性紅斑(りんご病)とは
伝染性紅斑はパルボウイルスB19が起こした感染症のことです。頬が赤くなるため、別名リンゴ病といいます。顔が赤くなる以外に、腕や足、皮膚も赤くなり、血球減少を起こすこともあります。妊婦が感染するとお腹の赤ちゃんに悪影響が出る場合があることが分かっているので、周囲に感染者がいる妊婦は特に注意して下さい。飛沫感染あるいは接触感染なので、マスクと手洗いを徹底すると良いでしょう。たいていの場合は発疹が出てから伝染性紅斑に気づくのですが、発疹が出た時にはすでに感染性はなくなっていると言われています。 特に検査は行わずに症状から診断されることが多いです。治療は有効なものがなく、予防接種もありません。そのため、日常からのマスク着用と手洗いが非常に重要になります。
伝染性紅斑(りんご病)について
ウイルス 感染によりかぜのような症状に加え、赤い発疹 ができる病気- 顔や腕、脚の皮膚に赤い発疹が出る
- 頬が赤くなることがりんごに似ているためこうした病名がついた
パルボウイルスB19 というウイルスが原因で起こる- 咳やくしゃみなどの
飛沫感染 や接触感染 でうつる
- 咳やくしゃみなどの
- 成人になって初めて感染すると症状が重くなる
- 小児と接触の多い、保育士、教師などで多く
発症 する
- 小児と接触の多い、保育士、教師などで多く
- 6〜12歳の小児に多い
- 約半数の人が15歳までに
免疫 をもつ
- 約半数の人が15歳までに
- 妊婦が初めて感染すると、胎盤を通じて胎児に感染し、胎児水腫や流産の原因となることもある(多くの場合は正常な出産)
- 遺伝性球状赤血球症といった溶血性貧血の疾患をもっている人が
パルボウイルス にかかると、重度の貧血になることがあり注意が必要である - パルボウイルス
感染症 になった際になりやすい病気 - 感染を周囲にうつす可能性があるのは初期の段階であり、頬が赤くなるなど症状があらわれた段階で感染力はほとんどないため登校は可能である
伝染性紅斑(りんご病)の症状
伝染性紅斑(りんご病)の検査・診断
- 医師の診察により、症状から診断されることが多い
- 必要に応じて血液検査を行う:
パルボウイルスB19 に対する免疫 の反応などを確認- 2回採血を行う場合もある
伝染性紅斑(りんご病)の治療法
- 自然に
治癒 することがほとんど - 予防できるワクチンはない
発疹 が出現したときはすでに感染力がないので、元気なときは学校を欠席する必要はない
伝染性紅斑(りんご病)の経過と病院探しのポイント
伝染性紅斑(りんご病)が心配な方
伝染性紅斑(りんご病)は、風邪と同じくウイルス感染症の一つで、顔をはじめとして全身に赤みやぶつぶつのような皮疹ができる病気です。熱や咳、鼻水のような風邪症状が出ることもありますが、この時点では皮膚の変化がまだ出現しないタイミングであるため、症状があったとしてもただの風邪と区別がつきません。そこから一週間ほど経ってから顔の、特にほっぺたの部分に赤みが出てきます。そして徐々に赤みやぶつぶつが手足を含む全身へ広がっていきます。子どもは風邪症状よりも皮膚の変化が出やすく、成人では皮膚の変化が出にくい(熱や関節痛が出やすい)ことも知られています。
まず始めに理解しておきたいのは、伝染性紅斑は基本的に自然治癒する病気であり、元気な方であれば特に深刻に捉える必要はあまりない病気だということです。治療薬と言っても解熱薬のような対症療法薬のみでそれ以外は必要のない(そもそも特効薬がない)病気でもあります。「保育園で伝染性紅斑の人が以前いて、うつった可能性が高い」「伝染性紅斑に特徴的な症状が出ている」といったような場合であれば、高熱が出たり、後述するように妊婦が近くにいるような場合を除けば、とりあえず病院を受診せずに様子を見るのもいいでしょう。
したがって、伝染性紅斑で医療機関を受診する目的というのは、他の病気ではないことを確認することが主体です。例えば水痘(水ぼうそう)でも同様に、熱や全身のぶつぶつが出ます。症状が軽い伝染性紅斑の場合、受診をして診断がついても特に薬が出ないことも多いです。
伝染性紅斑ではないかと思ったときの受診先は、お子さんならば小児科のクリニック、成人の方であれば内科か、皮膚の変化があれば皮膚科のクリニックが良いでしょう。伝染性紅斑は小児に多い病気ですが、成人もかかることがあります。小児科の医師は診断に慣れていますが、成人を主に診ている医師では、場合によっては伝染性紅斑の可能性が思い浮かびにくいこともあるかもしれません。例えばご家族に伝染性紅斑の方がいてご自身にうつったのではないかと感じているような場合には、ぜひそのことを申し出るようにしてください。
伝染性紅斑(りんご病)でお困りの方
伝染性紅斑で注意が必要なのは、妊婦が感染したか、感染者の周囲に妊婦がいる場合です。妊娠中に伝染性紅斑にかかると、流産の原因になったり胎児水腫といった病状を引き起こしたりすることがあります。妊娠中の方は、伝染性紅斑が流行している保育園や学校に子どものお迎えに行かないといった注意が必要です。一方で、仮に妊娠中に伝染性紅斑にかかってしまったとしても、大半の場合には何の影響もなく無事に出産を迎えることができます。この病気にかかっていない人と比べると流産や胎児水腫のリスクが少し上昇するといった程度の差に過ぎませんので、もしかかっていたとしてもあまり心配しすぎることなく、産科の主治医と相談しながら過ごされるのが良いでしょう。
伝染性紅斑は周囲へ感染する病気ではあるのですが、伝染性紅斑だと診断がつく時にはすでに感染力を失っているという特徴があります。初期に風邪のような症状が出るタイミングがあるのですが、このタイミングで周囲へ感染します。しかしこの時点では皮膚の変化がないために伝染性紅斑だと診断がつくことはまずありません。後から皮膚が赤くなってきて「あの時の風邪は伝染性紅斑の初期症状だったのか」というような形で診断がつくことがほとんどです。そして、皮膚の症状が表れているときには既に感染力がありませんので、伝染性紅斑だという理由で学校を休むような状況は現実的にはないということになります。