2016.02.15 | ニュース

子どもの心臓を冒すウイルス、死亡例も

17人の例から

from Archives of disease in childhood

子どもの心臓を冒すウイルス、死亡例もの写真

りんご病(伝染性紅斑)の原因としても知られるパルボウイルスB19は、胎児水腫などさまざまな病気を引き起こします。きわめて重い場合として、致命的な心筋炎が起こった17人の子どもの例が報告されました。

◆パルボウイルスB19が心筋炎を起こす

心筋炎はウイルスや細菌の感染、免疫の異常が原因でまれに起こる心臓の病気です。心筋炎を起こすウイルスとしてコクサッキーBウイルスやパルボウイルスB19が知られています。心臓の炎症そのものを治療する方法はなく、心臓が血液を十分に送り出せなくなる心不全の状態に陥った場合、心不全に対する治療が行われます。心筋炎によって起こる心不全や不整脈は命に関わります。

この報告では、パルボウイルスB19による心筋炎の経過などの特徴を示すため、子どもの患者17人の情報をまとめています。

 

◆5人死亡、11人は急変なし

17人の経過に次の特徴がありました。

17人の患者は受診時の年齢が中央値1.3歳(範囲0.4歳から15.4歳)で、平均短縮率15±3%の心不全があった。

イベントのない生存は17人の患者のうち11人(65%)で得られた。

5人(29%)の患者が死亡し、1人は心臓移植を受けた。

17人の年齢は満0歳から15歳で、半数は1歳4か月以下でした。調査期間に急を要する出来事がないまま生存していた人は11人、死亡した人は5人でした。死亡した人には、全員に心電図の特定の変化(ST上昇)があり、5人中4人に前兆と見られる症状が起こっていました。

 

非常にまれな場合とはいえ、りんご病を起こすパルボウイルスB19の感染はこうした危険な事態にもつながります。ワクチンや特効薬はまだ作られていません。パルボウイルスB19 の研究がさらに進むことが待ち望まれます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Parvovirus B19 myocarditis in children: an observational study.

Arch Dis Child. 2016 Feb.

[PMID: 26613943]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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