2016.02.17 | ニュース

家族が一斉に貧血と黄疸に、ウイルス感染から見つかった遺伝病

イランの家族の例

from Iranian journal of medical sciences

家族が一斉に貧血と黄疸に、ウイルス感染から見つかった遺伝病の写真

りんご病(伝染性紅斑)の原因として知られるパルボウイルスB19 は、特徴的な赤い発疹のほかにも全身にさまざまな影響を及ぼします。家族の中で感染が起こり、一斉に重症の貧血が起こった例が報告されました。

◆家族が一斉に貧血と黄疸に

イランの研究班によるこの報告は、4歳の女の子、14歳の男の子とその母親がパルボウイルスB19 に感染し、全員が重症の貧血に陥ったことを記しています。

はじめに女の子に発熱、顔の蒼白、眼球の黄疸(白目の部分が黄色く見える)の症状が現れました。受診時に母親にも黄疸が見られました。その翌日には男の子にも発熱、蒼白、黄疸が現れました。

 

◆危険な体質の家系だった!

検査の結果、この家族は遺伝性球状赤血球症の家系であること、また全員がパルボウイルスB19 に感染していたことがわかりました。

遺伝性球状赤血球症は、患者の子どもにも1/2の確率で発症する病気で、赤血球が体の中で壊れる「溶血性貧血」という状態を引き起こします。赤血球に含まれるヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割がありますが、溶血性貧血ではヘモグロビンが足りなくなり顔が蒼白になるなどの貧血の症状があるほか、ヘモグロビンが代謝されてできる物質により黄疸が起こります。

パルボウイルスB19は貧血を急激に悪化させることが知られています。この家族は、遺伝性球状赤血球症のためにもともと貧血の危険性が高い体質だったところ、パルボウイルスB19 により一斉に急激な悪化に陥ったと見られました。

ヘモグロビンの量が女の子で3.3mg/dl、男の子で4.6mg/dl、母親で3.6mg/dlと非常に危険な水準にまで下がっていたため(健康な成人女性では12mg/dl以上)、輸血などで救命されたうえ、古い赤血球を壊している脾臓を取り除く手術が行われました。

研究班は「この報告で臨床上重要な点として、説明のつかない重症の貧血と黄疸が急に発症した患者については、背景に遺伝性球状赤血球症を代表とする溶血性貧血がパルボウイルスB19 による再生不良性クリーゼを合併していることを考慮するべきである」と述べています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Hereditary Spherocytosis Unmasked by Human Parvovirus B19 Induced Aplastic Crisis in a Family.

Iran J Med Sci. 2015 Sep.

[PMID: 26379354]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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