ED(勃起障害)とはどんな病気なのか
EDとは性行為に十分な勃起が得られない状態のことを指します。打ち明け難い病気であるため、ひとりで悩みを抱えてしまう人は少なくありません。ここではEDの概要として、
目次
1. ED(勃起障害)とはどんな病気なのか
『ED
EDの頻度について
EDに悩む人は少なくありません。40歳から70歳の日本人を対象にした調査によると、全体のうち34.5%の人が「EDがある」と回答しています。
( *なお、この調査では「勃起がまったくない状態とたまに勃起がない状態」をEDと定義しています)
EDになる年齢ついて
年齢を重ねるとともにEDを自覚する人が増加することが調査でわかっています。20歳代や30歳代では少ないのですが、40歳を超えるとEDになる人が増え始めます。
2. EDの症状について
EDの症状には幅があります。重症な場合はまったく勃起しません。一方で、軽症の場合は数回に1回に勃起しないといった程度です。また、勃起の有無だけではなく、性交中に勃起を持続できなかったり、性交に不十分な勃起である場合もEDに含まれます。
ちなみに、勃起はするものの射精が上手くできない場合は、「射精障害」と呼ばれる病気で、EDには含まれません。射精障害とEDでは治療が異なるので、悩みがどちらによるものかをはっきりさせるために、できるだけ正確に症状をお医者さんに伝えてください。
3. EDの原因と種類について
EDは原因によって4つに分類されます。原因によって治療法が異なるので、どのタイプに当てはまるかをはっきりさせる必要があります。
心因性勃起障害:精神的な問題が原因となる勃起障害
心因性勃起障害は過去の性体験や、性器の大きさ・形に対する劣等感などが原因となるEDです。心因性勃起障害には心理療法が効果があり、必要に応じてED治療薬が使われます。
器質性勃起障害:血管や神経の問題が原因となる勃起障害
混合性勃起障害:心因性と器質性の両方の要素がある勃起障害
混合性勃起障害は心因性と器質性の両方の要素が原因として考えられるタイプです。どちらの要素も抱えていることから、ED治療薬に加えて、心理療法、持病の治療が行われます。
4. EDの検査について
EDが疑われる人には、次のような診察や検査が行われます。
【EDの診察や検査】
問診 - 身体診察
- 血液検査
- 特殊診断検査
- 夜間勃起機能の評価
- PGE1の
陰茎海綿体 注射:陰茎に勃起を促す薬を注射して反応を見る検査
ほとんどの場合、問診や診察でEDで診断がつきます。また、EDの原因となる病気(糖尿病や
検査についてより詳しく知りたい人は「こちらのページ」を参考にしてください。
5. EDの治療について
EDの主な治療法は次の4つです。
- 心理療法
- 生活習慣の改善
- 原因となる持病の治療
- 薬物治療
心因性勃起障害(心理的な問題で起こるED)の人には心理療法が有効です。精神科医や心理士とともに原因や対処法について考えていきます。
禁煙や減量、運動習慣の確立といった生活習慣の改善が、治療にも予防にもつながります。
糖尿病や高血圧、男性更年期障害といった持病もEDの要因になるので、持病のコントロールがEDの治療にもなります。
また、薬物治療で使われるED治療薬には3種類の飲み薬があり、効果が望めます。
それぞれの治療に関する詳しい説明は「こちらのページ」を参考にしてください。
6. ED(勃起障害)で知っておくとよいこと
ここまでEDの原因や治療などを説明してきましたが、次にEDで知っておくとよいことをいくつか取り上げます。
EDに予防法はあるのか
EDを完全に予防できる方法は確立していません。一方で、EDになりやすい病気や生活習慣はわかっており、これらの改善が予防に役立つと考えられています。まず、以下の病気や生活習慣に当てはまるものがあるかどうかをチェックしてみてください。
上に挙げた項目に当てはまるものがある人は、治療や改善に取り組むようにしてください。例えば、高血圧や糖尿病の治療が上手くいっていないのであれば、主治医と相談して治療を見直す必要がありますし、喫煙者であれば禁煙を検討してください。
EDをセルフチェックする方法はあるのか
EDの診断には性交時の状況が参考にされます。医療機関ではSHIM(Sexual Health Inventory for Men)という質問票を使って性交時の状況を調べることが多く、この質問票はセルフチェックとしても使うことができます。SHIMの内容は「こちらのコラム」で詳しく説明しているので、参考にしてください。
ED治療薬は個人購入しない
ED治療薬は医療機関で手に入れることができますが、インターネット上で個人購入用に販売されているものもあります。個人購入できる薬の中には偽物が混じっており、健康被害も報告されています。EDを治療したい人は医療機関で相談するようにしてください。
なお、上記で説明したもの以外のよくある疑問も含めて、「こちらのページ」で取り上げています。
【参考文献】
・赤座英之/監 並木幹夫, 堀江重郎/編, 「標準泌尿器科学」, 医学書院, 2014
・勝岡洋治/編, 「泌尿器科診療ガイド」, 金芳堂, 2011
・日本性機能学会・日本泌尿器科学会/監, 「ED診療ガイドライン第3版」, リッチヒルメディカル, 2018
・UpToDate Evaluation of male sexual dysfunction Authors:Glenn R Cunningham, MD Mohit Khera, MD, MBA, MPH
・Nicolosi A, et al., Epidemiology of erectile dysfunction in four countries: cross-national study of the prevalence and correlates of erectile dysfunction.Urology. 2003 Jan;61(1):201-6.
・厚生労働省 「個人輸入において注意すべき医薬品について」(2019.11.20 閲覧)
・厚生労働省「偽造医薬品問題の現状と対策について」(2019.11.20 閲覧)