1. ED(勃起障害)のセルフチェック
どの程度から「ED」になるかを知っている人は多くはないと思います。満足のいかない性行為があったとしても、その一回の経験を根拠に「ED」と診断を受ける訳ではありません。そこで、セルフチェックとして医療機関で用いられる質問表を紹介するので、最近6ヶ月の自分の状況を当てはめてみてください。
【SHIM:Sexusl Health Inventory for Men】
■質問①:勃起してそれを維持する自信はどれくらいありましたか
- 1点:非常に低い
- 2点:低い
- 3点:中くらい
- 4点:高い
- 5点:非常に高い
■質問②:性的刺激によって勃起した時、どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりましたか
- 0点:性的刺激はなかった
- 1点:ほとんど、又はまったくなかった
- 2点:たまになった(半分よりかなり低い頻度)
- 3点:時々なった(ほぼ半分の頻度)
- 4点:しばしばなった(半分よりかなり高い頻度)
- 5点:ほぼいつも、又はいつもなった
■質問③:性交の際、挿入後にどれくらいの頻度で勃起を維持できましたか
- 0点:性交を試みなかった
- 1点:ほとんど、又は全く維持できなかった
- 2点:たまに維持できた(ほぼ半分の頻度)
- 3点:時々満足できた(半分よりかなり高い頻度)
- 4点:しばしば維持できた(半分よりかなり高い頻度)
- 5点:ほぼいつも、又はいつも満足できた
■質問④:性交の際、性交を終了するまで勃起を維持するのはどれくらい困難でしたか
- 0点:性交を試みなかった
- 1点:極めて困難だった
- 2点:とても困難だった
- 3点:困難だった
- 4点:やや困難だった
- 5点:困難ではなかった
■質問⑤:性交を試みた時に、どのくらいの頻度で性交ができましたか?
- 0点:性交を試みなかった
- 1点:ほとんど、又は全くできなかった
- 2点:たまにできた(ほぼ半分の頻度)
- 3点:時々できた(半分よりかなり高い頻度)
- 4点:しばしばできた(半分よりかなり高い頻度)
- 5点:ほぼいつも、又はいつもできた
*合計21点以下の人は勃起障害が疑われる
21点以下の人はEDの可能性があるので、受診の目安としてみてください。一方、スコアが22点以上あった人はEDの可能性は低いです。
2. ED(勃起障害)が疑われる人はどうすればよいのか
EDの治療を希望する人は必ず医療機関で相談するようにしてください。受診を勧める理由は主に3つあります。
医療機関の受診を勧める理由①
EDの治療と聞くと、バイアグラ®やレビトラ®、シアリス®といった薬物治療が頭に浮かぶ人が多いかもしれません。ED治療薬を上手に使えば、性生活を今より充実させることができます。
医療機関でED治療薬を処方してもらっている人がいる一方で、インターネットなどを利用して個人購入する人がいますが、医師の立場から個人購入はお勧めできません。厚生労働省によると、インターネットで販売されているED治療薬の約半数が偽物であり、使用による健康被害が報告されているとのことです。また、たとえ薬が本物であったとしても、脳卒中や心筋梗塞などになったことがある人が、安易に服用すると、重大な副作用のために生命に危険が及ぶことがあります。自分の状況に応じて薬を上手に使う必要があるのです。
気恥ずかしさや、受診の手間を省くために、インターネットでの購入を選んでしまうと、「偽物」や「不適切な使用」のリスクを背負うことになります。自身の健康のために、医療機関で相談した上で、ED治療薬を手にするようにしてください。
医療機関の受診を勧める理由②
生活習慣や持病がEDに影響していることがあります。EDに悩む人の中には、生活習慣の見直しや持病の治療によって、薬に頼らなくてもが改善する人がいます。 医療機関で相談すると、お医者さんが勃起障害の原因を調べてくれ、必要に応じて改善策を一緒に考えてくれます(なお、勃起障害に関わる生活習慣や病気については次回以降のコラムで説明します)。
医療機関の受診を勧める理由③
EDの悩みを一人で抱え込んでしまうと自信の喪失や不安、ストレスにもつながります。実際の臨床現場で、悩みを打ち明けて治療に取り組むことで、仕事や家庭に対して積極的になれたと表情を明るくする患者さんを多く目にしてきました。親身になってくれるお医者さんと話すだけでも心の重みは軽くなります。一人で問題を背負い込む前に相談してみてください。
3. 一人で悩まずに医療機関で相談を
性生活に問題があったとしても、相談するハードルが高いためか、現状で我慢する人や、薬を自己購入してしまう人は少なくありません。一人で悩んだり安易な自己解決を図ることで、かえって心の重荷が大きくなっている人を外来で目にしてきました。
EDは医療機関で適切な治療を受けることができます。悩みがある人は、お医者さんに相談して、不安の解消と自尊心を手にしてもらえると幸いです。
執筆者
・「標準泌尿器科学」(赤座英之/監 並木幹夫、堀江重郎/編)、医学書院、2014
・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011
・「ED診療ガイドライン」
・UpToDate Evaluatio of male sexual dysfunction Authors:Glenn R Cunningham, MD Mohit Khera, MD, MBA, MPH
・Epidemiology of erectile dysfunction in four countries: cross-national study of the prevalence and correlates of erectile dysfunction.
・厚生労働省 個人輸入において注意すべき医薬品について
・厚生労働省 偽造医薬品問題の現状と対策について
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。