心筋梗塞の1年後、性機能の問題が男性の4割、女性の6割に発生

心筋梗塞が起こると、運よく生き延びても後遺症が残ることがあります。後遺症のひとつが性機能障害です。心筋梗塞を起こした人の追跡調査から、性機能に問題が起こった人の男女別の割合が報告されました。
心筋梗塞患者を1年後まで追跡
アメリカとスペインの研究班が、専門誌『JAMA Cardiology』に報告した研究を紹介します。
この研究は、心筋梗塞の患者の追跡調査で得られたデータを解析したものです。調査はアメリカとスペインの病院で、2008年から2012年にかけて行われました。心筋梗塞の治療を受けた人が対象となり、
潤滑困難、勃起困難などの問題あり
2,802人の対象者が集まりました。年齢は18歳から55歳で、半分の人が49歳以下でした。
集計から次の結果が得られました。
調査開始時点で性活動があった人の間で、心筋梗塞から1か月以内に性活動を再開している割合は女性よりも男性で高く(448人 [63.9%] vs 661人 [54.5%]、P <0.001)、1年以内でも同様だった(662人 [94.4%] vs 1107人 [91.3%]、P = 0.01)。
心筋梗塞の前にも後にも性活動があった人の間で、心筋梗塞から1年後に性機能の問題がないと報告する割合は、女性のほうが少なかった(466人 [40.3%] vs 382人 [54.8%]、P <0.01)。
1年時点で、最も多い性的問題は、女性では関心喪失(487人、39.6%)、潤滑困難(273人、22.3%)であり、男性では勃起困難(156人、21.7%)、関心喪失(137人、18.8%)だった。
心筋梗塞の1か月後までに性活動を再開できた人は男性で63%、女性で54%でした。
1年後には、男性の45%、女性の59%に何らかの性機能の問題が残っていました。
問題として多かったのは、女性で関心喪失と潤滑困難、男性で勃起困難と関心喪失でした。
特に、強いストレスを受けている人、糖尿病がある人で性活動喪失が多くなっていました。
研究班は「対策できるリスク要因に注意し、医師に相談することで結果がよくなるかもしれない」と述べています。
まとめ
性機能はともすれば「死ぬほどではない」と思われがちですが、生活の中でとても大切な要素であることは間違いありません。特に、この研究で対象とされた50歳前後はまだまだ性活動がある年齢です。
心筋梗塞後の性機能障害は医師の間でも認識されている問題です。万一自分が見舞われることがあれば、早めに主治医に相談してください。
執筆者
Sexual Activity and Function in the Year After an Acute Myocardial Infarction Among Younger Women and Men in the United States and Spain.
JAMA Cardiol. 2016 Aug 31. [Epub ahead of print]
[PMID: 27579897]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。