ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)の基礎知識
POINT ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)とは
顔面神経麻痺のうち原因が明らかでないものをベル麻痺と呼びます。疲労や免疫力の低下、ストレスなどをきっかけに、以前に感染していた単純ヘルペスウィルスのウィルス量が増えて麻痺を起こすと考えられています。片方の顔の筋肉が動かなくなり症状が現れます。代表的な症状は「まぶたが閉じられない」「口元から水が漏れる」「味覚が低下する」などです。 顔面神経麻痺を起こす病気には、緊急治療が必要となる脳梗塞があるので、まず神経内科や脳神経外科のある病院に受診することをおすすめします。脳梗塞などの可能性が低いと診断された場合は、耳鼻咽喉科を受診して追加で聴力検査などが行われます。治療ではステロイドや抗ウィルス薬といった薬物治療が行われます。発症から1週間以内での治療開始することが望ましいため、症状が出た場合は早期の受診をてください。
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)について
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)の症状
- 片側の顔に症状が起きることが多い
- 顔面の症状
まぶた が閉じられない- ひたいにしわが寄せられない
- 口元が垂れてしまう
- よだれが出る
- 聴覚の症状
- 音が大きく聞こえ響いてしまう(聴覚過敏)
- 味覚の障害
- 舌の前側2/3の部分の味覚障害
- よく金属を口に入れたような感じがすると言われる
- 眼が閉じにくいことから、角膜が乾燥してしまい
潰瘍 ができてしまうこともある(角膜潰瘍)
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)の検査・診断
- 顔面神経麻痺は、特徴的な顔の症状から判断できる
- 血液検査:
ウイルス に感染していないかなどを調べる 神経伝導検査 :神経の麻痺 の程度などを調べる- 顔面神経麻痺が生じる病気はいくつかあるため、それぞれを見分けるための検査を行う
- 画像検査:脳梗塞、脳腫瘍がないかなどを調べる
頭部CT検査 頭部MRI 検査
- ラムゼイ・ハント症候群
- 耳の中の
発疹 など、その他の症状から判断する
- 耳の中の
- 画像検査:脳梗塞、脳腫瘍がないかなどを調べる
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)の治療法
- 一般的に2-3週間で症状が改善し始め、2-3か月で8割前後の人が完治する
- その一方で最終的に症状が改善せず、ある程度の後遺症が残ってしまうケースもある
- 後遺症としては、顔が動きづらいこと以外に、顔面のけいれんが出現することがある
- 症状が出現して治療を開始してからも、最初の1週間くらいの間は症状が悪化するケースが多い
- 治療薬
ステロイド薬 (炎症 を抑える)- 抗
ウイルス 薬(ヘルペス属ウイルスに対するもの) ビタミン B12薬 など
- 角膜潰瘍に対しては
点眼薬 が用いられる - 顔面の
麻痺 が顔全体に起きている場合は、経過が悪い場合が多い - 早期からの
内服薬 による治療が大切 - リハビリテーションを行うこともある
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)の経過と病院探しのポイント
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)が心配な方
ベル麻痺は、ある日突然、顔面の表情が左右非対称的になってしまうという経過で発症するのが典型的です。顔面の片側の筋肉が働かなくなってしまうため、片側のみで表情が作れなくなります。例えば、右側では笑顔になっていても左側では口角が下がっていたり、片方のみまゆげが上がらなくなったり、といったような具合です。このような症状の病気ですから、鏡を見ればご自身で診断することは比較的容易です。ただし、「以前から左右で顔の作りが違うような気がする」というものではなく、昨日まで問題なかったものがある日突然変わってしまう、という経過がこの病気です。
少しだけ専門的な内容になりますが、ここまでで記した内容は、いわゆる顔面神経麻痺についての説明です。顔面神経麻痺には、ウイルス感染や腫瘍、脳梗塞など様々な原因がありますが、その中でいくつかの検査を行っても原因が確定されないものがベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)と呼ばれます。したがって、ご自身で表情の変化に気づかれた時点で自己診断できるのは、顔面神経麻痺があるというところまでです。それがベル麻痺かどうかは、病院でいくつかの検査をして初めて判断されます。
ご自身が顔面神経麻痺でないかと心配になった時、最初に受診するのは神経内科または脳神経外科のある病院をお勧めします。顔面神経麻痺の重要な原因の一つに脳梗塞がありますので、脳梗塞でないことを確認するために、それを念頭に置いた診察を行います。場合によっては頭部MRIや頭部CTの検査も必要になるでしょう。発症から時間が経っていたり、脳梗塞が起こることがまれな若い方などの場合には、検査を行わずに顔面神経麻痺として治療を開始することもあります。
ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)でお困りの方
ベル麻痺の治療は、なかなか劇的に効くものがなく、難航しがちです。ステロイド薬や抗ウイルス薬を使用することがありますが、これらも服用すれば必ず治癒する、というものでもありません。多くは自然の経過で治癒するのですが、治癒率は100%というわけではなく、後遺症として顔面の変化が残ってしまう方もいます。
一部には顔面神経外来や顔面神経麻痺外来といった専門性の高い内容の医療を提供している医療機関もあります。症状が長引いたり、治療が難航している場合にはこれらの外来受診を考えてみても良いかもしれません。そのような場合でも、最初の医療機関で受けた治療の内容を引き継ぐために、診療情報提供書(紹介状)をもらった上で受診されることをお勧めします。