2016.09.14 | ニュース

突然顔がゆがんで…「ベル麻痺」はステロイドで治る?

文献の調査から

from The Cochrane database of systematic reviews

突然顔がゆがんで…「ベル麻痺」はステロイドで治る?の写真

ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)は、顔の左右半分だけが急に動かなくなり、口が非対称にゆがむなどの症状を起こします。治療には主にステロイド薬が使われます。これまでに報告された治療効果の調査が行われました。

ベル麻痺は原因不明の病気です。数か月で完治する人が多いですが、顔が動かしにくい後遺症が残る人もいます。治療にはステロイド薬を使います。塗り薬ではなく飲み薬や点滴です。

ここで紹介する研究は、ベル麻痺をステロイド薬で治療したときの効果と副作用の報告を集めて評価したものです。

研究班は2016年3月に文献データベースの検索を行い、報告されている研究結果を集めました。
効果の基準として、治療後に後遺症が残った人の数を比較しました。

 

7件の研究が見つかりました。結果のデータを統合し、895人の患者についての情報が得られました。

治療開始から6か月後に後遺症があった人は、ステロイド薬を使った人のグループでは17%でしたが、使わなかった人のグループでは28%でした。すなわちステロイド薬を使った人の10人に1人程度の割合で、後遺症を予防できると見られました。

副作用の可能性があることとして、一時的な睡眠障害などが報告されていましたが、頻度はステロイド薬を使わなかった場合と同程度でした。報告された範囲で深刻な副作用はありませんでした。

 

ステロイド薬は炎症を抑える作用などがあり、さまざまな病気に対して使われます。長期間の使用では高血糖・感染症・骨粗鬆症などの副作用が問題になりやすいですが、ベル麻痺の治療ではあまり問題がなかったようです。

ベル麻痺の治療としては、ステロイド薬のほかに抗ウイルス薬が使われることもあります。ベル麻痺の一部はウイルス感染が原因と考えられているためです。しかし、全体としては抗ウイルス薬を単独で使っても効果が薄いという報告があります。やはりステロイド薬はベル麻痺の治療に欠かせない薬と言えます。

ベル麻痺は誰にでも突然起こります。ベル麻痺と間違いやすい病気に脳卒中や帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)がありますが、ベル麻痺なら治ります。

顔にこんな症状が出たら急いで病院に行き、ステロイド薬をもらってください。

  • 片目だけまぶたが閉じられない
  • 片側だけひたいにしわが寄らない
  • 片側だけ口元が垂れる
  • よだれが出る
  • 音が大きく聞こえる
  • 味がおかしく感じる
  • 金属を口に入れたような感じがする

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Corticosteroids for Bell's palsy (idiopathic facial paralysis).

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 18.

[PMID: 27428352]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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