2015.07.16 | ニュース

【取り下げ】顔面神経麻痺に抗ウイルス薬を使う意味はあるのか?重症度、共同運動、ワニの涙症候群

11件2,883人のメタアナリシス
from The Cochrane database of systematic reviews
【取り下げ】顔面神経麻痺に抗ウイルス薬を使う意味はあるのか?重症度、共同運動、ワニの涙症候群の写真
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ベル麻痺(原因不明の顔面神経麻痺)には単純ヘルペスウイルスの感染が関わっているという説がありますが、これまでに抗ウイルス薬の効果を調べた文献をまとめたところ、標準的なステロイド薬による治療に加える効果は限られていたという結果が出ました。

【要注意:論文取り下げ】

ここで紹介している論文は、この紹介記事の公開より後に、原著者により取り下げられました。一部の情報源について信頼性に疑問があったためとする説明が、掲載誌のサイトで公開されています。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD001869.pub7/abstract

 

ベル麻痺顔面神経麻痺のうち原因不明のものを指す呼び方です。まぶたが閉じられない、よだれが出るなど、顔の筋肉の動きに症状が現れます。多くの場合はステロイド薬などの治療により数か月で完治しますが、ある程度の後遺症が残ることもあります。

 

◆過去の研究を検証

研究班は、文献検索によりベル麻痺の治療として抗ウイルス薬の効果を調べたものを集め、内容を検証したうえ11件の研究から得られた2,883人の参加者のデータを統合して、統計解析を行いました。

 

◆全体としては効果が認められず

解析から次の結果が得られました。

ベル麻痺のある人に対して、副腎皮質ステロイド単独治療に比べて、抗ウイルス薬を副腎皮質ステロイドに加えることに有意な利益は見いだされなかった(リスク比0.69、95%信頼区間0.47-1.02、n=1,715)。重症のベル麻痺(House-Brackmannスコア5および6、またはほかの尺度で相当する重症度)がある人に対して、副腎皮質ステロイドと抗ウイルス薬が併用された場合に、6か月での不完全な回復の率が減少していた(リスク比0.64、95%信頼区間0.41-0.99、n=478)。

抗ウイルス薬単独の治療は、帰結に対して偽薬と比べて有意でない有害な方向の効果を示した(リスク比1.10、95%信頼区間0.87-1.40、n=658)。

副腎皮質ステロイドと抗ウイルス薬の併用を副腎皮質ステロイドと偽薬の併用と比較し、共同運動またはワニの涙症候群を評価した3件の試験で、長期的な後遺症について副腎皮質ステロイドと抗ウイルス薬の併用を優位とする有意な差が見られた(リスク比0.73、95%信頼区間0.54-0.99、n=869)。

全体として、ステロイド薬単独で治療したときと、ステロイド薬に抗ウイルス薬を加えて治療したときの効果に統計的な違いは見られませんでした。抗ウイルス薬単独では偽薬に比べて効果が見られませんでした。重症のベル麻痺に限って見ると、抗ウイルス薬を併用した場合に効果が改善していました。また、ベル麻痺のあと長期的に残る後遺症として、動かそうとした筋肉と一緒にほかの筋肉も動いてしまう「共同運動」、食事のときなどに涙が出る「ワニの涙症候群」という症状が現れる割合は、抗ウイルス薬を併用した場合に少なくなっていました。

 

ベル麻痺は日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。どんな場合に抗ウイルス薬を使うべきか、またウイルス感染がどのようなしくみでベル麻痺発症に関わっているのか、さらに解明が進むことが望まれます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Antiviral treatment for Bell's palsy (idiopathic facial paralysis).

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 1 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26130372]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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