ステロイド潰瘍はステロイドでは起こらない(!?)

医療用で用いられるステロイドは、免疫疾患、アレルギー疾患、血液疾患など様々な領域で使用されている薬です。多くの有益な作用の一方で副作用も多様であり、特に“ステロイド潰瘍”の名前と共に消化管への副作用はよく知られていますが、実際には…。
◆ ステロイドの消化管への副作用とは?
医療用
ステロイドは胃液を酸性(すっぱい性質)に傾けて消化
しかし近年、ステロイドを投与しているからステロイド潰瘍ができるわけではないということがわかってきました。
以前は胃酸やペプシンといった胃に対しての攻撃因子になるとされるものが消化性潰瘍の発生原因と考えられていましたが、最近の研究では消化性潰瘍の原因の多くはヘリコバクター・ピロリ菌によるものであることがわかっています。
◆ NSAIDsによる消化性潰瘍の発生とステロイドの関係
NSAIDsにはシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害する作用があり、このCOXの種類の中でCOX1というものが胃粘膜防御因子であるプロスタグランジン(PG)の生成に関わっています。その為、NSAIDsの投与→COX1阻害→PG生成抑制 という順を経て潰瘍が発生するのです。通常NSAIDsの投与(特に中~長期的な投与など)にはPPI(プロトンポンプ阻害薬)などの潰瘍を防ぐ薬を合わせて服用する治療方法が一般的となっています。
ではステロイド自身はどうかというと、最近の消化性潰瘍
今回ご紹介したように、ステロイド投与中に潰瘍が発生するのはピロリ菌の感染やNSAIDsの併用などが原因と考えられているため、ステロイド潰瘍という名称はステロイド自身にとっては少し不名誉な名前なのかもしれません。しかしステロイドの投与によって消化性潰瘍ができやすい(治りにくい)環境になるのもまた確かです。なんらかの治療でステロイドを投与する場合にはピロリ菌感染の有無を考慮したり、ステロイドとNSAIDs併用の状況下では胃薬の併用も考慮しなくてはなりません。
仮の話になりますが、ステロイドの投与中(NSAIDsとの併用を含む)にピロリ菌除菌の薬剤やPPIなどの胃薬が処方されたとします。一見してこれらの薬剤はステロイドの治療には直接関係ないように見えるかもしれませんが、実は重要な薬剤となるのです。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。