2016.03.07 | ニュース

目を閉じられない、味がわからない…「顔面神経麻痺」の研究、やり直したら違う結果に

10件の研究データから
from The Cochrane database of systematic reviews
目を閉じられない、味がわからない…「顔面神経麻痺」の研究、やり直したら違う結果にの写真
(C) Bartlomiej Zyczynski - Fotolia.com

目や口を動かす顔面神経の麻痺は多くが原因不明で、一部に単純ヘルペスウイルスが関わっています。抗ウイルス薬は治療法のひとつです。治療効果について、以前の研究が取り下げられたことを受け、再び調査が行われました。

◆10件の研究から

原因不明の顔面神経麻痺ベル麻痺)では、目を閉じられない、よだれが出る、味が正常に感じられなくなるなどの症状が現れます。

治療には、ウイルスを排除する抗ウイルス薬、炎症を抑えるステロイド薬などがありますが、どの方法でも完治せず症状が残ることも少なくありません。

この研究は、以前に同じテーマについて調べた論文が取り下げられたため、改めて行われたものです。取り下げられた論文は下記の記事で紹介したものです。

【取り下げ】顔面神経麻痺に抗ウイルス薬を使う意味はあるのか?重症度、共同運動、ワニの涙症候群

https://medley.life/news/item/55a4c80cc5782fff00cea3af

新しい研究で、研究班は文献検索により10件の研究を集めました。ベル麻痺に対して抗ウイルス薬を治療に使ったときの結果について、集まった研究の内容をまとめました。

 

◆ステロイド薬と併用で効果増

10件の研究から、次の結果が得られました。

ベル麻痺の患者に対して、副腎皮質ステロイド単独と比較して、副腎皮質ステロイドに抗ウイルス薬を加えたときに有意な利益が見られた(リスク比0.61、95%信頼区間0.39-0.97、n=1,315)。

副腎皮質ステロイド単独治療を受けた参加者の帰結は抗ウイルス薬単独治療を受けた患者よりも有意に勝っていた(リスク比2.82、95%信頼区間1.09-7.32、n=768)。

抗ウイルス薬単独治療は偽薬と比べて利益を生み出さなかった(リスク比1.10、95%信頼区間0.87-1.40、n=658)。

抗ウイルス薬を単独で使っても、有効成分のない偽薬よりも効果があると言えるデータはありませんでした。ステロイド薬は単独で使っても効果があり、ステロイド薬に抗ウイルス薬を併用するとより効果が大きいと見られました。

特定の後遺症について次の結果が得られました。

副腎皮質ステロイドと抗ウイルス薬の併用を副腎皮質ステロイドと偽薬の組み合わせと比較し、共同運動またはワニの涙症候群を評価した2件の試験において、副腎皮質ステロイドと抗ウイルス薬の併用を優位とする長期的な後遺症の有意な差が見られた(リスク比0.56、95%信頼区間0.36-0.87、n=469)。この帰結について、抗ウイルス薬単独治療と副腎皮質ステロイド単独治療を比較した2件の試験において、副腎皮質ステロイドでより少ない後遺症が見られた(リスク比1.52、95%信頼区間1.08-2.12、n=472)。

長期的な後遺症である「共同運動」(動かそうとした筋肉と一緒にほかの筋肉も動いてしまう)、「ワニの涙症候群」(食事のときなどに涙が出る)は、ステロイド薬に抗ウイルス薬を併用すると、ステロイド薬を単独で使うよりも少ないと見られました。

副作用については、副腎皮質ステロイドを使うか使わないかにかかわらず、抗ウイルス薬を使うことよって有害な症状などの頻度が増えるという結果は見られませんでした。

 

取り下げられた論文ではステロイド薬に抗ウイルス薬を併用してもステロイド薬単独の治療と差がないという結果が出ていましたが、ここでは違う結果になっています。一度報告された内容にも慎重に検証を重ねる必要を改めて感じさせる例ではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Antiviral treatment for Bell's palsy (idiopathic facial paralysis).

Cochrane Database Syst Rev. 2015 Nov 9.

[PMID: 26559436]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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