B型肝炎の基礎知識
POINT B型肝炎とは
B型肝炎肝炎ウイルスに感染するとB型肝炎になります。感染が起った後に多くは自然回復しますが、一部は感染した状態のまま続きます。また、まれに劇症肝炎という重篤な状態になるので注意が必要です。感染者の体液中にB型肝炎ウイルスが存在するため、性行為や入れ墨、注射の回し打ちなどを介してうつります。B型肝炎ウイルスにはワクチンがあります。医療関係者や患者の家族などは感染する可能性があると考えてワクチンを打つことが薦められます。 B型肝炎を疑った場合は血液検査を行いますが、肝臓への影響の程度を調べるために超音波検査(エコー検査)やMRI検査を行うこともあります。治療は飲み薬や注射薬を用いることになりますが、専門的な施設で行う方が望ましいです。消化器内科や感染症内科を受診して下さい。
B型肝炎について
B型肝炎ウイルス (HBV )の感染によって起こる肝臓の病気- 急性B型肝炎と慢性B型肝炎がある
- 急性B型肝炎
- B型肝炎ウイルスに感染してすぐに症状が出る
- 慢性B型肝炎
- B型肝炎ウイルスに感染してから沈静化したものの、潜んでいたB型肝炎ウイルスがじわじわと再感染を起こす
- 潜んでいたB型肝炎ウイルスが起こす感染が急速な場合もあり、この場合は急性肝炎のような状態になる場合がある
- 急性B型肝炎
- 急性B型肝炎の主な原因
- 感染者との性行為(一番多い)
- 注射針の使い回し
- 輸血や臓器移植
- 感染者の血液が傷などを介して感染する
- 慢性B型肝炎の主な原因
- HBVを持っている人(HBVキャリアという)が
発症 - HBVキャリアの母親から子供への
母子感染 が多い
- HBVを持っている人(HBVキャリアという)が
潜伏期間 は1-6か月と状況によって幅がある- 放っておくと肝硬変や肝細胞がんへと進んでしまう
- 脂肪肝などの軽度
肝機能障害 はもちろん、慢性肝炎や肝硬変など病状進行した状態でも肝臓による症状が出てこないことが多いため(一般に「沈黙の臓器」と呼ばれる)、症状がなくても定期的に検査することが大切 免疫 抑制剤や化学療法 を行う人は、HBVが身体に潜んでいる場合には、感染が急速に悪化することがある- 免疫抑制剤や化学療法を受ける場合には、事前にHBVが体内に存在するかどうかを血液検査で確認する必要がある
- HBV感染の
スクリーニング は次の検査を行うことが多い- HBs抗原検査
- HBc
抗体 検査 - HBs抗体検査
- HBV DNA定量検査
B型肝炎の症状
B型肝炎の検査・診断
- 血液検査:抗原の有無や
炎症 が起きているかなどを調べる- 診断を確定させるのに役立つ
HBV に感染しているかを検査(主にHBs抗原、HBe抗原、HBc抗体 、HBe抗体、HBs抗体、PCR法などが用いられる)- 肝炎を
発症 しているか、肝炎の程度をみる
- 必要応じて行う検査
- 画像検査:肝臓に炎症が起こっていないかなどを調べる
腹部超音波検査 MRI 検査
- 画像検査:肝臓に炎症が起こっていないかなどを調べる
生検 :肝炎の進行の程度を調べる
B型肝炎の治療法
- 急性B型肝炎と慢性B型肝炎の治療法は異なる
- 急性の場合
- 安静にしていれば、約90%の患者は自然回復する
- 約1%程度で劇症肝炎になることがあり、この場合には治療が必要
- 慢性の場合
- 治療の基本は抗
ウイルス 療法で以下のような薬剤を組み合わせて治療インターフェロン - 核酸アナログ製剤
- 治療の基本は抗
HBV にはワクチンがあるので、以下のような人はワクチン接種が強く薦められる- HBVに感染した可能性のある人(感染者の血液や体液と接触があった人)
- HBVキャリアから生まれた赤ちゃん(
母子感染 予防)- 子どもは感染すると、慢性化のリスクが高いので、積極的にワクチン接種(予防接種)が勧められている
- HBV感染のリスクが高い人
- 医療従事者
- 消防士、救急救命士、警察官など
- HBVキャリア(感染したことがある)が家族内にいる人も接種を検討する
B型肝炎に関連する治療薬
B型肝炎ウイルス治療薬(内服薬)
- B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖に必要な酵素の働きを阻害し抗ウイルス作用をあらわす薬
- B型肝炎はHBVの感染によっておこり、慢性化し進行すると肝硬変や肝がんがおきやすくなる
- HBVが肝臓細胞で増殖するにはDNAポリメラーゼという酵素が関わっている
- 本剤はDNAポリメラーゼを阻害しHBVの増殖を抑える抗ウイルス作用をあらわす
- DNAなどは核酸と呼ばれるため、本剤は核酸アナログ製剤とも呼ばれる
B型肝炎の経過と病院探しのポイント
B型肝炎が心配な方
B型肝炎には、急性肝炎と慢性肝炎があります。急性肝炎ではだるさや熱、黄疸などが出ますが、特別な治療は行われず自然の経過で治るのを待ちます。大半のケースでは、治った後は体内からウイルスが検出されなくなります。しかし、急性肝炎を起こした方のおよそ10%程度では、症状が治まった後も体内にウイルスが残ってしまい、慢性肝炎と呼ばれる状態に移行します。
B型肝炎ウイルスは体液中にいるため、輸血のように血液から感染して生じる場合や、刃物(入れ墨、注射器)の使い回し、または性交渉で感染する場合があります。症状だけで、B型肝炎ではないかとご自身で感じることは少ないかと思いますが、何かしらの心当たりがあったり、健診で肝機能が悪いなどと言われた場合には、近くの内科、もしくは消化器内科で採血を行います。
血液検査では肝酵素の値に加えて、B型肝炎ウイルスの抗原を測定します。この結果によってある程度診断に当たりがつきますので、エコーやCTなどさまざまな検査へ進む前に、まずはお近くの医療機関で血液検査を受けて、その結果を確認してもらいましょう。
B型肝炎でお困りの方
B型肝炎の診断がついた場合には、それが肝硬変、そしてその先の肝臓がんに進行していないかを確認するために、腹部エコーや腹部CTの検査を行います。これらについては、肝硬変、肝臓がんのページもご参考になさって下さい。
B型肝炎の治療については、インターフェロンや核酸アナログ製剤と呼ばれる注射薬を使用します。ウイルスの増殖を抑えて、肝硬変、肝臓がんへの進行を予防するのが治療の目的です。これらの治療を行ったとしても体内からウイルスを完全に排除するのは困難で、長期的な通院が必要となります。その意味では病院の通いやすさや主治医との相性、信頼して聞きたいことを聞けるかどうかといった点も重要です。