急性胆のう炎の基礎知識
POINT 急性胆のう炎とは
急性胆のう炎は胆のう内で細菌が感染を起こす病気です。胆のう結石が原因で菌が繁殖することが最も多く、その場合は胆のう結石が胆のうの出口で詰まり、胆汁の流れが悪くなっていることが多いです。主な症状は腹痛や吐き気、発熱などです。 症状や身体診察に加えて、血液検査・超音波(エコー)検査・CT検査・MRI検査などを用いて診断されます。また、感染を起こしている細菌を特定して最適な抗菌薬を投与するために、細菌学的検査も適宜行われます。治療としては溜まった膿を身体の外に出す(ドレナージ)ことや、抗菌薬の点滴が行われます。また、根本的な治療としては手術で胆嚢を摘出します。急性胆のう炎が心配な人や治療したい人は、消化器内科や消化器外科を受診して下さい。
急性胆のう炎について
急性胆のう炎の症状
- 主な症状
- 発熱
- 腹痛(特にみぞおちから右の脇腹にかけて)
- 間欠的な痛み(強くなったり弱くなったりする痛み)が6時間以上続く
- 深く息を吸った際の痛み
- 吐き気
- 食欲不振
急性胆のう炎の検査・診断
- 血液検査:全身
炎症 の程度や、胆のうに関係する血液データなどを調べる - 画像検査:胆のうに炎症が起きているか、胆石の有無などを調べる
腹部超音波 (エコー )検査- すぐに検査できて特に身体の負担もない検査
腹部CT検査 - 胆のう周囲の組織に炎症がどの程度波及しているかを調べることができる
腹部MRI /MRCP検査- 胆のうの中の
CT ではみえづらい結石の有無、総胆管 の中の結石の有無、胆のう管や総胆管の合流の仕方など手術に必要な情報を得るために行われることがある
- 胆のうの中の
- 炎症が起きていると胆のう全体のサイズが大きくなり、胆のうの厚みが増していることが確認できると、胆のう炎と診断される
急性胆のう炎の治療法
- 胆のう炎の治療は、多岐にわたる
- 胆石が原因で胆のう炎が起こる場合は繰り返すことが多いので、手術によって胆のうを取り除く
- 現在は
腹腔鏡 下手術が最も一般的であるが、炎症 が強い場合は腹腔鏡ではなくお腹を大きく切って手術(開腹手術)を行う- 腹腔鏡下手術の方が身体の負担は軽い反面、詳細な作業をする場合はお腹を切って行う手術(開腹手術)の方が優れている
- 現在は
- 場合によっては、身体の外から胆のうに針をさして、中で繁殖した
細菌 を吸い出したり、内視鏡 で鼻から胆のう近くまで管を通して溜まった胆汁を吸い出したりすることもある - 胆のうは消化を助ける役割を担当している臓器であるが、胆のうがなくても、最低限の消化能力は他の臓器で代替することができるため切除しても問題はない
- 手術の後に一時的に下痢をしやすくなるが、ほとんどの場合、時間の経過とともに改善する
抗菌薬 の投与- 急性期の治療は絶食が基本であるので、抗菌薬は点滴のものを使用する
- いかがよく用いられる抗菌薬である
- ペニシリン系抗菌薬
- セフェム系抗菌薬
- 胆のうに余計な負担をかけないようにするため、食事を中断して代わりに栄養の点滴を行う
急性胆のう炎の経過と病院探しのポイント
急性胆のう炎が心配な方
急性胆のう炎は発熱や吐き気に腹痛、特に右上腹部の痛みがみられます。このような症状が急激に出現して心当たりのある方は、消化器内科や消化器外科の受診をお勧めします。入院治療が必要となるため、クリニックではなく病院で診療を受けることになりますが、診断が急性胆のう炎かどうかを確かめる意味も含めて、まずはお近くのクリニックにかかるのも良いでしょう。
急性胆のう炎の診断は腹部エコーまたはCT検査で行います。根本治療のためには手術が必要となるため、外科のある病院が適しています。
急性胆のう炎でお困りの方
急性胆のう炎の治療としては、いくつかのパターンがあります。大きく分けて、最初から手術(炎症を起こした胆のうを丸ごと切り取ってしまう胆のう摘出術)を行う場合、最初は抗生物質を使用して炎症が治まった時点で胆のう摘出術を行う場合、抗生物質で炎症が治まったらそのまま手術を行わずに様子を見る場合の3つです。これに加えて胆のうドレナージといって、内視鏡(胃カメラのような検査で、治療を兼ねる)を用いて胆のうまで細いチューブを通す治療や、お腹から胆のうに向かって針を刺してチューブを通す治療を行うことがあります。
このように治療には様々な可能性があり、胆のう炎の重症度によってこれらが使い分けられることになります。入院、手術が行える病院であることはもちろんですが、消化器内科、消化器外科といった診療科の医師数が多かったり、手術件数が多かったりという点は、病院探しの上で一つ参考になるでしょう。
手術を行う場合には、大きく分けて二通りの手段があります。開腹手術(お腹に傷を開けて行う手術)と腹腔鏡下手術(お腹に小さな傷を複数開けて内視鏡で行う手術)です。腹腔鏡下手術の方が傷口が小さくて済むために術後の回復が早い、傷口が目立ちにくいというメリットがある一方で、外科医にとっては開腹手術の方が病気の部位に直接手を触れられるので手術が正確に行いやすいというメリットがあります。病院によってどちらの手術を主体で行っているかが異なるため、受けられる治療が変わってきます。