妊娠糖尿病(GDM)とは?妊婦の血糖値が上がりやすい原因と注意点
妊娠は身体の大きな変化を伴います。つわりで吐き気がしたり足がむくんだりする変化は自覚できますが、実は目に見えないところで
目次
1. 妊娠すると血糖値が上がりやすくなる
妊娠中のお母さんは、
なお、HbA1cは
2. 実は妊婦は糖尿病じゃなくても血糖値に注意が必要である
妊娠糖尿病(GDM:gestational diabetes mellitus)という言葉があります。これは文字面を見ると糖尿病という字が入っていますが、厳密に言うと糖尿病ではありません。正確には糖尿病になりかかりの状態です。
診断には75gの
違いを表にまとめます。
表 通常の糖尿病と妊娠糖尿病の診断基準
通常の糖尿病 |
||
空腹時血糖値 |
92mg/dL以上 |
126mg/dL以上 |
検査1時間後の血糖値 |
180mg/dL以上 |
- |
検査2時間後の血糖値 |
153mg/dL以上 |
200mg/dL以上 |
どうして妊婦に対しては基準が厳しくなるのでしょうか?
実は妊娠中の糖尿病はお腹の子どもに影響する恐れがあるのです。妊娠初期に血糖値が高かったときは、血糖値が正常だった妊娠に比べて、流産したり子どもに形態異常が起こったりすることが多くなることがわかっています。また、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、産まれてすぐの子どもが低血糖を起こしたりすることも多くなります。多くなると言っても全体の中ではごく一部ですが、違いがあることは確かですので、妊娠糖尿病には細心の注意が必要です。
3. 妊婦の血糖管理でおすすめしたいこと
妊娠初期に血糖コントロールが不十分だと、流産や赤ちゃんの形態異常が増えると言われています。そのため、厳格な血糖管理が必要となります。低血糖は回避する必要がありますが、これを避けつつ正常な耐糖能(血糖を適切にコントロールする能力)を持つ妊婦と同じくらいの血糖値を目指すことが目標になります。
妊娠中の血糖管理は特別のやり方があり、以下のようにします。
- 血糖を下げる飲み薬を中止し、赤ちゃんに対して安全性の高い
インスリン の注射に切り替える - 血糖測定を行い自分の血糖の程度をしっかりと把握する
- 赤ちゃんに栄養を与えるため、食事量の目安は通常の食事療法よりも1日に200kcal程度多くする
このように、インスリンで血糖値が下がり過ぎていないかを測定して確かめながら、適切な範囲にコントロールします。
血糖管理は個人個人の状態によって異なります。どういった作戦で血糖をコントロールしていくかは、かかりつけのお医者さんとよく相談するようにしてください。
4. 妊娠中に飲んではいけない薬がある
妊婦の血糖コントロールは、基本的に食事療法と運動療法で行い、それでもコントロールが難しい場合にはインスリン注射が用いられます。血糖降下薬を妊娠中に飲むと赤ちゃんに悪影響をおよぼす可能性があるので推奨されていません。
また、血糖降下薬以外にも妊娠中に推奨されていない薬があるので注意が必要です。代表例としては以下が挙げられます。
- アンギオテンシン変換
酵素 阻害薬(ACE阻害薬)- カプトプリル(カプトリル®)、エナラプリル(レニベース®)、ペリンドプリル(コバシル®)など
- アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
- テルミサルタン(ミカルディス®)、オルメサルタン(オルメテック®)、アジルサルタン(アジルバ®)など
- スタチン系
コレステロール 降下薬- ロスバスタチン(クレストール®)、ピタバスタチン(リバロ®)、アトルバスタチン(リピトール®)など
- フィブラート系コレステロール降下薬
- ベザフィブラート(ベザトール®SR)など
妊娠中に飲むと悪影響がある可能性のある薬は、妊娠の最初から最後まで飲まないようにする必要があります。つまり、妊娠を考えている人は妊娠する前からこれらの薬を避けなくてはならないということです。
妊娠している、あるいはこれからする可能性があるときは、安易に市販薬を飲まないことはもちろん、病院にかかるときには必ず妊娠について伝えてください。また、ほかの病気の治療中に妊娠を考えるときには、あらかじめ薬を変えるべき場合があるので、妊娠する前にかかりつけのお医者さんに相談してください。
5. 無事に出産した後も血糖値には要注意
妊娠糖尿病は、厳密には糖尿病ではありませんので、もし妊娠糖尿病と診断されても治療が必要ない程度で無事に出産が済むことも多いです。しかし、無事に出産してほっと一息ついてからも、お母さんの体にはもう少し気を付けたいことが残っています。
妊娠糖尿病は厳密には糖尿病ではありませんが、糖尿病になりかけの状態です。つまり、血糖をコントロールする体内のシステムが乱れています。出産によってホルモンなどのバランスは元に戻るので、多くの場合は改善するのですが、出産後もシステムのほころびが残ったままになることがあります。
出産よりあとに糖尿病になる確率は、妊娠中の血糖値になんら問題のなかった人と比べると、妊娠糖尿病になった人は7倍以上になります。そのため、妊娠糖尿病と診断された人は、少なくとも産後6-12週間は血糖値を検査していくことが望ましいと考えられています。