片頭痛(偏頭痛)の基礎知識
POINT 片頭痛(偏頭痛)とは
頭の中の血管が拡張することにより起こる頭痛です。特にきっかけなく症状が出ることが多いですが、飲酒・空腹・睡眠不足などがきっかけになることもあります。 診断を確定するためには、頭部CT検査・頭部MRI検査などを行って他の頭痛を起こす病気の有無を調べます。日常生活で片頭痛を引き起こしそうなものを避けたり、薬物療法を行います。痛い時と痛くない時がある・痛みだすと2-3日間痛みが続く・脈を打つようなズキンズキンとした痛みがあるなどの症状が出た場合は片頭痛の可能性があります。医療機関にかかってください。その際は内科・脳神経内科・救急科にかかることをおすすめします。
片頭痛(偏頭痛)について
- 頭の中の血管が拡がることで起こる頭の痛み
- 血管が拡がってしまう理由、血管が拡がると頭痛が起こる理由に関して詳しいことは不明
- 特に誘引なく
症状 が出ることが多いが、以下の事柄がきっかけとなる場合がある- 飲酒
- 空腹
- チョコレート、赤ワイン、チーズ類、ナッツ類、柑橘類を食べる
- 睡眠不足や寝過ぎ
- 天候や気温の変化
- ストレスから解放された状態(ストレスがかかっている時よりも、解放された時におこりやすい)
- 頭痛には大きく3種類のタイプがある
- 慢性頭痛が主に3種類タイプがあり、片頭痛はそのうちの1つ
- その他の病気の特徴
片頭痛(偏頭痛)の症状
- 主な
症状 - 痛いときと痛くないときがある(月数回程度起こる人が多い)
- 痛みだすと数時間から2-3日間痛みが続く
- 脈を打つようなズキンズキンとした痛みがあることが多い
- 頭の片側だけ痛いこともあれば、両側が痛むこともある
- 吐き気や嘔吐が出やすい
- ひどくなると顔に血が通っていないような感覚になる
- 痛みが強い人では、日常生活に支障が出る(痛すぎて寝込むなど)
- 痛みが起こる前に、決まった前兆が出現することがある
- 目の前にちかちかするような光が見える(
閃輝暗点 :せんきあんてん) - 視野の中に一部見にくい場所が出る
- 臭いや音に過敏になる
- これらの前兆症状(閃輝暗点など)だけで済む場合には、治療は必ずしも必要でない
- ただしその後に頭痛が伴う場合には、片頭痛の治療が行われる
- 前兆の段階で薬を使用しても、その後の頭痛を防げるというわけではない
- 目の前にちかちかするような光が見える(
片頭痛(偏頭痛)の検査・診断
片頭痛(偏頭痛)の治療法
- 予防
- 片頭痛を予防するとされる降圧薬の例
- β遮断薬
- プロプラノロール(商品名:インデラル®など)
- メトプロロール(商品名:セロケン®、ロプレソール®など)
- カルシウム拮抗薬
- ロメリジン(商品名:テラナス®、ミグシス®)
- ベラパミル塩酸塩(商品名:ワソラン®など)
- ACE阻害薬(エースそがいやく)
- エナラプリル(商品名:レニベース®など)
- リシノプリル(商品名:ゼストリル®、ロンゲス®など)
- ARB
- カンデサルタン(商品名:ブロプレス®など)
- β遮断薬
- 片頭痛予防に使う抗うつ薬の例
- アミトリプチリン
- 商品名:トリプタノール®など
- ノルトリプチリン
- 商品名:ノリトレン®など
- アミトリプチリン
- 片頭痛予防に使う抗てんかん薬の例
- バルプロ酸ナトリウム
- 商品名:デパケン®など
- トピラマート
- 商品名:トピナ®
- クロナゼパム
- 商品名:ランドセン®、リボトリール®
- バルプロ酸ナトリウム
- 片頭痛予防に漢方薬を使う場合もある
- 呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
- 桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
- 五苓散(ゴレイサン)
- 川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
- 半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)
- 一部のサプリメントにも片頭痛予防効果があるとされる
ビタミン B2(リボフラビン)- フィーバーフュー(fever few:ハーブの一種)
- マグネシウム
- 頭痛出現時の対応
- 痛みが起こったときは安静にする
- 重症の場合は動くと吐き気を伴うこともあるため注意が必要
- 痛む箇所を冷却したり、入浴で温まりすぎて血管が拡がることを避けたりすることも有効
- 安静に加えて、血管を縮ませるタイプの痛み止め(エルゴタミン、トリプタン)を使用することが多い
- 痛みが起こったときは安静にする
- トリプタン製剤の例
- スマトリプタン
- 商品名:イミグラン®など
- 代表的なトリプタン製剤
- 飲み薬だけでなく、点鼻剤や注射剤もある
- ゾルミトリプタン
- 商品名:ゾーミッグ®など
- ゾーミッグRM錠2.5mgは口の中で溶けて水なしで飲める
- エレトリプタン
- 商品名:レルパックス®
- リザトリプタン
- 商品名:マクサルト®
- マクサルトRPD錠10mgは口の中で溶けて水なしで飲める
- ナラトリプタン
- 商品名:アマージ®
- 約24時間効果が持続する
- スマトリプタン
- エルゴタミン製剤の例
- 商品名:クリアミン®配合錠
- エルゴタミン、カフェイン、
NSAIDs を配合した薬
- 痛み止めのためにNSAIDsも使う
- アスピリン(アセチルサリチル酸)
- 商品名:バファリンなど
- イブプロフェン
- 商品名:ブルフェン®など
- エテンザミド
- ロキソプロフェンナトリウム
- 商品名:ロキソニン®など
- アスピリン(アセチルサリチル酸)
- 痛み止めにアセトアミノフェンも使う
- 商品名:カロナール®、コカール®など
- 吐き気・嘔吐の
症状 が出やすいので吐き気止めの薬も使う- メトクロプラミド(商品名:プリンペラン®など)
- ドンペリドン(商品名:ナウゼリン®など)
- 年齢を重ねるにつれて、片頭痛を起こしにくくなる人がいる
- 2021年に発売されたエムガルティ®や、アイモビーグ®、アジョビ®は高価だが、月1回程度の定期注射で
発作 の予防と痛みの軽減が期待できる
片頭痛(偏頭痛)に関連する治療薬
アセトアミノフェン製剤
- 脳の体温調節中枢や中枢神経などに作用して熱を下げたり、痛みを抑えたりする薬
- 発熱は脳の体温調節中枢に情報が伝わり、体温調節中枢から発熱の指令が身体の各部に伝わることで生じる
- アセトアミノフェンは体温調節中枢に作用し、熱を体外へ逃がす作用を増強する
- アセトアミノフェンは発熱や痛みの情報を伝える物質を阻害する作用をあらわす
カルシウム拮抗薬(片頭痛発作予防薬)
- 脳血管の過度な収縮を抑え、片頭痛の発作を予防する薬
- 一度収縮した血管が逆に広がることなどで片頭痛の発作がおこるとされる
- 血管の収縮にはカルシウム(Ca)イオンの細胞内への流入が深く関わる
- 本剤はCaイオンの細胞内への流入を阻害し、脳血管の収縮を抑え、血管の収縮と拡張の差を少なくして片頭痛発作を軽減する
- Ca拮抗薬のひとつだが、主に脳血管に作用する
- 全身の末梢血管を拡張させる作用は少ないとされ、血圧低下によるめまいやふらつきなどの副作用は少ないとされる
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)(内服薬・坐剤・注射剤)
- 体内で炎症などを引きおこす体内物質プロスタグランジンの生成を抑え、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げる薬
- 体内で炎症や痛み、熱などを引き起こす物質にプロスタグランジン(PG)がある
- PGは体内でCOXという酵素などの働きによって生成される
- 本剤はCOXを阻害することでPGの生成を抑え、痛みや炎症、熱などを抑える作用をあらわす
- 薬剤によっては喘息患者へ使用できない場合がある
- COX阻害作用により体内の気管支収縮を引きおこす物質が多くなる場合がある
- 気管支収縮がおきやすくなることよって喘息発作がおこる可能性がある
片頭痛(偏頭痛)の経過と病院探しのポイント
片頭痛(偏頭痛)が心配な方
片頭痛は、頭の中の血管が拡がることで起こる頭痛です。拍動性で、普段の生活ができないくらい辛い頭痛で、時には嘔吐を伴います。頭の片側のみに痛みの出現が多いことが、片頭痛の名前の由来です。チョコレートや赤ワインなどの飲酒、睡眠不足やストレスなどにより起こると言われており、頭痛が起こる前に目の前にちかちかするような光が見えることもあります。
ご自身が片頭痛ではないかと心配になった時、最初に受診するのは、内科、神経内科、脳神経外科、救急科です。頭痛を専門にしている医師は、神経内科や脳神経外科に多くいますが、初診から専門医を受診する必要はありません。まずは頭痛が本当に片頭痛によるものかを調べる必要がありますし、片頭痛の診断がついた後に痛み止めですぐに良くなることもあります。痛みのコントロールがうまくいかなかったり、片頭痛が出る頻度が多くなった場合には、専門医を受診するようにしましょう。最初の診察が専門医ではない場合でも、必要であれば専門家に紹介することが可能です。なお、基本的には総合病院でもクリニックでも診療に差がつきにくい疾患の一つです。
片頭痛の診断は、問診や診察から行います。片頭痛と診断するための特別な検査はありませんが、頭痛の原因が他にないかを確認するために、頭のCTやMRI検査を行うことがあります。片頭痛の診断では、今後重症になる可能性がある他の原因ではないことを確認することが重要です。
片頭痛(偏頭痛)でお困りの方
片頭痛が安静にしても時間経過で良くならない場合は、内服薬による治療を行います。まずは、一般的な痛み止めや吐き気止めを使用することもありますが、それでも改善しない場合は、片頭痛専用の、血管を縮ませるタイプの痛み止めを使います。
片頭痛を予防するために、特定の効果がある薬を定期的に内服することもあります。また、日常生活で片頭痛を引き起こしそうなものを避けることも重要です。片頭痛の経験がある方は、飲酒やストレスに注意して生活することが大切です。
何度も片頭痛を経験されている方は、いつもの片頭痛だからこの薬を飲んで、休めばよくなる、という感覚がおわかりのかたもいると思います。しかし、いつもと何か違う痛みであったり、徐々に悪くなってくる場合、いつもと比べてもとても強い頭痛であった場合は、我慢せずに病院を受診することが大切です。いつもの片頭痛の影に怖い病気が隠れていないか、病院で調べてもらいましょう。