インフルエンザでよくある疑問
インフルエンザは毎年のように冬になると流行する
目次
2. インフルエンザの治癒証明は必要?
3. インフルエンザの予防薬はある?
4. インフルエンザに何度もかかるのはなぜ?
5. インフルエンザで異常行動が起きる?
6. インフルエンザの流行情報はどこでわかる?
7. インフルエンザで学級閉鎖になる基準は?
8. インフルエンザは薬を使わなくてもいい?
9. インフルエンザに抗生物質は効く?
10. 妊娠中にワクチンを打っても大丈夫?
11. ワクチンを打っていなかった妊婦はどうすればいい?
12. 妊娠中のインフルエンザで子どもに影響は?
13. 妊娠中にインフルエンザの薬を飲んでも大丈夫?
14. 授乳中にインフルエンザワクチンを打っても大丈夫?
15. 授乳中にインフルエンザの薬を飲んでも大丈夫?
1. インフルエンザで会社や学校は休むべき? いつまで?

学校保健安全法では、インフルエンザにかかった子どもは次のすべてを満たすまで出席停止と決められています。
発症 から120時間(5日)が経過- 解熱してから48時間(2日)が経過(小学生に入るまでの幼児の場合には3日)
出席停止は、周囲への感染拡大を防ぐことが目的です。
学校ではなく職場においては、それぞれの出勤可能基準を設けている会社についてはそれに従い、そうでなければ上述の学校保健安全法の考え方に従うことは妥当と考えられます。大人も同じ日数でよいと考えられます。一方で、海外においてはもっと早く出勤しても良いという判断基準も見られており、各国が国内事情なども考慮して基準を設けているのが現状です。
2. インフルエンザの治癒証明は必要?
会社や学校からインフルエンザの
インフルエンザの検査キットは、インフルエンザの症状がなくなってもしばらく抗原検査陽性になることがありますし、検査が陰性になっても症状がダラダラと続くこともあります。したがって、検査キットではインフルエンザの治癒を判断することはできません。
医療機関によっては治癒証明書を出しているところも無いわけではありませんが、厚生労働省は次のような見解を表明しています。
労働者に対し治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることについては、インフルエンザの陰性を証明することは一般に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける結果になることから、望ましくありません。
このように、会社や学校が治癒証明書の提出を求めることは本来適切ではありません。インフルエンザを発症してから5日が経過し、かつ解熱して2日が経過しているならば、証明書などを要求せずに治癒したとみなすのが妥当です。
参考文献:「新型インフルエンザ(A_H1N1)に関する事業者・職場のQ&A」
3. インフルエンザの予防薬はある?
インフルエンザの治療に使う薬をあらかじめ飲んでおくことで予防効果が得られます。薬の種類にもよりますが、インフルエンザに対しては70-90%程度の予防効果が報告されています。 ただし、誰にでも勧められる方法ではありません。予防効果は短期的です。また、副作用が出てくる場合もあることは知っておいてください。
予防的に薬を使う場面は高齢者や慢性疾患のある人がインフルエンザ感染者と濃厚接触があったときなどで、接触後48時間以内に薬の使用が推奨されます。
気をつけなければならないのは、抗インフルエンザ薬の予防使用では保険が効かないため、全額自己負担(自由診療)になることです。また、通常の治療の際とは異なるスケジュールで抗インフルエンザ薬を使うことになる薬もあります。
参考文献:MMWR Recomm Rep . 2011 Jan 21;60(1):1-24.
4. インフルエンザに何度もかかるのはなぜ?
一度かかっても、2度目以降の感染がありえます。同じシーズンで2回かかることもあります。
5. インフルエンザで異常行動が起きる?
インフルエンザにかかると、まれですが異常行動を起こすことがあります。
以前、オセルタミビル(商品名:タミフル)を内服後に高所から飛び降りてしまった若年者の例が広く報道され、抗インフルエンザ薬の使用と異常行動の関連が指摘されました。しかし、これらの事例は薬の服用の有無にかかわらず見られたため、インフルエンザにかかった子どもは薬の使用に関わらず行動を注意して見守るべきと考えられています。
発熱から2日間に起きることが多く、この期間は特に飛び出しや転落事故に注意が必要です。具体的には下記のような方法が対策例となります。
- インフルエンザにかかった子どもを1人にしない
- 玄関や窓のすべてに鍵をかける
- ベランダに面していない部屋に寝かせる
- 戸建てであればできるだけ1階で寝かせる
就寝中を含め、自宅の環境に合わせて対策を取るようにしてください。
参考:厚生労働省「小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、異常行動にご注意下さい」, 2017年11月27日
6. インフルエンザの流行情報はどこでわかる?
インフルエンザの流行情報は国立感染症研究所が毎週報告しています。例年、国内では12月頃から流行が始まり、おおよそ3月まで続きます。1-2月が流行のピークになることが多いです。
夏にもインフルエンザは少ないですが発生することがあります。特に沖縄県では暑い時期にもインフルエンザが流行することが有名です。東南アジアなど熱帯地域でもインフルエンザ感染者が年中見られます。
また、南半球では冬にあたる6-8月にインフルエンザが流行します。
参考文献:J Infect Dis 2012 Sep 15, Curr Opin Infect Dis 2010 Oct
7. インフルエンザで学級閉鎖になる基準は?
学級閉鎖に基準はありません。学級閉鎖は、学校保健安全法第20条に基づいています。
(臨時休業)第二十条 学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。
条文で「学校の全部又は一部の休業」とされているのが学級閉鎖にあたります。法令で学級閉鎖の基準は決められていません。
自治体によって、あるいは学校によって、インフルエンザによる欠席者数などに独自の基準を決めている場合もあります。学級閉鎖の見通しについてはそれぞれの学校に問い合わせてください。
8. インフルエンザは薬を使わなくてもいい?
生来健康な成人では抗インフルエンザ薬を用いなくても良いです。高熱がしんどいときに解熱薬(カロナール)を用いる程度で別に問題はありません。また、特に重い症状がなく、以下に当てはまる場合には抗インフルエンザ薬の効果が認められない(もしくは、あっても少ない)ことから、副作用の懸念と比較して使用を避けるべきと考えられます。
- 症状が回復傾向にある場合
- 発症から48時間以上が経過している場合
参考文献:MMWR Recomm Rep . 2011 Jan 21;60(1):1-24.
9. インフルエンザに抗生物質は効く?
インフルエンザには
10. 妊娠中にワクチンを打っても大丈夫?
米国予防接種諮問委員会 (ACIP) は、妊娠期間がインフルエンザシーズンと重なる女性は、妊娠の週数にかかわらずワクチンを接種するのが望ましいと提言しています。
妊娠初期であっても、インフルエンザワクチンの接種を受けたことにより先天異常の発生リスクが高くなるということはありません。この他にも、複数の研究で、妊娠中の女性がインフルエンザワクチンを接種しても、妊婦や生まれてくる赤ちゃんに影響がないことが報告されています。妊娠中にインフルエンザにかかると、非妊娠時よりも症状が強く出やすいため、そのような意味でもワクチンは重要です。
また、妊娠中にワクチンを接種することで、出産後から生後6ヶ月までの期間、赤ちゃんにインフルエンザに対する
参考文献
MMWR Recomm Rep . 2010 Aug 6;59(RR-8):1-62.,
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11. ワクチンを打っていなかった妊婦はどうすればいい?
ワクチンを打っていないのにインフルエンザがはやり始めてしまったら、予防目的の薬を使う方法があります。 米国予防接種諮問委員会 (ACIP) では、以下の場合には予防目的で抗インフルエンザ薬を使用することを推奨しています。
- ワクチン接種を受けていない妊婦が、妊娠28週以降にインフルエンザ感染者と濃厚接触した場合
- ワクチン接種を受けていない妊婦で、かつ心臓・肺・腎臓の病気や糖尿病、
悪性腫瘍 などインフルエンザが悪化しやすい病気をもっている人が、妊娠14週以降にインフルエンザ感染者と濃厚接触した場合
妊娠中には色々と不安もあることでしょうし、ご自身でどうすればよいか判断が難しい場合は、かかりつけの医師(産科、内科など)に相談してみると良いです。
12. 妊娠中のインフルエンザで子どもに影響は?
多くの妊婦の記録を集めて解析した研究によると、妊娠前期のインフルエンザ感染はいくつかの先天異常(水頭症、先天性心疾患、口唇裂、二分脊椎など)のリスク増加に関係しています。
また妊婦のインフルエンザ感染は流産、
妊娠中であってもインフルエンザワクチンは安全でかつ効果があり、ワクチンによってインフルエンザを予防することで、お腹の赤ちゃんの安全により配慮することができます。
では、妊娠中にインフルエンザにかかってしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。
上記のような妊娠に伴う影響はゼロではありませんが、極めてまれです。
インフルエンザにかかったお母さん自身が、妊娠中はインフルエンザが重症化しやすいため、しっかりと治療を受けて健康な体調を取り戻すことが、赤ちゃんのためにも大切です。
参考文献
Am J Obstet Gynecol . 2011 Jun;204(6 Suppl 1):S54-7. doi: 10.1016/j.ajog.2011.04.031. Epub 2011 Apr 24.,
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Am J Obstet Gynecol . 2012 Sep;207(3 Suppl):S17-20. doi: 10.1016/j.ajog.2012.06.070. Epub 2012 Jul 9.,
N Engl J Med . 2008 Oct 9;359(15):1555-64. doi: 10.1056/NEJMoa0708630. Epub 2008 Sep 17.,
Clin Infect Dis . 2014 Feb;58(4):449-57. doi: 10.1093/cid/cit750. Epub 2013 Nov 26.,
N Engl J Med . 2014 Sep 4;371(10):918-31. doi: 10.1056/NEJMoa1401480.
13. 妊娠中にインフルエンザの薬を飲んでも大丈夫?
抗インフルエンザ薬は、妊娠中に使用しても胎児にほぼ影響はないとされています。仮に影響がわずかにあったとしても、抗インフルエンザ薬を使用せずにインフルエンザが悪化することは、それ以上に胎児にとって影響が強いと考えられるため、妊娠中の感染では、病状に応じて抗インフルエンザ薬を使用します。
インフルエンザと診断された人が抗インフルエンザ薬を使用する場合は、できるだけ早く服薬を始めるべきです。症状が出てから2日以内に服薬を始めると、より重篤な症状や命に関わるようなケースが少なくなります。
参考文献
JAMA . 2010 Apr 21;303(15):1517-25. doi: 10.1001/jama.2010.479.,
Obstet Gynecol . 2010 Apr;115(4):717-726. doi: 10.1097/AOG.0b013e3181d57947.,
MMWR Morb Mortal Wkly Rep . 2011 Sep 9;60(35):1193-6.,
J Infect Dis . 2012 Oct;206(8):1260-8. doi: 10.1093/infdis/jis488. Epub 2012 Aug 2.,
Lancet Respir Med . 2014 May;2(5):395-404. doi: 10.1016/S2213-2600(14)70041-4. Epub 2014 Mar 19.
14. 授乳中にインフルエンザワクチンを打っても大丈夫?
授乳期間中でも、ワクチンを接種することができます。ワクチンを接種したうえでも、お子さんに悪影響が及ぶことなく、通常通りの授乳が可能です。 生後6か月以内のお子さんはワクチンを打つことができない一方で、インフルエンザにかかると重症化しやすいという状況にあります。したがって、他の家族がワクチンを打って、自身がインフルエンザにかからないようにすることには、家族内感染を防ぐという意味で大きなメリットがあります。
参考文献:MMWR Recomm Rep . 2010 Aug 6;59(RR-8):1-62.
15. 授乳中にインフルエンザの薬を飲んでも大丈夫?
抗インフルエンザ薬を使用すると母乳中に薬の成分が分泌されます。その程度の量が乳児に影響を与えるかというのは別問題ではありますが、そのような理由から、治療薬を使用するメリットと授乳のメリットを考慮して、授乳を継続するのか中止するのか検討することとされています。
オセルタミビル(商品名:タミフル)については、明確なデータはないものの、授乳を中止した場合の授乳再開の目安は、服用終了後48時間空けてからと案内されています。
ザナミビル(商品名:リレンザ)やラニナミビル(商品名:イナビル)については「何時間空ける」という明確な指示はありません。
一般論としての話になりますが、オセルタミビルと同程度の間隔を授乳までに空けることは妥当と考えられます。
参考文献
中外製薬:「タミフル カプセル75 ドライシロップ3% 適正使用のお願い」, 2022年10月
国立成育医療研究センター:妊娠と薬情報センター「授乳中のお薬Q&A」