とっぱつせいなんちょう
突発性難聴
原因不明に突然片方の耳が聞こえなくなる病気。約2/3の人は回復するが、1/3の人は耳が聴こえないままになってしまう
15人の医師がチェック 148回の改訂 最終更新: 2024.07.24

突発性難聴の人が日常生活で注意すべきこと

突発性難聴の原因は不明であり、有効性がはっきりした治療方法もない状況です。治療中や治療後に注意しなくてはいけないことは明確にはありませんが、日常生活で気をつけると良い点についていくつか説明します。さらに、難聴の人が受けられる身体障害者認定についても説明します。

1. 突発性難聴の治療中や治療後に避けたほうが良いこと

突発性難聴の人でやってはいけないことは明確にはありませんが、避けた方が良いかもしれないことはあります。

  • 大きい音を聞くこと
  • 過度のアルコール摂取
  • 過度の運動

それぞれについて詳しく説明します。

大きい音を聞くこと

必ずしも突発性難聴の治療中や治療後に限ったことではないですが、大きな音を聞くと内耳にある聴覚の細胞の機能が低下することがあります。大きな音を聞くことと突発性難聴の改善率との関係を示した研究結果はありませんが、突発性難聴では内耳の聴覚細胞が少なくなったり、機能が低下しているため、負担をかけすぎないようにすることは悪いことではありません。

大きな音で起こる難聴は「音響外傷」や「騒音性難聴」とよばれます。大きな音をイヤホンやヘッドホンで聞いたり、コンサートやライブで大音量の音楽を聞くだけでなく、工事現場などの騒音環境で長年勤務したり、近くで爆発が起きたりといったことなども原因になります。

過度のアルコール摂取

アルコールはステロイド治療中は避けたほうが無難です。アルコールを飲むと、薬剤を代謝する肝臓の酵素の機能に影響が出て、ステロイドの副作用が強くでる可能性があります。過度のアルコール摂取は突発性難聴のみではなく、さまざまな病気との関連もありますので、ステロイドでの治療期間が終了した後も、適量を守って飲酒してください。

過度の運動

運動の有無によって突発性難聴の治りやすさに差があるかどうかを示した報告はありません。しかしながら、突発性難聴はストレスが原因になることから、精神的だけでなく身体的なストレスも避けた方が良いです。特にステロイド治療中はあまり無理な運動は避けてください。

2. 突発性難聴でよくある疑問について

突発性難聴には確立された治療がないため、さまざまな疑問を抱きがちです。ここではよく聞かれる疑問について答えます。

突発性難聴に効果のある食べ物はあるのか

厚生省特定疾患難病の疫学調査研究班による対象研究では、食事に関連した生活習慣で、「朝食をとらないこと」、「日本茶を飲まないこと」、「西洋型の食事」などが突発性難聴のリスクとしてあげられています。野菜の摂取が少ないと発症リスクが上がるという報告もあり、突発性難聴に限らずその他の病気のリスクを下げるためにも、バランスの良い食事が勧められます。

耳栓は使っていいのか

耳栓は使ってもかまいません。難聴が起きると音が耳に響くような症状が起こることがあります。耳栓で耳に入る音を小さくして、音が響く不快感を軽減できる場合には使用してみても良いです。

飛行機はどのくらいから乗っていいのか

突発性難聴を発症後、どのくらい経ってから飛行機に乗っていいかという明確な基準はありません。突発性難聴と診断された場合でも、実は内耳窓の破壊による外リンパ瘻である可能性があります。外リンパ瘻であった場合、内耳に圧がかかると難聴やめまいが悪化するため、飛行機に乗って気圧が変化すると症状が悪化することがあります。個々の経過や症状によって飛行機に乗って良い時期は異なりますので、乗る予定がある人は医療機関で確認してみてください。

突発性難聴に効果のあるツボはあるのか

突発性難聴の症状を緩和するといわれるツボはありません。しかし、後遺症として残った耳鳴りやめまいに対してツボや鍼灸治療が行われることはあるようです。効果に関してははっきりと確立されたものはありません。

3. 身体障害者や指定難病の認定について

突発性難聴で身体障害者手帳の給付が受けられるのは高度もしくは重度の難聴の場合です。身体障害者手帳の給付を受けると補聴器購入の補助金が給付されるなど、さまざまな自己負担額を少なくすることができます。一方、突発性難聴は指定難病ではないため、指定難病の認定を受けることはできません。突発性難聴に関連した社会保障について説明します。

聴覚障害の身体障害者の基準:突発性難聴でも申請できるか

突発性難聴の後遺症として高度または重度の難聴が残存した場合には聴覚障害の「身体障害者手帳」の給付を受けることができます。しかし、突発性難聴では片耳の難聴であることが多いため、身体障害者の基準には該当しないことがほとんどです。聴力が変動する時期は身体障害者に該当するかの判断が難しいため、発症後6か月の聴力安定時を目安に判断が行われます。該当するかどうかは通院中の医療機関に問い合わせてみてください。

聴覚障害は難聴の程度によって2、3、4、6級に分かれていて、それぞれ申請に必要な聴覚検査が異なります。

2018年10月現在の「聴覚障害等級」と「検査結果・症状」は次の表の通りです。表に出てくる「聴力レベル」の単位「dB」はデシベルと読み、音の大きさを表しています。数字が大きいほど、大きな音でないと聞こえにくいことを示しています。

【聴覚障害等級と検査結果・症状】

聴覚障害等級 検査結果・症状など
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上の人
(両耳とも全く聞こえない状態)
3級 両耳の聴力レベルがそれぞれ90dB以上の人
耳介に接しないと大声の話を理解できない)
4級 1.両耳の聴力レベルがそれぞれ80dB以上の人(耳介に接しないと普通の声の話を理解できない)
2.両耳の最良語音明瞭度が50%以下の人
(語音聴力検査で最も理解できる割合が50%以下)
6級 1.両耳の聴力レベルがそれぞれ70dB以上の人
(40cm以上の距離での会話を理解できない)
2.片方の聴力レベルが90dB以上、もう一方の聴力レベルが50dB以上の人

3、4、6級は「純音聴力検査」と「語音聴力検査」のみで申請を行うことができます(検査の詳細はこちらのコラムを参考にしてください)。一方、2級をはじめて申請する場合には追加で「聴性脳幹反応」という検査を受ける必要があります。聴性脳幹反応はヘッドフォンで音を聴きながら音を伝達する経路の脳波を記録し、耳から脳の聴覚野までの神経の機能を評価する検査です。

突発性難聴は指定難病なのか

突発性難聴は国が指定した難病ではありません。しかしながら、突発性難聴と診断されたもののその後に診断名が変わることもあります。例えば、治療後に難聴を繰り返したり、症状が悪化進行したり、長期間を経てめまいを発症した場合には、突発性難聴ではなく指定難病に該当する病気の可能性もあります。

現在、難聴で指定難病に該当するのは次の病気です。

それぞれの病気を簡単に説明します。

◎若年発症型両側性感音難聴

若年発症型両側性感音難聴は、生まれつきの難聴ではないものの、40歳未満で発症する両耳の感音難聴です。次の原因遺伝子の変異が血液検査で確認され、外傷や薬剤、ウイルス感染による難聴ではない場合に、若年発症型両側性感音難聴と診断されます。

  • ACTG1遺伝子
  • CDH23遺伝子
  • COCH遺伝子
  • KCNQ4遺伝子
  • TECTA遺伝子
  • TMPRSS3遺伝子
  • WFS1遺伝子

両耳に難聴があって進行する場合には、上記の遺伝子を血液検査で調べます。遺伝子変異があった場合には、若年発症型両側性感音難聴と診断され、指定難病の手続きが勧められます。難聴が進行するにしたがって耳鳴やめまいなどが伴うことがあり、聴力の程度に応じて補聴器や人工内耳などでの治療が行われます。

遅発性内リンパ水腫

遅発性内リンパ水腫の原因はわかっていません。幼少期から片方の耳が全く聞こえない人、ウイルス感染や突発性難聴による高度の難聴が起きた人に、長期間を経て発症します。内耳の水分バランスが崩れて内リンパ水腫という状態になり、回転性のめまいを起こします。治療はメニエール病などと同じように、利尿薬などの薬物治療が行われます。

【参考文献】

Auris Nasus Larynx. 1997 Jul;24(3):265-70.
J Epidemiol. 2001 Mar;11(2):81-6.
Int J Epidemiol. 2001 Jun;30(3):608-15.