2018.11.16 | コラム

そろそろ補聴器が必要かもしれないと思ったら:耳鼻科を受診すべき理由と補聴器の使用に必要な検査について

最近聞こえが悪いかもと思ったら、まずは医療機関で聞こえの悪さの原因を調べてください
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(c)AlexRaths-iStock.com

「最近聞こえが悪くなってきた。」
「補聴器があった方が便利かもしれない。」

歳を重ねると耳が遠くなったと感じる人が多くなります。加齢により聞こえが悪くなることを老人性難聴といいます。老人性難聴はそのままでは改善が難しいので、補聴器を使ったサポートが有効です。
補聴器が必要かもしれないと思ったとき、まずどこに相談すれば良いか悩むかもしれません。聞こえの悪さの原因は老人性難聴以外にもさまざまありますので、まずは医療機関を受診して原因を調べる必要があります。また、受診時にはいくつか検査が行われます。

このコラムでは耳の聞こえが悪くなった人に行われる診察や検査について説明します。

1. 補聴器の使用を考え始めたら、どこに相談に行けば良い?

街にはたくさんの補聴器の販売店があり、新聞やネット上の広告も多く目にします。聞こえにくさを感じて補聴器の使用を考え始めたとき、これらの販売店での購入を考える人もいると思います。

しかし、注意しなければいけないことがあります。そもそも聞こえにくさの原因は必ずしも年齢の影響による老人性難聴ではない場合があります。治療が必要な別の病気が難聴の原因になっていることもあるため、まずは医療機関で原因について調べてもらってください。耳が遠い原因が、耳垢が詰まった状態(耳垢栓塞)だけであったということもよくあります。

聞こえにくさを感じた時に、詳しく検査できるのは耳鼻咽喉科です。大きな病院ではなく近くの耳鼻咽喉科の医院でも構いません。医院によっては補聴器を取り扱っていない場合もあるため、補聴器の購入まで考えている場合にはあらかじめ問い合わせてから受診してください。

 

ちなみに新聞やネットで売られているものの多くは集音機です。集音器とは音を拡大するマイクロフォンの代わりをするのみで、詳細な調整で難聴の聞こえにくさを改善する医療機器ではありません。一方、補聴器は難聴による聞こえづらさを補うための医療機器であり、聞き取りにくい音の高さに合わせて、音の大きさを細かく調整するなど、一人ひとりにあった調整を行うことができます。集音器は補聴器とは異なるものなので注意してください。

 

2. 補聴器を使用するまでの流れ:耳鼻咽喉科での診察と3つの検査について

耳鼻咽喉科を受診した際に行われる診察や検査は次の通りです。

 

  • 問診
  • 耳の診察
  • 聴覚の検査
    • 純音聴力検査
    • 語音聴力検査
    • 不快域値検査

 

「問診」では聞こえにくくなった経過、過去にかかった耳の病気などが聞かれます。その他に、耳鳴りや耳だれなどの症状がないかも確認されます。

次に「耳の診察」が行われます。お医者さんは、耳の穴(外耳孔:がいじこう)から鼓膜を観察して、見た目で判断できる難聴の原因がないかを調べます。具体的には、外耳道に詰まった耳垢がないかどうか、鼓膜に孔が空いていないかなどを確認します。

続いて「聴覚の検査」では3つの検査を受けます。

「純音聴力検査」は最初に行われる聞こえの検査で、主にこの検査結果から難聴かどうかが診断されます。難聴がある場合は、補聴器の使用が検討されます

次に、補聴器の使用を検討している場合には、「語音聴力検査」で言葉の聞き取りがどの程度できているかを調べます。これは難聴の原因を調べる検査でもありますが、補聴器を使ったときの改善効果やどちらの耳に補聴器を使うとよりよく聞こえるのかを判断するための検査です。

さらに「不快域値検査」でどの程度の大きさの音を不快と感じるかを判定します。これは、補聴器を使うことになった場合、補聴器から出る音の大きさの調整に必要な検査です。

補聴器にはさまざまな種類があるので、これらの検査をもとに、どの種類の補聴器が合っているかについても本人の希望を交えて相談します。

 

上記3つの聴覚検査の概要をお伝えしましたが、内容が専門的であるためもう少し詳しく説明します。

 

難聴の程度を調べる検査:純音聴力検査

純音聴力検査は難聴が疑われる人が最初に受ける検査で、主に「難聴の有無」と、「難聴の種類や程度」を調べることができます。静かな部屋に入ってヘッドフォンをつけて検査が行われます。ヘッドフォンから色々な高さや大きさの音が流れ、音が聞こえた時に手元のボタンを押すように言われます。主にこの検査の結果で補聴器が必要かどうかが判断されます。

 

◆補聴器の使用を検討する聴力レベル

純音聴力検査では「4分法の聴力レベル」という値を計算して、「難聴の有無」を調べ「難聴の程度」を分類します。4分法の聴力レベルが25dBより大きな値の場合に難聴があると診断されます。25dBは軽度難聴で通常の日常生活には困らないことがほとんどですが、状況に応じて補聴器の使用が勧められます。90dBより値が大きい重度難聴の場合には補聴器を使用してもほとんど会話を理解できないため、状況に応じて人工内耳などを検討します。

難聴の程度と一般的な補聴器の必要度は次の通りです。

難聴の程度と聴力レベルごとの補聴器の一般的な必要度】

難聴の程度 聴力レベル 補聴器の一般的な必要度
軽度難聴 25-39dB 小さな声や遠く離れている人の声、騒音がある場所での会話の聞き間違いや、聞き取りができないことがあります。聞き逃しを避けたい会議など必要時のみ補聴器の使用が勧められます
中等度難聴 40-54dB



55-69dB
普通の大きさの会話や1.5m程度離れた場所での声の聞き間違いや、聞き取りができないことがあります。補聴器の日常的な使用を勧める聴力レベルです

大きな声でないと会話が理解できなかったり、大声で話していても全てを理解できないことがあります。多くの人で補聴器が必要となる聴力レベルです。補聴器がないと日常生活に不便を感じることが多くなります
高度難聴 70-89dB 耳から30cm離れた所の大声の会話も、音として聞こえるだけで言葉として聞き取ることが難しいです。補聴器が常に必要となりますが、補聴器を使っても言葉の聞き取りには集中が必要です

 

上記はあくまでも補聴器の一般的な必要度で、一人ひとりの生活環境によって実際の必要度は異なります。例えば中等度の難聴でも、退職して夫婦二人暮らしで会話に困る場面がない人では、補聴器の必要度は高くないと考えられます。

 

言葉の聞き分けを調べる検査:語音聴力検査

語音聴力検査は言葉の聞き分けの能力を判断する検査で、補聴器の使用を検討している場合に行われます。ヘッドフォンを装着して、「ア」「サ」など一つひとつ朗読される言葉を聞き取って答えます。聞き取った言葉の正答率から、「聞き分けられるようになる音の大きさ」と、「最も言葉をよく聞き分けられる音の大きさ(最良語音明瞭度)」などが判断されます。

言葉の聞き分け能力には、耳の奥(内耳)から脳へ伝わる神経や、脳の聴覚野と呼ばれる部分が関わっています。この能力は年齢を重ねるとともに低下することが知られています。聞き分け能力が低下すると、会話を音として聞くことができても、何を言っているのかまでは聞き取れず、会話の内容を理解するのが難しくなります。

補聴器では音を大きくはっきり聞こえるようにすることはできますが、言葉の聞き分ける能力は神経や脳が司っているため、簡単には改善することはできません。
そこで、この検査結果から、補聴器を使用した時にどの程度会話が理解できるようになるかの改善効果を予測したり、聞き分けがより良い方の耳を調べて補聴器を使用する耳を決めたりします。
例えば、検査で聞いた言葉のうち60%以上を聞き分けることができた場合は、補聴器の使用によって普通の会話はほとんど理解できると予測されます。聞き分けられた言葉が両耳とも40-60%の場合には、両耳の補聴器使用により聞き取り能力の改善が期待できます。40%以下しか聞き分けられない場合には、補聴器を使用しても効果は限定的と考えられます。

 

補聴器から出る音の大きさを決める検査:不快閾値検査

不快閾値検査は、どのくらい大きな音を聞いた時に不快と感じるかを調べる検査です。補聴器から出る音が大きくなりすぎないようにバランスを定めるために行われます。純音聴力検査と同じようにヘッドフォンをつけて、大きくて長くは聞いていられないと感じた音量になったときに合図をします。

検査結果を元に、補聴器から出る音が不快になりにくいよう音の大きさを調整します。

 

3. 耳が遠くなったと感じたら、まずは受診を

このコラムでは、聞こえが悪くなったと感じた時に医療機関を受診した方が良い理由と、受診時に行われる検査について詳しく説明しました。

街中のざわざわしたところで会話がうまく聞き取れない場合や、会議での発言が聞き取れず困ったことがある場合には、難聴の可能性があります。一度、耳鼻咽喉科を受診して聞こえにくさの原因をはっきりさせるとともに、補聴器の使用について相談してみても良いかもしれません。

執筆者

木村奈津子

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。