とっぱつせいなんちょう
突発性難聴
原因不明に突然片方の耳が聞こえなくなる病気。約2/3の人は回復するが、1/3の人は耳が聴こえないままになってしまう
15人の医師がチェック 143回の改訂 最終更新: 2019.05.09

突発性難聴の原因

突発性難聴の原因はいまだはっきりとわかっていません。現在までに内耳の循環障害、感染、内耳の孔(ろうこう)、免疫の異常などが関わっているのではないかと考えられています。また、リスク因子としてストレス、高血圧、糖尿病、喫煙、飲酒、食事などが挙げられています。最近では遺伝子との関連も報告されています。

1. 突発性難聴が起こる仕組みとは

突発性難聴の診断項目には「原因不明」「突然の発症」「高度難聴」という言葉が入っています。「原因不明」が入っていることからわかる通り、いまだ病気が起こる仕組みは解明されていません。

近年では、何か1つの原因が突発性難聴を引き起こすのではなく、遺伝的な要因や個々の病気、生活習慣などの環境因子がいくつも絡みあって病気を引き起こすのではないかと考えられています。

現在までに考えられている説は次の通りですが、どのように突発性難聴が起こるのかという詳細な仕組みはわかっていません。

  • 循環障害
  • 感染
  • 内耳の瘻孔(ろうこう)
  • 免疫の異常

循環障害を原因とする説は、内耳にある聴覚に関連した細胞の部分の血流が悪くなって起こるのではないかというものです。ウイルス細菌真菌(カビ)などが内耳へ感染することで起こるのではないかという説もあります。その他に、内耳の膜や構造物の損傷で瘻孔(穴が開くこと)ができて内耳内のリンパ液が漏れることで難聴が起こるという説や、免疫の異常で内耳を攻撃する物質(自己抗体)ができて難聴が起こるという説があります。この中のどれか一つが原因というよりも、さまざまな要因が絡み合って起こると考えられています。

2. 突発性難聴のリスク因子とは

突発性難聴の仕組みには前項で説明したような説が考えられていますが、リスク因子としては次のようなものが推測されています。

  • ストレス
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 特定の食習慣
  • 遺伝子多型

一つひとつ説明します。

ストレス:睡眠不足や忙しい仕事など

精神的なストレスや肉体的なストレスは突発性難聴の発症に関連すると報告されています。日本での研究では、突発性難聴の発症前の1か月間に「疲労感がある」、「食欲がない」、「睡眠時間が短い」という傾向がある人が多いことがわかりました。また、睡眠時間が6-7時間未満しかとれていない人は、突発性難聴の人では15.1%なのに対し、突発性難聴でない人は7.9%という報告があり、睡眠不足が突発性難聴になりやすくなる要因の一つではないかと考えられています。

高血圧

突発性難聴の人のうち高血圧がある人の割合は13.6%で、突発性難聴でない人の高血圧である割合は0.5%でした。この結果から高血圧がある人は突発性難聴になりやすいのではないかと考えられています。

糖尿病

突発性難聴の人の中で糖尿病がある割合は6.5%でしたが、突発性難聴でない人で糖尿病がある割合は0.15%でした。このことから、糖尿病がある人は突発性難聴になりやすいのではないかと考えられています。

喫煙

突発性難聴の人の中で喫煙を以前にしていた、もしくは現在している人の割合は36%でしたが、突発性難聴でない人のうち、喫煙をしている人の割合は19.1%でした。このことから喫煙は突発性難聴のリスクと考えられています。

飲酒

純アルコールで計算して1日に16g以上(アルコール度数5%のビールで400mLに相当)お酒を飲んでいる人は、それ以下の人に比べて突発性難聴になりやすい傾向にあります。

特定の食習慣

厚生省特定疾患難病の疫学調査研究班による対象研究では、食事に関連した生活習慣で、「朝食をとらないこと」、「日本茶を飲まないこと」、「西洋型の食事であること」などが突発性難聴のリスクとしてあげられています。「生野菜の摂取が少ないこと」、「葉酸の摂取が少ないこと」なども発症リスクを上げるという報告もあります。突発性難聴の予防に限らず、その他の病気を遠ざけ健康を維持するためにも、バランスの良い食事が勧められます。

遺伝子多型

突発性難聴の発症に遺伝子多型が関連していると言われています。遺伝子多型とは遺伝子を構成しているDNAの配列の個体差のことです。一人ひとりでDNAの配列が少しずつ違っていて、その違いによって病気になりやすさなどが変わると考えられています。

現在までに突発性難聴の発症に関わる可能性が報告されている遺伝子多型は、循環障害に関連するものや、葉酸代謝にかかかわるもの、酸化ストレスに関連するものなどさまざまです。実際の治療などにはまだ活用されていません。

【参考文献】

Auris Nasus Larynx. 1997 Jul;24(3):265-70.
J Epidemiol. 2001 Mar;11(2):81-6.
Int J Epidemiol. 2001 Jun;30(3):608-15.