2015.10.14 | ニュース

薬を飲み続けて複数の病気を治療すると死亡率は下がるのか?

アメリカの研究チームが8,578人を分析
from BMJ (Clinical research ed.)
薬を飲み続けて複数の病気を治療すると死亡率は下がるのか?の写真
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多くの研究が、病気を治療する薬の効果を検証していますが、複数の病気を持つ患者にも同じように効くのでしょうか。今回の研究は、複数の病気を持っている人に薬物治療を行った場合の死亡率との関係を検証しました。

◆ガイドラインに則した薬物治療の実施と死亡率の関連を検証

今回の研究は、アメリカで行われた65歳以上を対象とした調査のデータを分析しました。慢性疾患を2つ以上持つ8,578人の成人について、ガイドラインで推奨された薬物治療の実施と死亡率の関係を検証しました。

慢性疾患として、心房細動冠動脈疾患、慢性腎臓病、うつ症状、糖尿病心不全高脂血症、高血圧、血栓塞栓症のうち2つ以上に当てはまる人を対象としました。

 

◆ガイドラインに則した薬物治療の実施で死亡率を減少

以下の結果が得られました。

心血管系の治療のうち、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、レニン・アンジオテンシン系遮断薬、スタチンは適応症がある場合の死亡率の低下と関連した。

たとえば、β遮断薬を用いたときの調整済みハザード比は心房細動がある人で0.59(95%信頼区間0.48-0.72)、心不全がある人で0.68(95%信頼区間0.57-0.81)であった。

クロピドグレル、メトホルミン、SSRI/SNRIはいずれも死亡率の低下と関連しなかった。

ワーファリンは心房細動(調整ハザード比0.69、95%信頼区間0.56-0.85)または血栓塞栓症(0.44、0.30-0.62)のある対象者のうちで死亡リスク低下と関連した。

ガイドラインに則した薬物治療の結果、死亡率を下げる効果が、血圧を下げる薬(β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB)、コレステロールを減らす薬(スタチン)には見られましたが、血糖値を下げる薬(メトホルミン)、抗うつ薬(SSRI、SNRI)には見られませんでした

血液を固まりにくくして脳梗塞などを予防する薬のうち、ワーファリンには死亡率を下げる効果が見られましたが、クロピドグレルには見られませんでした。

研究班は、この結果を先行研究と比較して、「生存率に対する平均的な効果は、特に心血管系の試験薬については、ランダム化対照試験で示されたものと比較できる範囲にあったが、いくつかの薬については併存疾患によって変化があった」と結論しています。

 

個別に効果を検証された薬でも、複数の病気があり、複数の治療を組み合わせて行う場合には、違った考え方が必要になるかもしれません。ただし、ここで検討された薬には、糖尿病による合併症や後遺症のある脳卒中を予防したり、うつ症状を抑えるなど、死亡を防ぐだけが目的ではないものもあり、死亡率が下がらなかったとしても効果がなかったとは言えない点には注意が必要です。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Association between guideline recommended drugs and death in older adults with multiple chronic conditions: population based cohort study.

BMJ. 2015 Oct 2

[PMID: 26432468]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。