2021.05.04 | コラム

そのイライラ、月経前症候群(PMS)かも:生理前の不調に悩む女性と、周りの人へ

生理前のイライラ、だるさ、憂鬱、頭痛などの症状は一人で我慢しないで!

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月経(生理)前になると、些細なことでイライラしたり、身体のだるさや頭痛が現れたりする人は多いのではないでしょうか?
このような人の中には「月経前はみんな不調なもの」との認識で、辛い症状があっても、毎月我慢してやり過ごしている人もいると思います。しかし、実はその状態は当たり前ではないかも知れません。もしかしたら病気が潜んでいる可能性があるというわけです。

月経前に身体や心の不調が繰り返し起きている状態を「月経前症候群」と呼びます。今回のコラムでは、月経前症候群とは何か、治す方法はあるのか、などについてお話します。月経とうまく付き合うきっかけになれば幸いです。

 

月経前症候群(PMS)って何?

月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)は、毎月の月経前に身体や心の不調を感じ、月経が始まると徐々に改善していくことを繰り返す病気です。日本産婦人科学会では、月経の3-10日前くらいから症状が現れ、月経が始まるとともにその症状が軽くなったり消えていくもの、と定義されています。

身体的な症状の中で起こりやすいものは、のぼせ、お腹の張り、腹痛、腰痛、頭重感、頭痛、乳房痛、吐き気などです。

一方、精神的な症状で最も多いのはイライラしたり、怒りやすくなったりすることです。また、気分が高揚したり、攻撃的になって人にあたりやすくなると同時に、憂鬱にもなりやすく、感情の浮き沈みが激しくなりがちです。普段は自分の気持ちをコントロールすることができる人でも、月経前のこの時期はそれが難しくなることがあります。

 

【月経前症候群でよくみられる症状】

身体的な症状 のぼせ、お腹の張り、腹痛、腰痛、頭重感、頭痛、乳房痛、吐き気 など
精神的な症状 イライラ、怒りっぽい、憂鬱、感情の起伏が激しい、集中力の低下、過食 など

 

このような心身の症状は、家庭や社会生活へも影響することがあります。例えば、月経前になるとはっきりした理由もなくむしゃくしゃして当たり散らし、毎回パートナーや家族と不仲になってしまう、集中力が低下してものごとが進まなくなったり、全てが面倒に感じたりして仕事や勉学に支障が出てしまう、といったようなことです。

攻撃的にはなるものの、気分の浮き沈みも激しいため、このような自分の行動を省みて「自分はなんてダメな人間なんだろう」「母親として失格だ」などと、一転して自己嫌悪に陥ることもあります。

 

特に精神症状が強い人は、月経前症候群の中でも「月経前気分不快障害」と呼ばれる病気かもしれません。月経前の気分の浮き沈みが激しく日常生活が送れない程であれば、一度、産婦人科など医療機関への受診をお勧めします。

 

月経前症候群はなぜ起こる?

さまざまな症状を引き起こす月経前症候群ですが、それが起こる仕組みは現時点でははっきりとは解明されていません。排卵・月経に関わる女性ホルモンの周期的な増減が何らかの影響を及ぼしているだろうと推測されています。つまり、女性ホルモンの異常によって引き起こされるのではなく、むしろ私たちの身体の中で、きちんと女性ホルモンが分泌、増減しているからこそ起こる症状と考えられます。

 

月経前症候群との上手な付き合い方を教えます

ホルモンがきちんと分泌されているから起こるんだ、と言われても、心身の不調をできるだけ回避したいと思うのは当然のことです。

毎月イライラして人間関係がうまく行かなくなったりすると、自分を責めてしまいがちですし、毎月繰り返し自分を責めていては、ますます不調になるばかりです。このような悪循環から抜け出すためにも、症状とうまく付き合うコツを身につけることが大切です。

 

自分のリズムを知ろう

月経前症候群とうまく付き合うには、まずは自分のリズムを知ることが重要です。症状を客観的に把握するために、手帳やカレンダー、スマートフォンのアプリケーションなどに、調子の悪い日とその内容をメモしてみてください。具体的には、イライラ、頭痛、腹痛、過食などの症状を記録しておきます。数ヶ月分続けたら、全体を眺めてみてください。自分でも驚くほどに、定期的に不調を繰り返しているはずです。

自分のリズムが把握できたら、不調の訪れる時期が予想できるようになり、次のような対策が取りやすくなります。

 

リラックスできる時間を確保しよう

まず試して欲しいのが、「不調な時期は無理をしない」ということです。仕事やプライベートで忙しくなりすぎないように、前もって予定を調整しておきます。この期間はリラックスする時間を多めにとって、自分を甘やかしましょう。

とはいえ、家庭があったり、仕事があったりすると、自分だけではどうにもできないこともあると思います。言いにくいかもしれませんが、パートナーや仕事で近しい方には、「この期間は不調になりがちだから」と伝え、頼ってみてください。

子どもの頃から人に迷惑をかけないようにと自立を促されてきた私たちは、人に頼ることに抵抗があるかもしれません。しかし、困った時はお互い様です。不調の時は無理をせず、体調の良い時にその分できることをしっかりやれば良いと思います。

例えば、自分の友達が同じように不調だったら、頑張って働いて欲しいと思うでしょうか?パートナーが不調の時に、無理してでも家事をして欲しいと思うでしょうか? 「休んでていいよ」「無理しないで」と言えるのではないでしょうか? その言葉を自分にもぜひかけてあげてくださいね。

そして、毎月の体調不良を打ち明けられた周りの人は、「月経前症候群」という病気があることを理解してサポートして頂けると嬉しいです。

 

生活習慣を見直そう

食生活や習慣を見直すことで症状の緩和が期待できます。酒や喫煙、カフェインは症状を悪化させがちなので、不調な時期にはできるだけ控えるようにしてください。また、甘いものも気晴らしに必要な量にとどめ、多く摂りすぎないように気をつけてください。軽い運動もリラックスできるようならオススメです。

 

月経前症候群の薬物治療

スケジュールの調整や生活習慣の見直しをしても症状が改善しない人には、薬物治療もあります。腹痛や頭痛、むくみなどの身体の症状を和らげる薬や、憂鬱な気持ちを抑えるための抗不安薬や抗うつ薬などが使われます。症状に応じて、さまざまな漢方薬も使用されます。また、排卵を止めると症状が和らぐことがわかっているので、低容量ピルをはじめとしたホルモン剤で、排卵を止める治療も検討されます。

 

相談できるかかりつけ医を持とう

このように、今まで1人で向き合ってきた月経前の不調は、実は名前のついた病気かもしれません。そして、月経前症候群であれば、さまざまな治療方法があるのです。

産婦人科のかかりつけがある人で、月経前症候群のような症状があると感じた人は、ぜひ一度相談してみてください。また、かかりつけがいない人は、この機会にかかりつけ医を持ってみてください。月経とは長い付き合いになるので、かかりつけの産婦人科で、さまざまな症状を相談できるほうが好ましいです。近くに産婦人科がない場合には、内科を標榜している女医さんにかかってみるのも良いかもしれません。

10代の人は産婦人科の受診に抵抗があるかもしれませんが、20歳から「子宮頸がんの定期検診」が必要になるので、今のうちに通い慣れておくのも良いと思います。お近くの通いやすいところや、インターネットで相性の良さそうな先生のところを探してみてください。

 

「月経前の不調は当たり前」、「みんなも辛いんだから自分も我慢する」のではなく、「この辛い症状にはケアが必要なのかも」と思い直して、受診してみてくださいね。

 

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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