USPSTFが転倒防止の推奨を更新
アメリカの学術団体の米国予防医学作業部会(USPSTF)が、転倒を防ぐ方法について過去に行われた研究のデータを収集し、内容を吟味したうえ、一般に勧められる点をまとめました。
対象となる人は、65歳以上で施設入居中ではなく、骨粗鬆症やビタミンD欠乏症を指摘されておらず、転倒のリスクが高くなっている人としました。
2012年にも同様の調査と推奨がなされていましたが、より新しい研究データも含めるよう改めて調査を行いました。2012年には骨粗鬆症などがある人も対象者に含めていましたが、今回の更新では対象から除きました。
多因子介入、運動、ビタミンD補充についての研究結果
調査の結果、検討に適した62件の研究が見つかりました。対象者の転倒のリスクを評価する基準は研究によってばらついていました。年齢や以前に転倒した経験などがよく使われていました。転倒予防を狙った方法のうち、多く研究されていたものとして、多因子介入、運動、ビタミンDの補充がありました。
多因子介入としては、まずバランス機能や服薬状況などを評価したうえ、個人ごとに調整して、運動、栄養療法、情報提供などを行った研究26件が見つかりました。データを統合すると、多因子介入によって転倒の発生率は0.79倍に少なくなっていました。この効果は、1人の人で1年あたり1.5回ほど転倒を減らすことに相当すると見られました。しかし、転倒でけがをした人の数には差が確かめられませんでした。多因子介入の害としては、運動中の転倒などが報告されていましたが、まれにしかなく、軽度なものに限られていました。
運動について21件の研究が見つかりました。多くは歩行訓練などを週3回程度行ったものでした。転倒した人の数は、運動をした人の中では0.89倍に少なくなっていました。また、対象者を6か月以上追跡した10件の研究のデータによれば、転倒でけがをした回数は0.81倍に少なくなっていました。運動による害として、運動中の痛みや打撲が報告されていましたが、深刻なけがの数は運動をしない場合との差が確かめられない程度でした。
ビタミンDについて7件の研究が見つかりました。転倒が増えたとする結果と減ったとする結果があり、データを統合すると、ビタミンDによって転倒の回数に差は確かめられませんでした。ビタミンDによる害として、転倒が増えたという結果のほかには腎結石などの報告がありましたが、まれなものでした。
運動を推奨、多因子介入は場合によって推奨
USPSTFは、これらの結果をもとに、転倒防止について以下の推奨を決めました。
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転倒防止のための運動を勧める。
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多因子介入は、人によっては勧められる。その判断には以前に転倒した状況、ほかの持病、本人の価値観などを考えに入れるべきである。
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ビタミンDの補充はしないよう勧める。
転倒のリスクを判定するには、年齢、以前に転倒していること、動作がうまくできなくなっていることなどをもとに、かかりつけの医師が個別に判断することとしました。
転倒防止のための努力
アメリカの学術団体による、転倒防止の方法についての調査と推奨を紹介しました。運動と、人によっては多因子介入が推奨される結果となりました。
ただし、この推奨は特に転倒につながりやすい病気などを想定したものではなく、多くの人に共通して勧められるとされるものです。実際には、視力や聴力が低下していれば治療するなど、個人ごとの状況によってさまざまな対応がなされます。
転倒を防ぐことは自由に動ける生活を続けるために大きな意味があります。ここでも要約されているように、多くの研究から積み上げられた知見が役立てられています。
執筆者
Interventions to Prevent Falls in Older Adults: Updated Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force.
JAMA. 2018 Apr 24.
[PMID: 29710140]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。