デュピクセントとは?
デュピクセント®(一般名デュピルマブ)はアトピー性皮膚炎の治療薬です。皮下注射して使います。「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果として承認されました。
アトピー性皮膚炎の治療には一般に、皮膚を保湿することや、ステロイド外用剤、免疫抑制薬のタクロリムス外用剤(商品名プロトピック®など)も使われます。デュピルマブはほかの適切な治療を行っても効果不十分な場合に使うこととされています。
ステロイド外用剤とデュピルマブの併用を試した臨床試験では、中等度から重度のアトピー性皮膚炎があり、ステロイド外用剤で十分な効果が得られなかった成人が対象とされました。
治療効果を判定するため、症状の重さや面積を基準とする「IGA≦1」と「EASI-75」という2種類の目標を決め、目標以上の改善があった人の割合を計算しました。
16週の治療後に、デュピルマブを2週ごとに注射したグループと、偽薬を注射したグループを比較すると、2種類の目標を達成した人の割合は表のようになりました。
偽薬 | デュピルマブ2週ごと | |
IGA≦1 | 12.4% | 38.7% |
EASI-75 | 23.2% | 68.9% |
どちらの目標も、デュピルマブ2週ごと注射のグループのほうが達成した人が多くなりました。
臨床試験で見つかったデュピルマブの副作用には注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎などがありました。
アレサガとは?
アレサガ®(一般名エメダスチンフマル酸塩)は、抗ヒスタミン薬のテープ剤です。「アレルギー性鼻炎」を効能・効果として承認されました。
同じエメダスチンフマル酸塩を有効成分とするカプセル剤(商品名レミカット®など)がすでに使用可能ですが、アレサガはテープを貼って使う点が違います。
臨床試験では、季節性アレルギー性鼻炎の患者が対象となり、3グループに分けられました。
- 偽薬を使うグループ
- エメダスチンフマル酸塩4mgを使うグループ
- エメダスチンフマル酸塩8mgを使うグループ
1日1回2週間の治療を行い、治療前から比べて鼻症状(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉)の合計スコアの変化で効果を判定しました。鼻症状の合計スコアは数字が大きいほど重症で、マイナスの変化は改善を現します。3グループで鼻症状の合計スコアの変化は次のようになりました。
- 偽薬:-0.29
- 4mg:-1.10
- 8mg:-1.35
どちらの用量でも、エメダスチンフマル酸塩を使ったグループのほうが偽薬を使うより大きな改善がありました。承認された用量は1回4mgを原則として「症状に応じて1回8mgに増量できる」とされました。
臨床試験で見つかった副作用には、貼った場所の赤み・かゆみ・丘疹(大きさ1cm以下で盛り上がるもの)、眠気などがありました。
ファセンラとは?
ファセンラ®(一般名ベンラリズマブ)は、気管支喘息に対する注射薬です。「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」を効能・効果として承認されました。
気管支喘息の治療には、日頃の喘息症状をコントロールし、喘息発作を起こさないようにするための薬として、ステロイド薬、長時間作用型β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などがあります。しかしこれらの薬を使い続けても喘息発作が出てしまう人もいます。
ベンラリズマブは「高用量の吸入ステロイド薬とその他の長期管理薬を併用しても、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪をきたす患者」に追加で使うこととされています。
臨床試験で、ベンラリズマブを最初の3回は4週ごと、以後8週ごとに注射するグループと、偽薬を注射するグループが比較されました。
56週の治療期間に、偽薬のグループでは1人1年あたり1.03回の発作が起こりましたが、ベンラリズマブを最初の3回は4週ごと、以後8週ごとに注射するグループでは、1人1年あたり0.66回に減りました(開始時の血中好酸球数300/μL以上の人のみ集計)。
この数値は血中好酸球数の検査値によって対象者を絞った結果であり、添付文書にある使用上の注意には「データは限られているが、投与前の血中好酸球数が少ない患者では、十分な気管支喘息増悪抑制効果が得られない可能性がある」と記載されています。
臨床試験で見つかった副作用には注射部位反応(注射した場所の痛み・腫れなど)、頭痛などがありました。
ネイリンとは?
ネイリン®(一般名ホスラブコナゾール)は抗真菌薬です。真菌(カビ)の一種が原因となる「爪白癬」を効能・効果として承認されました。
臨床試験では、対象者をホスラブコナゾールを飲むグループと偽薬を飲むグループに分けて比較したところ、48週の治療後にホスラブコナゾールのグループでは59.4%の人で爪白癬が治癒しました。偽薬のグループでは5.8%の人が治癒しました。
副作用は血液検査値(γ-GTP、ALT、AST、ALP)の増加や腹部不快感がありました。γ-GTP、ALT、AST、ALPは肝障害などにともなって増加します。
サチュロとは?
サチュロ®(一般名ベダキリン)は抗結核薬です。「多剤耐性肺結核」を効能・効果として承認されました。
結核には有効な治療薬がありますが、結核菌が変化して薬剤耐性となる、すなわち特定の薬が効きにくくなることがあります。複数の薬剤に対して耐性を備えた多剤耐性菌では特に治療方法が限られてしまいます。
ベダキリンと偽薬を比較した臨床試験では、多剤耐性肺結核の患者を対象に、ほかの結核治療薬に加えてベダキリンまたは偽薬を使って治療したところ、偽薬を使ったグループでは半数の人で125日以内に喀痰培養陰性化(痰の培養検査で結核菌が見つからなくなること)が得られましたが、ベダキリンを使ったグループでは83日以内に半数の人が喀痰培養陰性化し、ベダキリンを使ったほうが喀痰培養陰性化が早くなりました。
臨床試験で見つかった副作用は検査値の異常(肝機能異常、血沈亢進)、にきび、吐き気、関節痛、頭痛、嘔吐などがありました。
まとめ
新薬13製品のうち5製品を紹介しました。同日に承認された4製品は別の記事で紹介しています。
関連記事:非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬ほか、新薬4製品
残りの4製品についても別に紹介する予定です。
新薬が加わることにより、保険診療として新しい治療法が使えるようになります。効能・効果や副作用に対応して報告されているデータを参考に、従来の治療法と比較することで、治療選択の幅を広げることができます。
執筆者
デュピクセント皮下注300mgシリンジ 添付文書、アレサガテープ4mg/アレサガテープ8mg 添付文書、ファセンラ皮下注30mgシリンジ 添付文書、ネイリンカプセル100mg 添付文書、サチュロ錠100mg 添付文書
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。