2017.07.22 | ニュース

妊娠高血圧症候群と言われたら、産後も高血圧に気を付けるべき?

出産後の女性54,588人のデータから

from BMJ (Clinical research ed.)

妊娠高血圧症候群と言われたら、産後も高血圧に気を付けるべき?の写真

妊娠20週から産後12週までの間に発症した高血圧は妊娠高血圧症候群と呼ばれます。妊娠高血圧症候群は出産に影響するほか、以後の高血圧とも関連します。生活習慣によってその関係に違いがあるかが検討されました。

アメリカの研究班が、妊娠高血圧症候群以後の慢性高血圧の関係についての研究を、医学誌『BMJ』に報告しました。

この研究は、妊娠高血圧症候群を経験した女性の中で、生活習慣によって以後の慢性高血圧に影響があるかを調べています。なお、ここでは妊娠高血圧症と妊娠高血圧腎症を合わせて妊娠高血圧症候群とします。

研究班は、アメリカで過去に行われた大規模追跡調査のデータを解析しました。出産を経験し、32歳以上での追跡データがあった54,588人の女性を対象としました。対象者のうちで、生活習慣の違いにより慢性高血圧と診断される率に違いがあるかを検討しました。

生活習慣の要素として以下に着目しました。

  • BMI
  • 身体活動量
  • DASH食のスコア
  • ナトリウム/カリウムの摂取量比

BMIは肥満度の指標です。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算されます。一般的に、BMIが22前後が健康的とされ、BMIが25以上の状態はさまざまな病気との関連が指摘されています。

DASH食とは、高血圧の食事療法として考案された食事です。DASH食のスコアは、DASH食を基準として食習慣を採点したものです。

 

対象者のうち妊娠高血圧症候群を経験した人が5,520人、経験していない人が49,068人いました。
妊娠高血圧症候群を経験した人の統計解析から以下の結果が得られました。

過体重または肥満であることが、一貫して慢性高血圧と関連した唯一の生活習慣因子だった。

妊娠高血圧症候群と慢性高血圧について、身体活動、DASH食、ナトリウム/カリウムの摂取量が関係を変えるというはっきりした証拠はなかった。

妊娠高血圧症候群を経験した人のうち、BMIが25以上の過体重、またはBMIが30以上の肥満だった人では、年齢に関わらず、BMIが18.5から22.4の人に比べて慢性高血圧になる率が高くなっていました

身体活動、DASH食、ナトリウム/カリウムの摂取量は、多くの場合について慢性高血圧と関連がありませんでした。量にともなって一定した傾向が見られた関連は、50歳から59歳の人でだけ、DASH食のスコアが高いほど慢性高血圧が少ないというものでした。DASH食のスコアが最も低い1/4のグループと最も高い1/4のグループを比較すると慢性高血圧の率は1.29倍と計算されましたが、中間のグループは最も高いグループと差が確かめられませんでした。

研究班は「妊娠高血圧症候群を経験していない女性に比べて、妊娠高血圧症候群の経験がある女性は健康的な体重を維持することが特に重要と思われる」と結論しています。

 

妊娠高血圧症候群を経験した女性の中で、BMIが高いことと慢性高血圧に関連があるとした報告を紹介しました。

この研究は既存のデータを解析したものであり、体重を減らすことで高血圧を予防する効果があるかを試したものではありませんが、効果があるかもしれないと考える材料にはなります。一般的にBMIが25以上は健康によくない面が言われているため、BMI25以上の人は減量を考えてもいいでしょう。

ただし、肥満が社会問題となっているアメリカほどには、日本でBMI25以上の女性は多くありません。身長160cmなら体重64kgでBMI25となります。ここで基準とされたBMI22.4に当てはめるなら、身長160cmの場合57.6kg以下ならば体重を気にする必要もないということになります。

加えて、身体活動や食事の指標に一貫した関連が見られなかった点も同じ程度の価値があるでしょう。妊娠高血圧症候群だからといって、「できることは何でもやろう」と考える必要はないのかもしれません。

実際のデータをよく見て、効果がありそうなことを見分け、関係あるとすればどの程度かをイメージしておくことで、日常生活を続けながら気を付けるべきことをバランスよく考えるための参考にすることができるでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Lifestyle in progression from hypertensive disorders of pregnancy to chronic hypertension in Nurses’ Health Study II: observational cohort study.

BMJ. 2017 July 12.

[PMID: 28701338] http://www.bmj.com/content/358/bmj.j3024

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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