2017.02.17 | ニュース

前十字靭帯損傷の手術をしたあと再発が多い年齢・性別は?

手術後354人の追跡から
from The American journal of sports medicine
前十字靭帯損傷の手術をしたあと再発が多い年齢・性別は?の写真
(c) twinsterphoto - iStock

膝の前十字靭帯損傷は、スポーツなどで若い人によくあるけがです。治療してスポーツに復帰できる人も多い一方、再発もよくあります。手術後の人を年齢・性別ごとに追跡した結果が報告されました。

オーストラリアの研究班が、前十字靭帯の手術後の患者を追跡した調査を専門誌『American Journal of Sports Medicine』に報告しました。

この研究は、前十字靭帯の治療としてハムストリング腱による再建の手術を20歳未満ではじめて受けた人を対象としました。

ハムストリングというのは太ももの裏側にある筋肉です。膝を曲げるときに働きます。前十字靭帯損傷の手術として、患者自身のハムストリングから腱を取り出し、傷付いた前十字靭帯の場所に移植する(再建する)方法があります。腱を取り出しても膝が曲がらなくなることはありません。

354人が対象となりました。

対象者は平均5年間追跡され、手術後に移植した腱(グラフト)が断裂することや、反対側の膝の前十字靭帯損傷がどの程度起こったかを記録されました。

年齢を18歳未満と18歳以上に分けて集計を行いました。

 

追跡から次の結果が得られました。

グラフトの断裂は57人の患者(18%)に発生し、発生時点は平均で手術後1.8年だった。

最も高いグラフト断裂率は最も若い(18歳未満の)男性で28.3%であり、同じ年齢の女性(12.9%)、また18歳よりも年齢の高い男性(13.8%)より有意に高かった。

対側前十字靭帯損傷は56人(17.7%)の患者に、手術後平均3.7年で発生した。

対象者の18%で手術したグラフトが断裂し、17.7%で反対側の前十字靭帯損傷がありました。

18歳未満の男性でグラフト断裂が最も多く発生していました。反対側の前十字靭帯損傷には年齢・性別による違いがありませんでした。

 

前十字靭帯損傷の手術後の経過についての調査報告を紹介しました。

一度前十字靭帯損傷が起こった人は、手術後にもスポーツを続けるなどの生活の中で、再発の可能性と隣り合わせになります。片方の膝をけがしたことで体のバランスが変わってしまう場合などもあります。手術後の治療としてはリハビリも重視されています。

ここで紹介したデータを参考にして、18歳未満の男性は特にけがの再発予防に気を付けることができます。

リハビリに加えてサポーターを巻くなどけがをした状況に合わせた予防策を取ることが、充実した生活を取り戻し維持する役に立つかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Exploring the High Reinjury Rate in Younger Patients Undergoing Anterior Cruciate Ligament Reconstruction.

Am J Sports Med. 2016 Nov.

[PMID: 27390346]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。