2016.04.02 | コラム

膝の前十字靭帯損傷後のリハビリとは?

スポーツ復帰と関連して
膝の前十字靭帯損傷後のリハビリとは?の写真
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この記事のポイント

1. 前十字靭帯損傷の原因は?
2. 前十字靭帯損傷の症状は?
3. 前十字靭帯損傷の治療とリハビリ

膝の前十字靭帯損傷は、スポーツなどでよくあるけがで、膝の痛みや「膝崩れ」の症状を現します。治療には手術などの方法がありますが、リハビリにも大きな役割があります。膝の前十字靭帯損傷のリハビリ方法について解説します。

 

◆前十字靭帯損傷の原因は?

膝関節は、大腿骨と呼ばれる太ももの骨と、脛骨と呼ばれるすねの骨、それから膝蓋骨と呼ばれる膝のお皿で構成されています。膝関節は大きく曲げることができるような構造で、骨自体がぴったりくっつくのではなく、いくつかの靭帯半月板というクッションが関節をコントロールする役割を持っています。つまり靭帯や半月板があることで、膝を滑らかに動かすことができます。前十字靭帯はすねの骨と太ももの骨をつなぐことで、すねの骨が前に滑り出すのを防いでいます。

膝は大きく動くだけでなく強い力がかかるため、スポーツのけがの中でも膝のけがはよくあるもののひとつです。特に前十字靭帯損傷は、ジャンプして着地した時、方向転換した時、急に動きを止めた時などによく起こります。損傷した時の様子としては、膝が軽く曲がっていた、膝が内側に入ったなどがあり、膝からけがの音が聞こえる人や、けがをしてすぐに動ける人もいます。

スポーツのけがと言うとほかの選手とぶつかるイメージがあるかもしれませんが、前十字靭帯損傷はぶつからなくてもよく起こります。スポーツの種目にもよりますが、前十字靭帯損傷を接触型損傷(接触が原因となったけが)と非接触型損傷(接触以外が原因となったけが)に分けて割合を調べた研究からは、男子で70.1%、女子で75.7%が非接触型損傷(バスケットボール)、男子で49.6%、女子で58.3%が非接触型損傷(サッカー)といった報告があります。

前十字靭帯損傷が起こりやすい人を見分けようとする研究も行われています。スポーツの種目や強さにもよると考えられますが、一般的に女性のほうが男性より多いとされるほか、もともとの関節の形などが関係するとされています。前十字靭帯損傷を予防する狙いのトレーニングも考案されています。

 

◆前十字靭帯損傷の症状は?

前十字靭帯を損傷すると、膝の痛み、膝の腫れなどの症状が現れます。また、損傷のあと動けていても、急に膝がガクっと折れる「膝崩れ」という症状が出ることがあります。

前十字靭帯損傷を放置していると、膝の半月板や軟骨といったクッションの役割を持っている組織に負担がかかり、そちらも損傷してしまう可能性があります。また、膝を動かす感覚に変化が現れる場合もあります。

術後の再発(再受傷)はよくあります。最初にけがをしたのと同じ側も反対側も再受傷の可能性があります。再受傷があれば、再び治療することはできます。

症状を改善し、悪化を防ぐことが治療の目的になります。以下では治療法の中でもリハビリを中心に説明します。

 

◆前十字靭帯損傷の治療とリハビリ

前十字靭帯損傷後の治療は、主に以下の2つに分けられます。

 

  • 保存療法

  • 手術

 

装具療法や運動療法が保存療法に分類されます。

保存療法だけでスポーツに復帰できるかどうかについては、けがの状態やスポーツの内容にもよりますが、一般的には限界があると考えられます。『前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン 2012』では、「保存的治療によりジョギングのような軽度なスポーツ活動へは復帰は多くの場合は可能である。一方、バスケットボール、サッカーのようなジャンプ、カット動作の多いスポーツ活動(pivoting sports)への復帰は保存的治療では困難である」とされています。

対して、手術後のスポーツ復帰については、「膝前後方向の安定性とともに、術後スポーツ復帰に十分な筋力とパワー、調整力、巧緻性などの運動能力が得られたときで、通常術後6カ月以上を要する」とされています。つまり復帰できる場合でも手術後6か月程度のリハビリが必要です。結果的に元と同じ強さのスポーツに復帰できない場合もあります。復帰の割合はさまざまな条件によって変わると考えられますが、一例としては、競技スポーツ選手77人が前十字靭帯損傷に対して手術を受けたのち、1年以内に62人(81%)が競技に復帰し、うち55人が元のレベルかそれ以上にまで復帰できたという報告があります(Br J Sports Med. 2004 Jun; 38(3): 279–284.)。

治療法を選ぶときには、どの程度までの回復を目指すのかを医師とよく相談して決めることが大切です。

 

リハビリは保存療法と手術のどちらにも関わっています。リハビリの方法は、主に以下のものがあります。

 

  • 装具療法

  • 物理療法

  • 関節固有感覚リハビリテーション

  • 運動療法

  • 筋力強化

 

保存療法としては、装具療法や筋力強化が行われます。

装具療法には医師や理学療法士や義肢装具士が関わります。装具は膝を支えて異常な動きを抑える役割があります。膝装具には、金属などの支柱で支えがしっかりしている強固なものや、膝を押さえて支えるような比較的軽いものなど、様々な種類があります。装具の種類によって価格が違い、10万円を超えるものもあります。保険で費用負担が軽くなる場合もあります。

筋力強化として、膝を曲げ伸ばしする筋力などを鍛える方法があります。前十字靭帯損傷によって膝の周りの筋力が低下するので、手術をする場合にもしない場合にも、訓練で筋力低下の改善をはかることができます。

 

手術後にもリハビリを行います。

手術後に膝を支える狙いで装具が用いられることがあります。また、スポーツに復帰してから前十字靭帯損傷の再発を防ぐ目的の機能装具や、術後装具と機能装具の両方の役割を兼ねているものもあります。

物理療法として寒冷療法(アイシング)があります。手術後の冷却によって、術後の痛みなどが抑えられたという報告があります(Am J Sports Med. 27:357-362, 1999.)。人によっては「冷やすと気持ちいい」「腫れや熱を持った感じが治まるから良い」と感じられることもあります。

関節固有感覚とは、自分の膝がどれくらい曲がっているかや膝の位置の認識など、関節の運動に関する感覚のことを指します。前十字靭帯を損傷した後、関節固有感覚が低下することがあります。関節固有感覚は手術後にある程度の回復が見込めますが、リハビリによって回復を促せる可能性があり、関節固有感覚の回復の度合いは復帰後のスポーツ活動度にも関係します。リハビリの方法としては、どれくらい関節が動いたかなどを目で見たり感じたりすることや、バランスボードなどの不安定板の上に立って関節を動かしながらバランスをとる練習などがあります。

術後の膝の訓練は、手術翌日などの早期から開始される場合もあります。また、太ももに駆血帯(ベルト)を巻いて筋力訓練をする「加圧トレーニング」という方法も試みられています。

 

このように、前十字靭帯損傷後のリハビリは様々な種類があります。前十字靭帯は再受傷しやすいけがでもありますので、スポーツ復帰を目指す場合は特に、医師や理学療法士の指導の下、適切なリハビリを行ってください。

 

参考:前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン 2012. 日本理学療法士協会、膝前十字靱帯損傷 理学療法診療ガイドライン. Am J Sports Med. 33:524-530, 2005.

注:この記事は2016年4月2日に公開されましたが、2018年2月9日に編集部(大脇)が更新しました。

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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。


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