乳がん検査は厳しすぎ?基準を緩くしてもがん検出は変わらなかった

マンモグラフィーなどの検査は乳がんを発見できますが、間違ってがんと診断してしまうこともあります。検査画像の特徴でがんを判定する基準を緩くしたところ、がんを見つける結果は変わらなかったことが報告されました。
韓国3,171人のデータの解析
韓国の研究班が、
乳がんの画像の判定基準とは?
マンモグラフィーによるスクリーニングは高い性能で乳がんを発見できます。乳腺密度が高い女性では画像がやや読み取りにくくなります。超音波検査も乳がんのスクリーニングとして使われることがあります。マンモグラフィーのあとに超音波検査を組み合わせることで診断能力が高くなると考えられます。
超音波検査の結果を判定する基準のひとつとして、「BI-RADS」という分類が国際的に使われています。BI-RADSは見つかったものを以下のように分類します。
- カテゴリー0:画像検査の追加が必要
- カテゴリー1:陰性(異常が見つからない)
- カテゴリー2:
良性 病変 (異常なものがあるが、がんではない) - カテゴリー3:おそらく良性の病変(良性と考えられるが、がんの可能性を完全に否定できない)
- カテゴリー4:異常疑い(がんの可能性がある)
- カテゴリー5:悪性の疑いが強い
- カテゴリー6:
生検 で確かめられたがん
生検とは、乳房に針を刺すなどして組織の一部を取り出し、顕微鏡で観察する検査です。生検でがんが見つかった場合は最も信頼性が高い情報になります。
カテゴリー3や4はさらに検査を続けることで最終的にがんと判明する場合もありますが、がんではない場合もかなり含まれています。判断を明確にするために生検が必要になることがあります。
この研究では、従来の基準ではカテゴリー3か4に含まれていた次の場合をカテゴリー2(がんの可能性がない)と判定する基準(ダウングレード基準)が検討されました。
- 大きさ5mm以下、限局性、内部均一、かつ低
エコー の複雑性嚢胞 (complicated cyst) - 大きさ5mm以下、限局性、卵円形の固形病変
生検が減り、がん検出に影響なし
次の結果が得られました。
生検率も6.5%から2.4%に
有意 に減少した(P<0.001)。年ごとのがん検出成果に有意差はなかった(P=0.539)。
ダウングレード基準によって、生検が行われる割合は6.5%から2.4%に減りましたが、最終的にがんを検出する成果は変わりませんでした。
乳がんの検査は必要なとき必要なだけ
乳がんは怖いので、がんの確率は低くても念のため検査したほうがいいと思えるかもしれません。しかし、検査には悪い面もあります。
がんではないものが誤ってがんと診断され、不要だったはずの手術で乳房を切り取れらてしまうケースもあります。
アメリカ予防医学作業部会は、乳がんのスクリーニングについての推奨事項の中で、「スクリーニングのマンモグラフィーを定期的に受けている女性はすべて、非浸潤がんおよび浸潤がんであっても見つからなくても一生健康の害にならず目に見えることもないものに対して診断と治療(「過剰診断」として知られること)を受けるリスクにさらされる」と述べています。
また、マンモグラフィーや超音波検査で乳がんが疑われた場合の多くは次に乳房を針で刺す生検が行われます。針で刺すことにより出血し、血の塊がしばらく残る場合があります。
乳がんの検査は漏れなく見つけようとするだけでなく、がんではないものを見間違えないためのバランスも必要です。
最適なバランスをめぐって世界中で議論が続けられています。ひとつの意見として、上で触れたアメリカ予防医学作業部会は「50歳から74歳の女性には2年に1回マンモグラフィーによるスクリーニングを勧める」としています。
必要な人が必要なだけの検査を受けられるよう、検査方法も常に検証され、調整を続けられています。自分にどの検査が必要なのかを理解して、検査が害になる可能性も考えに入れたうえで検査を利用してください。
執筆者
Application of the downgrade criteria to supplemental screening ultrasound for women with negative mammography but dense breasts.
Medicine (Baltimore). 2016 Nov.
[PMID: 27858896]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。