◆ピロリ菌除菌とは?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃に住み着いて胃や十二指腸の消化性潰瘍を起こします。消化性潰瘍とは胃酸で胃や腸の壁が傷付き、えぐれた潰瘍になってしまうことです。
消化性潰瘍の治療には胃酸を減らす薬があるほか、ピロリ菌がいる人では抗菌薬(抗生物質、抗生剤)でピロリ菌を除菌する方法もあります。
◆これまでの研究状況を調査
研究班は、文献データベースなどを参照して、胃にピロリ菌がいる成人の消化性潰瘍に対してピロリ菌除菌の効果を調べた研究にこれまでどのようなものがあるかを調べました。
見つかった研究報告の中からデータを取り出して、ピロリ菌除菌の効果がどの程度かを計算しました。
◆十二指腸潰瘍には効いていた
関係する55件の研究が見つかりました。
十二指腸潰瘍に対するピロリ菌除菌の効果として、次の結果が得られました。
十二指腸潰瘍の治療において、除菌治療は潰瘍治療薬に勝り(34件の研究、計3,910人の参加者、潰瘍が持続するリスク比0.66、95%信頼区間0.58-0.76、除菌治療と潰瘍治療薬の併用では2,286人中381人(調整割合12.4%)に対して潰瘍治療薬のみでは1,624人中304人(18.7%)、低い質のエビデンス)、無治療にも勝っていた[...]。
潰瘍治療薬だけで治療したときよりも、潰瘍治療薬とあわせてピロリ菌除菌をしたときのほうが十二指腸潰瘍がなくなる割合が大きくなっていました。
胃潰瘍に対しては、得られた15件の研究データからはピロリ菌除菌の効果が確かめられませんでした。
研究班は結論として、十二指腸潰瘍に対する効果を認める一方、「現在のところ、ピロリ菌除菌治療が胃潰瘍のある人に対して有効な治療であると言える根拠はなく、潰瘍治療薬よりも十二指腸潰瘍の再発を防ぐために有効と言える根拠もない」と述べています。
ピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍のほかにも萎縮性胃炎、胃がん、胃マルトリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病とも関係しています。
一方で、ピロリ菌除菌には逆流性食道炎などの副作用も知られています。
どのような場合に効果が期待できるのか、過去の研究の情報を参照することで、より合理的に治療法を選ぶ助けになります。
執筆者
Eradication therapy for peptic ulcer disease in Helicobacter pylori-positive people.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Apr 19.
[PMID: 27092708]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。