2015.07.02 | ニュース

ピロリ菌の除菌で逆流性食道炎に?胃がん予防はトレードオフなのか

東北大学チームによるレビュー

from Frontiers in microbiology

ピロリ菌の除菌で逆流性食道炎に?胃がん予防はトレードオフなのかの写真

胃炎などを起こすヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、胃がんの原因になるとも言われ、慢性胃炎で感染が見つかった人は除菌治療を受けることができます。しかし、ピロリ菌の除菌によって、逆流性食道炎が起こるという説もあります。東北大学の研究班が、日本人を対象としたこれまでの文献を参照し、ピロリ菌感染による症状がない場合に除菌治療をする効果については、逆流性食道炎のリスクとあわせて考えるべきとまとめました。

◆除菌の効果は?

これまで複数の研究で、ピロリ菌主に胃の中に存在する細菌で、胃潰瘍、胃がん、血液疾患などの原因となる菌を除菌すると長期的に胃がんが少なくなったことが報告されています。ピロリ菌によって胃の組織が冒されることにより、胃がんのできやすい状態になると考えられています。

 

◆10%あまりに発症する?

ピロリ菌に感染した人では胃食道逆流(逆流性食道炎を含む)が少ないという多数の報告があります。原因として、ピロリ菌に感染した胃は胃酸の分泌量が少なくなるからという説があります。日本人を対象にした研究として、著者らは除菌をした人の10.5%に逆流性食道炎発症症状や病気が発生する、または発生し始めることし、発症率と除菌後の胃酸の増加量に関連があったとするKoikeらの2001年の論文などを挙げています。

著者らは「これまで日本で、ピロリ菌陽性の対象者集団に対して、除菌後の逆流性食道炎のリスクは前向きコホート研究では評価されていない」としたうえ、除菌前後で逆流性食道炎罹患率一定期間内に発生した疾患の発症しうる母集団に対する割合。有病率と区別されるが13.7%から27.3%に上がったとする台湾の報告、除菌後の人の10.0%に逆流性食道炎が発症したとする韓国の報告を挙げています。

結論として、著者らは次のようにまとめています。

[...]除菌に誘発された逆流性食道炎は、理論上はバレット食道と食道腺がん無制限に増殖して周囲へ広がる、異常な細胞(がん細胞)による病気。塊となって腫瘍を作る固形がんと、白血病のように血液中にがん細胞が存在する血液がんがあるの長期的リスクを増加させうる(Abe et al., 2011)。したがって、ピロリ菌除菌の胃がん予防効果は、健康で症状がなくピロリ菌の感染がある個人に対して(Blaser, 2010)、特にアジアの対象者集団においては、逆流性食道炎のリスク増加と引き換えになるものとして慎重に考えられるべきである。

 

ピロリ菌の除菌は胃潰瘍などの治療という面があり、また胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病という別の病気に対しても効果があると考えられています。ただし、ここではそれらが発症していない人に対して、胃がんの予防を目的に除菌をすることの価値が議論されています。

反面、リスクについても、逆流性食道炎自体の症状に加えて、食道がんが増える恐れがどの程度なのかは実際の情報から評価する必要がありそうです。

除菌を検討されている方には、期待できる利益とそれにともなうリスクについて、医師と十分に相談されることをお勧めします。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Reflux esophagitis triggered after Helicobacter pylori eradication: a noteworthy demerit of eradication therapy among the Japanese?

Front Microbiol. 2015 Jun 9

 

[PMID: 26106373]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。