2016.03.14 | コラム

脳出血で多い被殻出血の症状、治療、予後は?

脳出血

脳出血で多い被殻出血の症状、治療、予後は?の写真
1.被殻出血を起こすとどんな症状が出る?被殻出血が起こりやすい理由と症状について
2.被殻出血を起こしたらどんな治療法が行われる?治療法についての概略
3.回復はするの?後遺症と予後について

脳の中の被殻と呼ばれる部分は脳出血を起こしやすく、他の部位の出血に比べて最も頻度が高いと言われています。被殻出血を起こした時の症状、治療、予後について解説していきます。

◆被殻出血を起こすとどんな症状が出る?被殻出血が起こりやすい理由と症状について

被殻出血は脳出血の中で最も発症頻度が高いと言われています。その理由としては、被殻を栄養している細い血管(外側線条体動脈)が破裂しやすいという性質を持つということが挙げられます。

脳出血により神経症状が現れる原因は二つあります。一つ目は出血によってできた血液の塊が神経細胞を破壊してしまうことです。また、出血をするとその周囲がしばらくの間、脳がむくみます。二つ目の原因として挙げられるのは、この脳のむくみにより周囲の細胞を圧迫してしまい結果的に神経細胞を破壊してしまいます。

被殻は運動の調節(コントロール)などに関与しています。そのため、出血により被殻のみ障害を受けると運動の拙劣さや自分の意志とは関係なく身体が動いてしまう不随意運動と呼ばれる症状が出ることがあります。被殻のすぐ近くには内包と呼ばれる神経の通り道があります。ここには、運動神経や感覚神経が通っているため、内包を直接的に障害(出血量が多く出血が内包まで及ぶ場合)あるいはむくみによる障害(出血後の浮腫により内包周囲の神経を圧迫して破壊してしまう場合)が起きると重篤な運動障害(片麻痺)・感覚障害(手足の位置がわからない、触れられても気づかないなど)を起こすこともあります。

その他の症状としては、出血を起こした側の方向へ両方の眼球が無意識的に向いてしまう共同偏視、自分の思い通りに言葉を表出できない、相手の話を理解できないといった症状を示す失語症を起こすこともあります。

 

◆被殻出血を起こしたらどんな治療法が行われる?治療についての概略

治療方法は出血量や症状に応じて選択されます。出血量が多く30mlを超える場合、開頭血腫除去術という外科的治療が行われる場合があります。この治療法は、頭蓋骨の一部分を切り開き、血腫(血液の固まり)を取り除き、出血している部分の止血を行うというものです。

手術適応にならない範囲の出血量では内科的治療が選択されます。内科的治療では主に血圧管理脳浮腫管理が中心となります。血圧が高いと再出血する危険があります。そのため、血圧を下げる血圧降下剤を使用し厳重な血圧管理が行われます。体内の水分量が増え続けることでも血圧は上昇してしまうので、水分の摂取した量と排泄した量(主に尿量)を管理することも重要となってきます。

また、脳出血を発症すると出血した周りにむくみを生じますので、この浮腫の改善を図る目的で脳浮腫管理が行われます。

後遺症を少しでも減らし、元の生活に戻れるようにサポートするのがリハビリテーションです。リハビリテーションは症状改善を目的に早期から内科的治療などと並行して行われます。

 

◆回復はするの?後遺症と予後について

被殻出血の症状は、その出血の範囲と量によって異なります。そのため、後遺症や回復の予後に関しても出血の範囲出血量により異なってきます。出血量が少なく被殻に限局した出血の場合、症状は軽度である場合が多いと言われています。しかし、被殻の近くに位置する内包に障害が及ぶと前述したとおり運動麻痺や感覚障害を起こすことが多いため、後遺症が残る可能性も高くなります。また、出血量が多く、血腫や浮腫によって脳全体を圧迫されると、脳幹と呼ばれる生命維持の中枢にまで影響が及び、意識障害や呼吸障害など重篤な症状を示すこともあります。この場合、その後の経過は不良もしくは重篤な後遺症を残す可能性が高くなります。

被殻は、脳出血の中でも最も出血を起こしやすい部位です。被殻の近くには内包と呼ばれる運動神経や感覚神経の通り道があるため、通常、運動障害や感覚障害といった症状が現れることが多いです。症状や重症度は出血の範囲や量によって異なるため、出血量が多い場合は開頭血腫除去術という外科的な治療が選択される場合もあります。後遺症の軽減・回復を目指す為、早期からのリハビリテーションが推奨されています。

執筆者

中嶋 侑

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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