脳出血(脳内出血)のリハビリとは

この記事のポイント
2.脳出血に対して行われるリハビリ
3.脳出血のリハビリに対する近年の研究
脳出血は脳卒中の一種で、命の危険があるだけでなく、手足の動きなどに後遺症を生じる場合があります。脳出血後のさまざまな問題に対応するためにリハビリテーションが重視されています。リハビリテーションで使われる方法の例を紹介します。
◆脳出血による症状
脳出血が起きると、頭痛・意識もうろうなどの
脳は部分ごとに担う機能が異なるため、障害された場所によって様々な症状が現れます。脳出血で出ることがある症状は、一部だけをとっても下記のように多様で、このうちどれが出現するかは人によります。複数の症状が出る人もいます。
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手足の動かしにくさ
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手足の感覚の鈍さ
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同名性半盲(視野の右か左の半分が、両目の同じ側で見えなくなること)
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言葉の使いにくさ
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歩きにくさ
病気が生じた後、出来るだけ早くから専門的なリハビリテーションを行うことが、生活を取り戻すために役立ちます。
では、専門的なリハビリテーションでは、どのようなことが行われるのでしょうか。
◆脳出血に対して行われるリハビリ
以下に、よく臨床現場で行なわれているリハビリ手法の例を挙げます。
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いわゆる伝統的なリハビリテーション
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解剖学に基づき、関節が固まるのを防いで動く範囲を確保するための関節可動域訓練や筋力トレーニング等、機能の改善に注目したリハビリ手法です。
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トレッドミル上歩行練習
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トレッドミル(ウォーキングマシン)の上で歩く訓練です。ベルトが動く速度や歩く面の角度を調整できるトレッドミルがよく用いられます。身体を上から吊るし、足への負荷を軽くするための免荷式トレッドミルが用いられることもあります。
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CI療法(Constraint-induced movement therapy)
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麻痺 が軽度の方に対して、この方法が適切かを十分判断したうえ、麻痺がない手を使えないようにして生活のなかで強制的に麻痺があるほうの手を使わせ回復させることを目的とした訓練です。1日に6時間以上の訓練を必要とするなど、様々な規定のもと行われるのが一般的です。
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課題指向型訓練
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目的や課題に合わせて様々な方略に沿って行われる練習方法です。適切な動作の難易度や実践場面に類似した環境を設定することで、より学習しやすくなると言われています。
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ほかにもさまざまな手法のリハビリが使われています。脳出血後の身体の状態は人によって大きく違うので、リハビリの目的や適していると考えられる方法も多様です。
◆脳出血のリハビリに対する近年の研究
脳出血のリハビリについては最近も新しい手法を探る研究が続いています。近年研究が重ねられつつある試みをいくつか紹介します。
この中には実際のリハビリの一環として利用可能になっているものもありますが、どの医療機関でも行われていると言えるものではなく、今後普及が進むかどうかについても予想できない点があります。また脳出血後のリハビリをしているすべての人が使用できるものでもありません。
比較的新しいリハビリ手法を現実の選択肢として考えることができるかどうかは、医師や
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機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation:FES)
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筋肉は微弱な電気的変化によって動きます。機能的電気刺激は、麻痺のある手足を人工的に刺激し、動きやすくしようとする治療法です。
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ロボット療法
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手足を動かそうとする時、身体には微弱な電気的変化が発生します。ロボット療法は、手足に取り付けた機器がその電気を読み取り、ものをとる・歩くといった手足の動きを誘導します。
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ブレインマシンインターフェイス(Brain Machine Interface:
BMI )-
頭に貼った電極から脳内の電気的変化を読み取り、手足に刺激を与えて筋肉を動かす治療法です。
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経頭蓋直流電気刺激(transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)
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頭から弱い直流電流(1-2mA)を5-30分程度流すことで、脳の一部を刺激する治療です。
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経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)
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磁気によって脳を刺激し、正常な脳組織の働きを良くすることを目的とします。
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これらの治療は、リハビリを行いながら、補助的な手段として選択できる可能性があります。
脳出血後の身体の状態は人によって違い、リハビリの方法もたくさんあります。どのようなリハビリが適しているかは多くの面から考える必要があります。専門家と相談し、十分な情報を集めたうえでリハビリの方法を選んでください。
注:この記事は2016年3月8日に公開しましたが、2018年2月22日に編集部(大脇)が更新しました。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。