◆相対生存率を集計
ここで紹介する報告は、国立がん研究センターの研究班が、全国の32施設で1997年から2007年までに診断・治療を受けた患者405,226人のデータをもとに生存率を計算した結果です。
報告では、「計測した生存率(実測生存率)を、対象者と同じ性・年齢・分布をもつ日本人の期待生存確率で割ったもの」である相対生存率が指標とされています。研究班は、それぞれの集計に適した対象者を選んで、5年相対生存率と10年相対生存率を計算しました。
がんの種類を、できる場所で分類し、種類ごとに相対生存率を計算しました。
◆前立腺がんの5年相対生存率は100%
集計の結果、5年相対生存率は、前立腺がんで100%、膵臓がんで9.1%などと見積もられました。
10年相対生存率は、甲状腺がんで90.9%、前立腺がんで84.4%、子宮体がんで83.1%、乳がんで80.4%、子宮頚がんで73.6%、卵巣がんで51.7%などと見積もられました。
報告にはまた、「全部位全臨床病期の5年相対生存率は68.8%でした。1997年の62.0%から徐々に改善している傾向がみられます。これは、化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられます。」と記されています。
より詳しい集計結果は、「KapWeb」として公開されています。
https://kapweb.chiba-cancer-registry.org
一口にがんと言ってもたくさんの種類があり、症状や治療法も大きく違います。予防や治療を考えるうえで、種類ごとにどの程度の危険性があるかは基本的な情報として必要です。この集計は、診断や治療の成果を反映すると同時に、今後の課題も示していると言えるのかもしれません。
執筆者
全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について 10年生存率初集計
国立研究開発法人国立がん研究センター プレスリリース, 2016年1月20日
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160120.html※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。