2020.01.14 | コラム

膵のう胞があると膵臓がんになりやすい?:膵臓が心配な人は必ず読んでください

膵のう胞の中には膵臓がんになりやすいタイプがあります
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医学・医療が進歩した現代でも、膵臓がんは診断や治療がもっとも難しい病気の一つです。膵臓がんを早期発見するためには膵臓がんになりやすいリスクファクター(危険因子)を知ることが重要で、その中の一つに「膵のう胞」と呼ばれる病気があります。膵のう胞にはいくつかのタイプがあり、膵臓がんになりやすいタイプの膵のう胞は「IPMN:膵管内乳頭粘液性腫瘍」と呼ばれています。

本コラムでは膵のう胞はどのような病気なのか、膵のう胞が見つかったらどのようにすればよいのかについて解説します。

1. 膵のう胞とはどのような病気か?

液体がたまった袋状の病変を「のう胞」と呼び、膵臓にできたのう胞を「膵のう胞」と呼びます。膵のう胞はほとんどの人で無症状で、健康診断や人間ドックなどの画像検査(腹部エコー検査CT検査、MRI検査など)で偶然発見されることが多いです。

 

膵のう胞にはいくつかの種類があります。

 

  • IPMN(Intraductal papillary mucinous neoplasm, 膵管内乳頭粘液性腫瘍
  • MCN(Mucinous cystic neoplasm, 粘液性のう胞腫瘍)
  • SCN(Serous cystic neoplasm, 漿液性のう胞腫瘍)
  • 膵仮性のう胞

 

これらのうち、見つかる頻度がもっとも高いのがIPMNと呼ばれる膵のう胞です。

 

2. IPMNとはどのような病気か?

膵臓には膵液という消化液を作る働きがあり、膵液を流すための「主膵管」と主膵管から枝分かれした「分枝膵管」という細い管があります。

膵臓の主膵管と分枝膵管

IPMNとは、どろりとした粘液が作られて膵管の中にたまり、膵管が袋状にふくらんでのう胞の形になったものです。主膵管がふくらんだものを「主膵管型IPMN」、分枝膵管がふくらんだものを「分枝型IPMN」と呼びます。

IPMNは主に40歳以上の人にみられ、高齢男性ほど多いと言われています。人口10万人あたり約26人にIPMNがみられます。

 

3. IPMNはどのくらい膵臓がんになりやすい?

IPMNの中でもっとも多い「分枝型IPMN」の人を長期間経過観察した研究があります。それによると膵臓がんの発生率は5年間で3-4%、10年間で6-8%であり、これは全国平均の約18倍の数値と報告されています。つまり、IPMNの人は膵臓がんになりやすい、言いかえれば「IPMNは膵臓がんのリスクファクターである」と言えます。

ちなみにIPMN以外の膵臓がんのリスクファクターとしては、次のものも知られています。

 

 

今回のコラムではこれらの因子について深く触れませんが、「膵臓がんの原因:飲酒、喫煙などとの関係は?」で詳しく説明していますので参考にしてください。

 

4. 膵のう胞が見つかったときにすべきこと

膵のう胞が見つかったからといって必ずしも膵臓がんになるわけではありません。慌てずにまずは医療機関を受診して詳しく調べてもらってください。内科、特に消化器内科が担当になることが多いと思います。

病院ではまず、どのタイプの膵のう胞かを調べるために検査を行います。血液検査や画像検査(腹部エコー検査、CT検査、MRI検査など)の結果を踏まえてタイプを見極めていきます。IPMNであることが分かった人は、今の時点ですでに膵臓がんができていないか、さらに詳しく調べられます。

少し専門的な話になりますが、次のようなサインがある場合には膵臓がんができている可能性があります(high risk stigmataと呼びます)。

 

  • IPMNが胆管を塞ぎ胆汁の流れが悪くなって黄疸になっている
  • のう胞の内部に5mmを超えるかたまり(充実成分)がある
  • 主膵管の太さが10mm以上ある

 

現時点で膵臓がんがないと診断された人は、その後の膵のう胞の変化を見逃さないために、定期的に検査を受けるよう勧められます。通院間隔は病状によって異なりますが、半年から1年ごとの通院を最低でも5年間は継続します。

膵のう胞が見つかった場合に一番大切なことは、まずは慌てずに医療機関を受診すること、そして、もし膵臓がんが出てきても早期に発見・治療できるように通院を継続することです。

 

今回のコラムを通じて、膵のう胞、特にIPMNと膵臓がんについての知識が深まれば幸いです。

参考文献

・日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会「膵癌診療ガイドライン2019年版」, 金原出版, 2019

・国立がん研究センターがん情報サービス 最新がん統計

・国際膵臓学会ワーキンググループ, 「IPMN国際診療ガイドライン2017年版」, 医学書院, 2018

・Pergolini I, et al. Long-term risk of pancreatic malignancy in patients with branch duct intraductal papillary mucinous neoplasm in a referral center. Gastroenterology 2017;153:1284-94.

・Oyama H, et al. Long-term Risk of Malignancy in Branch-Duct Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms. Gastroenterology 2020;158:226-237.

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。