2017.06.06 | ニュース

手術後の「ここはどこ?」、予防プログラムで防げるか

台湾377人の手術後を比較
from JAMA surgery
手術後の「ここはどこ?」、予防プログラムで防げるかの写真
(C) Syda Productions - Fotolia.com

手術後に幻覚や妄想が現れ、大声を上げたり点滴を抜いたりしてしまう人がいます。譫妄(せんもう)と呼ばれる状態です。譫妄が出ると入院が長引くことがあります。譫妄を予防するプログラムの効果が試されました。

せん妄一時的な意識障害です。せん妄を起こしやすい状況がいくつか知られています。特に手術後数日ほどで現れるものは術後せん妄と呼ばれます。特に高齢の患者では術後せん妄が起こりやすいとされます。

術後せん妄では、自分が今いる場所や状況の記憶(見当識)が損なわれて手術のために入院していることがわからなくなったり、点滴を抜いてしまったり、ベッドから出て転んだりすることで、入院中の治療に悪影響が及ぶ場合があります。

 

台湾国立大学などの研究班が、修正高齢病院生活プログラム(mHELP)により手術後のせん妄を防げるかどうかを試し、結果を専門誌『JAMA Surgery』に報告しました。

mHELPは、看護師が見当識のコミュニケーション、口腔・栄養の支援、早い時期から体を動かすことを手術後毎日行います。

65歳以上で、胃切除術、膵頭十二指腸切除術、または結腸切除術を受ける患者が対象とされました。それぞれ胃がん膵臓がん大腸がんなどの治療に使われる術式です。

対象者は病室ごとにランダムにグループ分けされ、mHELPを受けるか、通常のケアを受けるかに割り当てられました。

 

次の結果が得られました。

術後譫妄は、mHELPの参加者では196人中13人(6.6%)対照の個人では179人中27人(15.1%)に発生し、mHELP群の相対リスクは0.44(95%信頼区間0.23-0.83、P=0.008)となった。介入群の参加者はmHELPを中央値7日(四分位間範囲6-10日)にわたって受け、入院期間の中央値は対照群(14.0日)に比べて短かった(12.0日、P=0.04)。

術後せん妄が発生した割合は、mHELPを行ったグループで6.6%、通常のケアのグループでは15.1%となり、mHELPを行ったほうが術後せん妄が少なくなっていました

入院期間は、通常のケアのグループでは半数が14日以内でしたが、mHELPのグループでは半数が12日以内でした

研究班は「この結果から、大きな腹部手術を受ける比較的高齢の患者の術後のケアを進歩させるために、mHELPを使うことが支持される」と結論しています。

 

手術後のケアによって術後せん妄を防ぎ、入院期間を短くすることができたという報告を紹介しました。

術後せん妄は環境によっても起こりやすさが違うと考えられています。環境の変化や手術による身体的・精神的ストレスがせん妄につながると考えられています。家族と面会することが術後せん妄に有効という意見もあります。

大きな手術は傷を閉じて終わりというわけにはいきません。看病する人や医療スタッフが協力して手術後の回復を助けることも大切です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of a Modified Hospital Elder Life Program on Delirium and Length of Hospital Stay in Patients Undergoing Abdominal Surgery: A Cluster Randomized Clinical Trial.

JAMA Surg. 2017 May 24. [Epub ahead of print]

[PMID: 28538964 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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