2015.09.29 | ニュース

減量手術はそれほど重度の肥満ではない人にも効果があるか?

台湾52人の手術例

from JAMA surgery

減量手術はそれほど重度の肥満ではない人にも効果があるか?の写真

肥満によって起こりうる病気を防ぐための治療として、胃を小さくするなどの減量手術があります。リスクと効果のバランスを考えて重度の肥満の人が主な対象とされますが、比較的軽度の人を対象に手術を行った結果が台湾の研究班から報告されました。

◆減量手術とは?

肥満が指摘され、食事療法や運動療法で体重を減らすことが出来なかった人に行われます。手術の方法にはいくつかの種類がありますが、日本でよく用いられている手術にスリーブ上胃切除術があり(保険適応)、胃を小さくすることによって、あまり食べられなくなる効果があります。

日本肥満症治療学会のガイドラインでは、手術が勧められる条件として、BMI(体重÷身長の2乗)が35以上に当たる場合などが挙げられています。

以前にMEDLEYニュースで紹介した研究では、BMIが平均47の人たちについて効果が報告されていますが、この研究ではBMIが35より低く、2型糖尿病がある人を対象としました。

 

◆手術 vs 薬物で経過を比較

研究班は2型糖尿病と肥満がある患者を対象として、減量手術を受けた52人と、薬物治療を続けた299人の診療データから、5年間の経過を比較しました。

 

◆HbA1cに長期効果あり

次の結果が得られました。

HbA1cの減少量、完全治癒率、および部分治癒率はすべて薬物治療群よりも手術群で有意に大きかった(すべてP<0.001)。しかし、死亡率(P=0.66)と末期腎臓病の発症率(P=0.37)は2群間で有意差がなかった。

糖尿病の指標であるHbA1cが、手術をした人のほうが薬物治療を受けた人よりも改善しました。

研究班は「軽度肥満のある2型糖尿病の患者に対して、減量手術による血糖値コントロールの改善は少なくとも5年間続く」と結論しています。

 

減量手術は決して気軽に受けられる治療ではありませんが、日本肥満症治療学会のガイドラインでも、BMIが32以上で糖尿病がある人には勧められる可能性が記載されています。この研究はその場合に当てはめて考えることができるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Effect of Bariatric Surgery vs Medical Treatment on Type 2 Diabetes in Patients With Body Mass Index LowerThan 35: Five-Year Outcomes.

JAMA Surg. 2015 Sep 16 [Epub ahead of print]

[PMID: 26374954]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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