2015.09.17 | ニュース

大腸がんができる遺伝病に内視鏡で対抗、家族性腺腫性ポリポーシスによる数百のポリープを切除

京都府立医大など、90人の治療例

from Endoscopy

大腸がんができる遺伝病に内視鏡で対抗、家族性腺腫性ポリポーシスによる数百のポリープを切除の写真

家族性腺腫性ポリポーシスは遺伝により若いころから大腸に無数のポリープができ、その中から大腸がんが発生する病気です。大腸がんを防ぐ治療として、京都府立医科大学などの研究班が、内視鏡手術でポリープを取り除く治療を行いました。

◆無数のポリープを内視鏡で取り除く

家族性腺腫性ポリポーシス(FAP、家族性大腸腺腫症とも)の治療には、大腸をすべて取り除く手術がよく行われます。この研究では、ほかの治療法として、繰り返し内視鏡手術によりポリープを取り除くことで、大腸を残したままがんを防ぐことを試みました。

 

◆およそ5年間、発生なし

以下の結果が得られました。

95人の適格な患者のうち、5人(5.3%)が除かれた。残りの90人の患者(初診時の年齢の中央値29歳、範囲16歳から68歳、46人が男性)が中央値5.1年(四分位間範囲3.3-7.3年)にわたってフォローされた。この間、計55,701個のポリープが出血や穿孔などの有害事象を起こすことなく切除された。患者当たり内視鏡治療の回数は中央値8回(四分位間範囲6-11)、切除されたポリープの数は475個(四分位間範囲211-945)だった。

研究期間に浸潤性結腸直腸がんは記録されなかった。2人の患者(2.2%)は、ポリポーシスの表現型が密生型に変化したため結腸摘出術を受けた。

対象となった16歳から68歳の患者90人に、内視鏡によるおよそ5年前後の治療が行われました。

半数の患者が8回以上の内視鏡治療を受け、半数の患者が475個以上のポリープを取り除くという治療によって、取り除かれたポリープに大腸がんと疑わしいものはありましたが、周りの組織に広がっていく大腸がんはどの患者にも発生しませんでした

2人は大腸の状態が「密生型」という、がんができやすいと見られる状態に変わったため、大腸を取り除く手術を受けました。

研究班は「FAPの内視鏡による管理は中期的に実行可能であり安全である」と結論しています。

 

大腸を取り除く手術をすると、その後の生活に大きな影響があります。家族性腺腫性ポリポーシスの治療として、内視鏡治療が手術に代わりうるかはこの結果だけでは決められませんが、今後治療法の研究が進むうえで、ひとつの論点になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Endoscopic management of familial adenomatous polyposis in patients refusing colectomy.

Endoscopy. 2015 Sep 9 [Epub ahead of print]

[PMID: 26352809]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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