糖尿病の薬でがんが増えるのか?ピオグリタゾンとがんの関連

糖尿病治療薬のピオグリタゾンは、膀胱がんとの関連について議論がなされています。アメリカの患者の診療データを解析したところ、膀胱がんとの関連は見られない一方、ピオグリタゾンを使った人で前立腺がんと膵臓がんが多かったことが報告されました。
◆40歳以上の糖尿病患者のデータから
研究班は、アメリカの40歳以上の糖尿病患者のデータを参照し、ピオグリタゾン使用と膀胱がんの関連について統計解析を行いました。
また、膀胱がん以外の
◆前立腺がん、膵臓がんと関連あり
解析から次の結果が得られました。
膀胱がんコホートの193,099人の間で、34,181人(18%)がピオグリタゾンを使用し(使用期間の中央値は2.8年、範囲は0.2-13.2年)、1,261人に膀胱がんの
発症 があった。ピオグリタゾンを使ったことがあることは、膀胱がんのリスクと関連がなかった(調整ハザード比1.06、95%信頼区間0.89-1.26)。
調整した解析で、ほかの10種のがんのうち8種類はピオグリタゾン使用と関連がなかった。ピオグリタゾンを使ったことがあることは、前立腺がんのリスク増加(ハザード比1.13、95%信頼区間1.02-1.26)、膵臓がんのリスク増加(ハザード比1.41、95%信頼区間1.16-1.71)と関連した。
ピオグリタゾンを使うことと膀胱がんの発症に関連は見られませんでしたが、ピオグリタゾンを使ったことがある人で、前立腺がんの発症と膵臓がんの発症が多い関連が見られました。
研究班はこの結果について「ピオグリタゾンを使ったことがあることと、前立腺がんおよび膵臓がんのリスク増加との関連は、この関係が因果関係なのか、あるいは偶然、残った交絡、逆因果関係によるものなのかを評価するためのより詳しい調査を支持する」と述べています。
この結果だけで、ピオグリタゾンが前立腺がんや膵臓がんを増やすと断言することはできません。糖尿病やほかの健康状態によってピオグリタゾンの治療が選ばれた人に、もともと前立腺がんや膵臓がんを発症しやすい背景があった可能性も否定できません。
ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系の薬剤を含め、糖尿病治療薬とがんの関係については多くの議論があり、未解決の論点も多く残されていますが、この報告もひとつの材料になっていくかもしれません。
執筆者
Pioglitazone Use and Risk of Bladder Cancer and Other Common Cancers in Persons With Diabetes.
JAMA. 2015 Jul 21
[PMID: 26197187]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。