2016.04.15 | ニュース

糖尿病の薬『ピオグリタゾン』で脳梗塞後の心血管病のリスク減少、副作用のリスクは増加

3,876人の試験で検証
from The New England journal of medicine
糖尿病の薬『ピオグリタゾン』で脳梗塞後の心血管病のリスク減少、副作用のリスクは増加の写真
(C) Sergey Yarochkin - Fotolia.com

脳梗塞などを起こした人は、背景に全身の動脈硬化があり、脳梗塞の再発や、心筋梗塞などほかの問題を起こす可能性があります。今回、ピオグリタゾンという糖尿病の薬がこれらの予防に有益かどうか検討されました。

◆まだ糖尿病を発症していない脳梗塞の患者が対象

対象は、脳梗塞を6カ月以内に起こした40歳以上の人のうち、糖尿病発症していないが検査では血糖値を下げる体の機能の低下が見られた人です。

対象者を、標準的な治療に加えて、

  • ピオグリタゾンを服用するグループ(1,939人)
  • プラセボ(有効成分のない偽薬)を服用するグループ(1,937人)

にランダムに分けました。

ピオグリタゾンの効果をみるために脳卒中心筋梗塞(死亡に至った人も含む)の発症を指標として、2つのグループを比較しました。

 

◆心血管病のリスクが24%減少

以下の結果が得られました。

4.8年の追跡で主要評価項目の発生は、ピオグリタゾン群1,939人中175人(9.0%)、プラセボ群1,937 人中228人(11.8%)であった(ハザード比(HR)0.76、95%信頼区間(CI)0.62-0.93、P=0.007)。

糖尿病の発生は、ピオグリタゾン群73人(3.8%)、プラセボ群149人(7.7%)であった(HR 0.48、95%CI 0.33-0.69、P<0.001)。

全死因死亡率は2群間に有意差を認めなかった(HR 0.93、95%CI 0.73-1.17 P=0.52)。

プラセボ群に比べてピオグリタゾン群は、4.5kgを超える体重増加(52.2% vs 33.7% P<0.001)、浮腫(35.6% vs 24.9% P<0.001)、手術または入院を要する骨折(5.1% vs 3.2% P=0.003)の発生頻度がより高かった。

ピオグリタゾンは、脳卒中心筋梗塞を合わせた心血管病のリスクを24%、糖尿病のリスクを52%、それぞれ減らしたことが示されました。副作用として、肥満むくみ、重症の骨折がピオグリタゾンを服用したグループで多く見られました

 

糖尿病の薬であるピオグリタゾンが糖尿病を改善する効果については以前から知られています。

この研究でも、ピオグリタゾンのグループでは糖尿病を発症した人はプラセボのグループの半数以下でした。また、この研究でピオグリタゾンの効果の指標とした脳卒中心筋梗塞の発症は、ピオグリタゾンで24%抑えられています。つまり、この研究の対象者ではピオグリタゾンの心血管病を予防する効果が示されました。

ただし、脳卒中だけ、心筋梗塞だけで見ると、2つのグループ間で統計的に差があると言えるほどではありません。全ての死因を合わせた死亡率も2つのグループ間で差はありません。ピオグリタゾンには心血管病に対する効果と同時に骨折などの副作用リスクも併せ持つことに留意すべきと考えられます。

執筆者

中岡ひさ子

参考文献

Pioglitazone after Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack.

N Engl J Med. 2016 Apr 7.

[PMID: 26886418]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。