2016.05.04 | ニュース

糖尿病の人に頻発する膵臓がんは薬の副作用か?

18万人のデータ解析から

from Diabetes, obesity & metabolism

糖尿病の人に頻発する膵臓がんは薬の副作用か?の写真

血糖値を下げて糖尿病を治療する薬が、がんの頻度に影響するのではないかという議論があり、さまざまなデータが示されています。インクレチン関連薬という種類の薬が膵臓がんに影響するか、実際に使った人の統計から検討されました。

◆インクレチン関連薬で膵臓がんは増えるか?

糖尿病の治療に使う代表的な薬に、血糖血液中のブドウ糖のこと。人が活動するためのエネルギー源。血液中の濃度を血糖値といい、糖尿病の診断に用いられる値を下げるホルモン体内で作られて、血流にのって体の特定の部位を刺激する物質。内分泌物質とも呼ばれるであるインスリン膵臓から出る、血糖値を下げる方向に働くホルモン。インスリンの欠乏や作用不足が糖尿病の原因となるがあります。ほかにも多くの種類の薬が使われています。

インクレチン関連薬は、糖尿病の薬の一種です。体内にあるインクレチンというホルモンの作用を介して、血糖値を下げる効果を現します。

ここで紹介する研究は、糖尿病のある人がインクレチン関連薬を使うことで、膵臓がんの頻度が増えるかどうかを検討しています。

イギリスの研究データベースから、インスリン以外の薬で治療を受けた糖尿病患者18万人以上を含むデータを参照し、統計解析を行いました。


 

◆インクレチン関連薬のせいではなかった?

解析から次の結果が得られました。

非インスリン糖尿病薬を使用中であることは、膵臓がんのリスクが4倍に増加することと関連していた(ハザード比4.28、95%信頼区間3.49-5.24)。

インクレチンの使用は、糖尿病のある対照群の対象者と比較したときには膵臓がんと関連しなかった(ハザード比1.36、95%信頼区間0.94-1.96)[...]。

インスリン以外の治療薬を使っている人には、糖尿病ではない人に比べて4倍以上の率で膵臓がんが発生していました。しかし、その中でもインクレチン関連薬を使っていた人を、インクレチン関連薬を使っていない糖尿病の人と比較すると、統計的な違いは見られませんでした

研究班は「インクレチンの使用は、背景にある2型糖尿病の重症度で調整したうえでは、膵臓がんと関連がなかった」と結論しています。

 

糖尿病の人では膵臓がんが発生しやすいことがすでに知られています。この研究でもその関係が表れていた一方で、インクレチン関連薬がさらに膵臓がんを増やすという確かな証拠は見つかりませんでした。

薬の副作用を確かめることは難しく、治療されている病気の影響や同時に行われている治療の影響をあわせて考える必要があります。膵臓がんへの影響についてもこの研究だけでは解決しませんが、ほかの角度のデータとも合わさって、インクレチン関連薬が影響する範囲がしだいに明らかになっていくかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Use of incretin agents and risk of pancreatic cancer: a population-based cohort study.

Diabetes Obes Metab. 2016 Mar.

[PMID: 26537555]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]