PTSDの治療は受ける人の希望によって効果が変わるのか?3種類の非薬物療法について
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療には薬剤のほか、持続的曝露療法などの心理療法があります。心理療法は精神的な負担になる場合があり、途中で中止されることもあります。アメリカの研究班が、3種類の心理療法を比較する研究を行った際、あらかじめどの治療法を希望するかを聞き取り、治療効果に違いがあるかを調べました。その結果、うつ症状があった人は、希望しない治療法を受けたときに効果が少なくなっていました。
◆希望を聞き取ったうえでランダム化
研究班は、PTSDに対する治療効果を比較する研究の参加者を対象として、持続的曝露療法、リラクセーション法、対人関係療法をランダムに割り当てる前に、これらの内容を説明したうえ、どの治療法を希望するかを聞き取りました。
◆うつ症状があるときに違いがあった
治療後に次の結果が得られました。
87人の患者(79%)が治療のうちで希望するもの、または希望しないものを挙げた。
全体として、治療が希望されたときにも希望しないとされたときにも、CAPSスコアの変化、治療応答、離脱は予言されなかった。うつ症状を併発していた患者では、希望したものではない治療を受けていた場合に最終的なCAPSスコアがより悪かった。
希望すると答えた治療法に割り当てられた人と、希望しないと答えた治療法に割り当てられた人とで、全体として治療効果に違いは見られませんでした。治療開始時にうつ症状があった人で、希望した以外の治療法に割り当てられた場合に、治療効果が比較的悪くなっていました。
実際の治療では治療を受ける本人が希望しない治療法は行われにくいと考えられ、この試験がどのような場合に当てはまるかは単純ではなさそうです。とはいえ、PTSDの治療を受けようとする人の家族や友人にあたる方には、参考になる場面があるかもしれません。
なお、3種類の心理療法の効果については別に報告されています。興味のある方はあわせてご覧ください。
執筆者
Treatment preferences of psychotherapy patients with chronic PTSD.
J Clin Psychiatry. 2015 Jun 9. [Epub ahead of print]
[PMID: 26115532]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。