2015.06.14 | ニュース

ピロリ菌に感染していると多発性硬化症になりにくいのか?

849人の血液サンプルから解析
from Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry
ピロリ菌に感染していると多発性硬化症になりにくいのか?の写真
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ヘリコバクター・ピロリ(いわゆるピロリ菌)は、感染すると胃潰瘍や胃・腸の腫瘍の原因になるとされており、日本人で感染率が高く非常に重要な病原菌です。一方で多発性硬化症は、神経の病気で、手足の麻痺や視覚異常、排尿困難など多彩な症状を取ります。今回の研究では、多発性硬化症の女性患者はピロリ菌に感染している割合が低いという、一件関連がない二つの病気に意外な関連が見つかりました。

◆550人の多発性硬化症の患者と、299人の対照群の血液を解析

著者らは以下のような方法で検討しています。

550人の多発性硬化症の患者と、年齢と性別を合わせた299人の対照群を研究に含めた。[...]免疫学的酵素アッセイ法を用いて、ヘリコバクター・ピロリのIgG抗体の存在を確かめた。

合計849人に対して、血液サンプルを検査に出し、ピロリ菌の抗体があるかどうかを確かめています。抗体があるということは、その人はピロリ菌に一度は感染したことがあるということを意味します。こうして、ピロリ菌への感染と多発性硬化症の関係性を解析しています。

 

◆多発性硬化症の女性はピロリ菌に感染している割合が低かった

以下のような結果になっています。

多発性硬化症の患者と対照群を比較すると、多発性硬化症の群でヘリコバクター・ピロリ抗体陽性の割合が低かった。(多発性硬化症 16% VS 対照群21%)この違いは、女性では統計学的に有意であったが(14% VS 22%, P = 0.027)男性では有意でなかった。(19%VS20%, P=1.0)また、発症年齢や出生年、罹病期間などの因子を調整した後に、多発性硬化症の症状の程度を比較すると、ピロリ菌抗体陽性の女性の障害スコアはピロリ菌抗体陰性の女性よりも低かった。(P = 0.049)しかし男性ではその逆の結果であった。(P = 0.025)

今回の研究対象者のうちでは、女性の多発性硬化症の患者は、対照群と比べて有意にピロリ菌に感染している割合が低いことがわかりました。また、症状の程度を比較した場合では、ピロリ菌に感染している女性の方が、症状の程度が軽いことがわかりました。男性では逆に、ピロリ菌に感染している人のほうが多発性硬化症の症状が重い傾向がありました。

 

男性に関しての結果はさらなる議論の余地があり、今回の研究をもってして、「ヘリコバクター・ピロリに感染していると多発性硬化症に対する保護作用がある」と結論付けるのはまだ難しいでしょう。筆者らは、「今回の結果は、ヘリコバクター・ピロリへの感染が『衛生仮説』(訳注)の代替マーカーとなっているということかもしれない」と述べています。多発性硬化症とピロリ菌のさらなる関連性、その他の細菌や寄生虫と多発性硬化症の関係性など、今後もさらなる研究が望まれます。

(訳注) 幼少期に様々な感染症にかかると免疫が賦活され、喘息などのアレルギー疾患や多発性硬化症などの自己免疫疾患にかかりづらくなるという説。すなわち様々な細菌と幼少期に触れ合うことで、自身の免疫系が正しい攻撃目標を幼少期に覚えるという説。

執筆者

石田 渉

参考文献

Helicobacter pylori infection as a protective factor against multiple sclerosis risk in females.

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015 Jun

[PMID: 25602009] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25602009

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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