2015.06.06 | ニュース

クラミジアに感染するとHIVにも感染しやすくなるのか?

サルに感染させる実験

from The Journal of infectious diseases

クラミジアに感染するとHIVにも感染しやすくなるのか?の写真

クラミジア性感染症やトリコモナス腟炎など、性感染症がある人にはHIV感染も多いと言われています。性感染症の原因になりやすい行動や環境がHIV感染のリスクにもなるという面に加えて、性感染症を発症することによってHIVに感染しやすくなると考えられています。アメリカの研究班がサルを使った動物実験を行い、クラミジアまたはトリコモナスに感染した後はウイルスに感染しやすくなっていたことを確かめました。

◆サルに予防接種とウイルス接触

研究班は、16頭のブタオザルというサルのメスを対象とした動物実験を行いました。サルのうち9頭にはクラミジア・トラコマチスとトリコモナス原虫のワクチンを接種し、7頭にはワクチンを接種せず、それらに感染するリスクのある環境に置いたうえで、HIVに似せた人工ウイルスであるSHIVを繰り返し腟に触れさせました。

 

◆性感染症のあるサルはすべてSHIVに感染した

次の結果が得られました。

SHIV感受性は性感染症に罹患したサルで強くなった(log-rank検定でP=0.04、リスク比2.5、95%信頼区間1.1-5.6)。ワクチンを接種しなかったうち3頭(43%)は性感染症に罹患しなかったが、性感染症に罹患したサルはすべてSHIVに感染した。さらに、性感染症に罹患しなかったサルに比べて、性感染症に罹患したサルでは月経周期の中でより早くSHIVに感染した(Wilcoxon検定でP=0.01)。

性感染症を発症したサルではSHIVに感染するリスクが2.5倍高く、実験終了までに性感染症を発症したすべてのサルがSHIVに感染しました。また性感染症を発症したサルは、性感染症を発症しなかったサルよりもSHIVに感染するのが早くなっていました。

研究班は、この結果から「クラミジア・トリコマチスとトリコモナス原虫の感染はSHIV感受性を増し、その原因は遷延する生殖路の炎症である可能性が大きい」と述べています。

 

クラミジアやトリコモナスと一緒にHIVにも感染するということは想像できますが、性感染症があることによってサルの体に何かの変化が起こって、HIVに感染しやすい状態になっていた、という可能性を示唆する結果です。人間でも性感染症の予防接種がHIVの感染しやすさに影響するのでしょうか?

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Increased susceptibility to vaginal simian/human immunodeficiency virus transmission in pig-tailed macaques coinfected with Chlamydia trachomatis and Trichomonas vaginalis.

J Infect Dis. 2014 Oct 15

 

[PMID: 24755433]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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