脳卒中患者のリハビリをさらに効果的にするために、ロボット療法は有用か?
脳卒中のリハビリのひとつとして、ロボットを利用したプログラムが注目されています。今回の研究では、ロボット療法を用いたリハビリの効果を検証し、さらにその使い方を変えたときに、運動機能に対する効果としてどのような差が見られるかを調べた結果、より高密度にロボット療法を行うと大きい効果が得られるという結果が出ました。
◆高密度のロボット療法群、低密度のロボット療法群、対照群の3つに分類
今回の調査では、54名脳卒中患者を対象に、以下の方法で4週間の治療を行いました。
54名の脳卒中患者は、高密度のロボット療法群、低密度のロボット療法群、対照群の3つにランダムに分類された。
すべての対象者は、1日90-105分、週5日、4週間の介入を受けた。
ロボット療法の密度を2種類と、通常のリハビリを受ける計3群に分類しました。この訓練における密度というのは、時間あたりの練習回数を示しています。高密度のロボット療法は、低密度のロボット療法に対して、同じ時間のなかで2倍の練習量を行いました。
この3群について、手や腕の運動機能(主な指標)と日常的な手や腕の使用頻度(2次的な指標)を指標とし、中間期および治療後の効果を検証しました。
◆高密度のロボット療法はその他よりも効果的
調査の結果、以下のことが報告されました。
高密度のロボット療法群では、中間期および介入後において、低密度のロボット療法群(中間期:p=0.003、介入後:p=0.04)、コントロール群(中間期:p=0.02、介入後:0.02)よりも、Fugl-Meyer Assessmentが
有意 に改善した。2次的な指標の各群内での改善は有意に見られたが、群間に、統計的な有意差は認められなかった。
つまり、高密度のロボット療法は低密度のロボット療法や通常のリハビリよりも、運動機能を改善することはできるものの、日常的に手や腕を使う頻度を多くすることには効果は見られないという結果でした。
この結果を受けて、著者らは、「ロボット療法と課題志向型訓練(例えば、日常的な課題に基づいて手や腕の訓練をする訓練方法)の併用を考慮する必要があるかもしれない」ということを述べています。
今回の結果は、練習量によって手や腕の単純な機能は改善する可能性があることを示した一方で、量を多くしても、実際の日常生活場面でその改善した手や腕を使えるようになるかどうかは別の話かもしれない、ということを示唆したものでした。
ロボット療法は、脳卒中のリハビリにおいて新治療として期待できそうです。しかし、その具体的なメリットや限界を知っておく必要があるかもしれませんね。
執筆者
Dose-response relationship of robot-assisted stroke motor rehabilitation: the impact of initial motor status.
Stroke. 2012 Oct
[PMID: 22895994]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。